12月発売の「プリウス」 |
「今回のモーターショーでは環境問題への取り組みが最大のテーマ」−−。自動車工業振興会の辻義文会長は24日の開会式でこう強調した。会場では各社が環境対策のための最新のテクノロジーを展示している。注目を集めるのは実用化が間近に迫ったガソリンと電気など他の動力源を組み合わせた「ハイブリッドカー」だ。このほか各社のブースでは低燃費、高出力の「直噴エンジン」搭載車や省エネルギーの小型車などを来場者に盛んにアピールしている。
環境対策と車の楽しさを両立−−ハイブリッド車、コストに課題
車から排出される二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)を削減するために、ガソリンだけでなく電気や天然ガスなどの動力源を組み合わせる「ハイブリッドカー」が話題を集めている。12月にハイブリッドカー「プリウス」を発売するトヨタ自動車の奥田社長は「環境と車の楽しさという相反する課題を両立させる」とし、「プリウス」の魅力を盛んに強調した。
ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせることによって、走行状況に応じたパワーユニットを選択する仕組み。燃費は従来の2倍に向上、CO2(二酸化炭素)の排出量は半減、一酸化炭素(CO)などの有害排出ガスは約10分の1に削減できるという。同サイズのガソリンエンジン車に比べて倍以上のコストがかかるが、普及促進のために採算割れの215万円で発売するとしている。
市販は未定だが日産、富士重工、日産ディーゼルなどもハイブリッドの試作車を展示している。富士重工の「ELTEN」はコンデンサーバッテリー、ソーラーバッテリーなどの電源を持つモーターと、ガソリンエンジンを組み合わせた小型車。日産ディーゼルはディーゼルエンジンと電気を組み合わせた福祉用のバスを出展している。
ただ、ハイブリッドカーについては「採算を度外視して販売できるのは体力のある大手だけ」という声も多く、業界では「プリウス」の動向を静観しようというムードが強い。
三菱自工「マイア」 |
期待は直噴エンジン−−直噴ディーゼルも登場
試作段階が多いハイブリッドに比べ、現実的な環境対策車として有力視されているのが直噴エンジン搭載車だ。最初に市販化した三菱自動車工業では「GDI」(ガソリン筒内直接噴射)エンジン搭載車を10台展示、プレスデーの記者会見では滝沢清喬副社長が「2010年までに全てのエンジンをGDI化する予定」との方針を打ち出した。「GDI」は通常のガソリンエンジンに比べて約35%の高出力を実現した低燃費エンジン。その分、環境への影響は少なくなるわけだ。96年から市販化され、ガソリンエンジン車と比べて価格がそれほど変わらないこともあり、人気を集めている。
富士重工業は直噴エンジン搭載のワゴン「エクシーガ」を、日産自動車はDOHCでは初の直噴エンジンを参考出展している。海外からはドイツのオペルが「コルサ」(日本名ヴィータ)に直噴ディーゼルエンジンを搭載した試作モデル「エコ3」を出展している。燃費は90キロ定地走行時でリッター当たり約38.5キロという。
メルセデス・ベンツ「Aクラス」 |
省エネ型の小型車でラインナップ再構築も
環境問題に対してメーカー各社が示した明快な答えはもう一つ。車体重量を下げて小さなエンジンで走行できる小型化だ。燃費の向上をもたらす最も古典的で効果のある方法でもある。
本田技研工業はブース中央に低燃費の1リッター3気筒の直噴VTECエンジンを搭載したライトスポーツ「J-VX」を展示している。ドライビングという自動車本来の楽しみと環境対策を両立させるモデルと位置づける。三菱自工のブースでは1.1リッターGDIエンジン搭載のコンセプトカー「マイア」を展示している。日本初公開で注目を集めているメルセデス・ベンツ「Aクラス」は全長3.6メートルの車体に1.6リッターのエンジンを搭載する5人乗りの省エネカーだ。
他にも多くのメーカーが小型車を展示し、環境対策をアピールしている。小型化は大型高級車を頂点とした乗用車のヒエラルキーの見直しを迫る大きな潮流になりつつあるようだ。
日産「ハイパーミニ」 |
関心薄い電気自動車
電気自動車も環境対策車として期待されている。日産は1-2人乗りの超小型電気自動車「ハイパーミニ」をコンセプトカーとして出展、ダイハツも発電機を搭載した電気自動車「MOVE EV-H」を展示するなどしている。しかし、1991年のモーターショーで東京電力が「IZA」を発表した時のような熱気は感じられない。ガソリンエンジンに比べ非力である点と走行距離の短さ、そしてガソリンスタンドに代わる「電気充電スタンド」などインフラ整備が必要となるなど、現実的な選択肢でないことが判明したからだ。トヨタがRAV4をベースにした電気自動車を発売しているが、希望小売価格は495万円。採算を度外視した「プリウス」の215万円と比べると、電気自動車に対する同社の熱意の違いが表れているといえそうだ。
(編成部 坂田保治)
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