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飛躍するミセス・時代が生んだシドニー五輪選手たち(3)
楢崎は昨秋の世界選手権で優勝、シドニーでは金メダル有力候補〔著作権:AP.2000〕
 日本の女性の間でも結婚が競技生活の障壁とされた時代は、もう終わろうとしている。

 夫であるコーチ、トレーナーに支えられた女子選手がシドニー五輪に名乗りを上げている。トライアスロンの平尾明子、陸上長距離の弘山晴美。弘山がもし女子マラソン代表になっていれば、日本初のマラソン「ミセス代表」だった。結婚が強い選手を生む力となっている。

 女子柔道の52キロ級代表、楢崎教子(27、旧姓菅原、ダイコロ)もその1人。夫の兼司さんは元ラグビー選手で柔道は素人だが、結婚を経て、大きな飛躍を遂げた。

ミセス選手の主な五輪代表、候補
柔 道楢崎 教子
陸 上弘山 晴美
トライアスロン庭田 清美
平尾 明子
ライフル射撃福島実智子
クレー射撃竹葉多重子
 アトランタ五輪の銅メダリスト。「体力的にはあのころがピークだった」という。再び五輪を目指すなら、追い込んだ練習が不可欠だ。現役続行は決めていたが、「どのレベルで続けるべきか」と悩んだ。

 アトランタ五輪前から考えていた通り97年3月に入籍。「迷っている時間がもったいない」と筑波大大学院(社会人コース、コーチ学専攻)に進み、そこで結論を出すことにした。

 柔道漬けから解放された生活は新鮮だった。「夫と旅行に行ったり、柔道以外にこんなに楽しいことがあるのかと思った」「いろんな世界があることを知り、それでも柔道がしたい気持ちになった。そのとき、自然と目標が見えてきた」

 柔道で既婚者の五輪代表は初だが、楢崎は「独身時代と生活は同じ」と言い切る。合宿などで1年の3分の1は家を留守にするほかは「同世代の共働きの夫婦と変わりません」。無理に役割分担せずに自然体。「私も夫も大学時代(ともに筑波大)から1人暮らし。食事も炊事も自分のことは自分でできる」。会社員の夫と過ごす穏やかな時間が柔道への糧になる。

 心身をリフレッシュした楢崎は98年秋の全国体重別を制して第一線に復活、昨年10月の世界選手権で初の優勝。シドニーでは田村亮子(トヨタ自動車)らと日本女子で金メダルに最も近いところにいる。

 柔道界には82年の世界選手権で、銀メダルを獲得した堅石洋美というミセスの先駆者がいる。選手の多くが町の道場から出発、生涯スポーツとして柔道を考える傾向がある。第一線から退く理由は体力や気力の限界が主で、元々、結婚を機にやめる例は少ない。今後、選手寿命が延びれば、自然とミセスの五輪代表が増える可能性がある。

 アトランタで日本の入賞者数は、女子が初めて男子を上回った。女性の時代到来だが、子供を持つ女性の代表が育つほど土壌は肥えていない。結婚と違い、出産や育児の壁は厚いのか。楢崎は首を振る。「海外にはたくさんいる。本人の意思、そして周りのサポート次第でしょうね」。シドニー後の身の振り方は白紙だが、さらに4年後、母親となって、畳の上に立つ姿が見られるかもしれない。(岩本一典)

[2000年5月25日/日本経済新聞 朝刊]

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