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「素人」3年で名乗り・時代が生んだシドニー五輪選手たち(1)
W杯女子ダブルトラップで優勝、笑顔がこぼれる21歳の中山
 シドニー五輪開幕まで4カ月を切った。続々と決定する日本代表選手の顔ぶれには、いまの時代の表情が浮かび上がる。短期間で育成された新興種目のメダル候補、親から技を受け継いだ2世選手、帰化選手、競技生活の限界とされた年齢、結婚といった社会常識を超えて代表になった女子選手――。枠や限界にとらわれないボーダーレスな時代の選手像を追う。

 この春、なじみの薄い種目でメダル候補が躍り出た。五輪のプレ大会を兼ねた3月のクレー射撃ワールドカップ(W杯)シドニー大会。アトランタから採用された新興種目、女子ダブルトラップで中山由起枝(21)が優勝したのだ。日本の男女を通じてクレー射撃で初のW杯制覇。実は彼女、競技を始めてまだ3年足らずなのである。

 中山の勤める日立建機は1996年秋、五輪メダリスト養成に乗り出した。グループ会社のライフル射撃部から、アトランタ五輪に代表選手が誕生、それをきっかけにトップダウンで始動。狙いはクレー射撃。競技に比較的お金のかかる種目ではあるが、企業として選手を養成するには、個人競技で負担も大きくない。

シドニー五輪の新競技・種目
▽陸 上
女子棒高跳び
同ハンマー投げ
▽水 泳
女子水球
男女シンクロナイズドダイビング
▽体 操
男女トランポリン
▽ヨット
49er級
▽重量挙げ
女子7階級
▽自転車
オリンピックスプリント
ケイリン
マディソン
女子500メートルタイムトライアル
▽射 撃
クレー女子トラップ
同スキート
▽近代五種
女 子
▽テコンドー
▽トライアスロン
 上司に呼ばれて計画遂行を指示された中山潤一庶務部長(現クレー射撃部監督)に、クレー射撃の経験はない。さすがに面食らったが、「自分も素人だから、選手もゼロから始めよう」。未経験者2人の女子選手を翌春入社させて計画がスタートした。

 その1人が中山だった。埼玉栄高ソフトボール部の主将で捕手。動体視力の良さを買った。捕手は投手が放る速球を受けつつ、走者の動きに目を配る。ダブルトラップは15メートル先から同時に飛び出す2個の標的を撃つ。中山監督には「野球の三盗を阻止するイメージ」が直感的に重なった。

 合弁会社のあるイタリアへ1年間、射撃留学。本場のコーチ、ランベルト氏から基礎をみっちりたたき込まれると、ソフトボールで鍛えた強い体が猛練習に耐えた。3.8キロの散弾銃を構えて、1日400発。男でもつらい苦行をものともしなかった。

 昨年5月、初めての世界挑戦となったW杯熊本大会で40発すべてを命中させる「満射」をやってのけ、大物ぶりを発揮。続く6月のイタリアW杯大会で個人3位に入り、五輪代表権を手に入れた。その時、射撃歴は1年11カ月だった。

 総数300種目に膨らんだ五輪。歴史が浅く、競技人口も少ない新競技、新種目では、中山のほかにも他競技から転向し、短期間で力をつけて代表に名乗りを上げる選手がいる。

 シドニーから新たに実施されるトライアスロン。シドニー代表の平尾明子(24)は実業団の強豪陸上部から転向、日本トライアスロン連合の英才教育を98年夏から受けた。W杯転戦を始めたのが99年から。

 「シドニーへの道が閉ざされた水泳、陸上の選手からいくつか声がかかっている」と同連合幹部はいう。選手発掘のため毎年12月から3月にかけて各地で実施する記録会へ、他競技の選手からの問い合わせが増えているのだ。

 平尾に続け。わずか2年で五輪に手が届くなら、フロンティアに夢をかけたい選手心理もうなずける。(串田孝義)

[2000年5月23日/日本経済新聞 朝刊]

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