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東京・江東に本社を構える機械部品商社のミスミ。金型部品などを取り扱う同社は機械業界でも地味な存在だが、経営スタイルは「米シリコンバレーのハイテクベンチャーより先進的」と言われる。
「当社では正社員も契約社員も派遣社員も関係ない。社員でなく参画者」――。田口弘社長は94年から社内外の人材を区別せずに配置するオープンな仕組みを導入してきた。毎年それぞれが事業計画を提出、採用された提案の発案者を核にチームを結成する。
賃金制度も特異だ。外部のコンサルティング会社に約170人の従業員の「市場価格」を算出させ、その査定に基づいて各人の年俸を決める。さらに各チームの業績(最終損益)に応じて業績給を加算する。チームが赤字ならこの業績給はゼロになる。
チームごとに年収に占める業績給の比率格差をつけることも検討中だ。仮にあるチームの業績給比率を5割に設定すれば、年俸500万円の社員の業績給は最高500万円。最終的な年収は業績次第で500万円から1000万円まで幅が出る。逆に業績給比率を少なくしたチームは年収の変動リスクを抑えられる。
ミスミは従来、年俸の引き下げは避けてきたが、「今後は人材の市場価格が落ちれば下げることもある」(田口社長)。目指すのは株式市場のように、時価で各人の「働き」を買う究極の市場連動型システムだ。
日本型雇用慣行は、企業内で長時間かけて技能・能力を形成する「組織原理型人材」を大量に輩出してきた。企業はこうした人材を中核に柔軟な組織運営を展開、とりわけ製造業で大きな成果を上げた。
だが、厳しい国際競争、戦後最悪ともいわれる不況の下で、加齢とともに賃金が上がる正社員を抱えることがコストに合わなくなりつつある。企業は正社員をより賃金の低い、あるいは正社員より能力の高い、外部のプロフェッショナル人材に急速な勢いで置き換えようとしている。
屋台骨は準社員
社会経済生産性本部が昨年9月、上場企業を中心とする製造業1720社に実施した「我が国製造業の生産性と国際競争力に関するアンケート」調査は、「正社員冬の時代」の到来をはっきりと示している。
今後3年間の人事体制について、正社員を減らす方針と回答した企業が有効回答企業368社の56.3%と半数を超えた。一方、派遣社員やパート・アルバイト、外部委託を増やすと答えた企業が96年の前回調査より急増した。
実際、ミスミのような“過激”な企業だけでなく、ごく普通の大企業も市場原理に基づいて、人材構成の再構築を加速している。
アパレル大手のレナウンでは、準社員や派遣社員として契約する店頭販売員の数は約4500人に達し、正社員数(約1930人)を優に超える。豊田圭二社長は「販売員の力量はアパレルの競争力の重要な要素」と語るが、非正規社員が同社の屋台骨を背負っている形だ。
そんな準社員の1人で東京・新宿にある伊勢丹本店の店頭に立つ勝木京子さんは、1日に1人で100万円を売り上げたこともある販売のプロ。商品の企画会議にも出席し、「POS(販売時点情報管理)データではわからない生の情報こそ重要」と、本社幹部と丁々発止の議論を交わす。
技術革新のスピードが激しいハイテク業界でも、研究開発や新規事業の立ち上げに外部人材を積極登用する動きが目立つ。
原点復帰が必要
東京・JR蒲田駅近くにある富士通・情報処理システムラボラトリに勤務する友野一氏(34)は全社で約50人いる契約社員の1人。かつてCM制作会社で企業CMを手掛けた経歴を買われて95年に入社。現在、企業向けCMやインターネットのホームページなどコンテンツ(情報の中身)の企画・作成を現場で陣頭指揮する。デジタル時代の到来をにらんで富士通が拡充する戦略部隊だ。
「給与、待遇など不満はないが、社員より高い成果を求められているとは感じる」と友野氏は言う。
勝木さんや友野氏が極めて特殊な能力を持っていたり、正社員として力量が不足というのではない。ある程度の専門性を備えた人材が正社員と肩を並べ、大企業で一緒に働く。そんな時代が到来しつつある。
半面、企業経営者は市場原理を優先させることのデメリットにも留意すべきだろう。企業が内部人材の持つ会社への忠誠心や集団的な頑張りまで否定してしまえば、経営の求心力を失う危険性もある。
本質的な問題は「職能資格制度に象徴される日本型雇用システムが本来備える能力主義が硬直化し、機能不全に陥った」(宮本光晴・専修大教授)点である。職能資格制度は社員の能力を昇給・昇進とリンクさせる内容だが、実際は年功的要素を強める傾向にあった。今後は「成果主義の導入など制度を軌道修正し、本来の能力主義に原点復帰することが不可欠」(同)だ。それが最近元気のない「日本型会社人間」を再活性化する処方せんとなる。
会社法で「社員」は株式会社の株主を意味する。だが、時代とともに会社勤務のサラリーマンと同様の使い方になった。会社を市場が厳しく評価する時代を迎え、社員と会社にも新たな関係が生まれてくる。
[日経産業新聞]

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