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「当初は全員がアナリストとして新会社に移るような楽観ムードもあったが、甘かった」――。日興証券グループのシンクタンク、日興リサーチセンターのある中堅アナリストは唇をかむ。
格付けで選別
日興証券は昨年、生き残りをかけ米トラベラーズ(現シティ)グループと提携、同グループ傘下の証券会社、ソロモン・スミス・バーニーと合弁会社「日興ソロモン・スミス・バーニー」(NSSB)を29日に設立する。株式や債券の引き受けなど投資銀行部門は新会社に移るが、同時に移籍するアナリストのふるい分けが昨年から進行中だ。
NSSBの出資比率は日興51%、ソロモン・スミス・バーニー49%。形の上では日興の子会社だが、アナリスト選別ではソロモン側が主導権を握った。
「Jリーグの横浜フリューゲルスと同じですよ」。自動車業界を担当する松島憲之主任研究員(42)は、自分を含む同社のアナリストと経営難から他チームに吸収されたプロ・サッカー選手の姿をだぶらせる。「自分のチームの手薄なポジション、弱いポジションを埋める人材しか必要とされない」。
その際に基準の1つになるのは“格付け”。国内では日経金融新聞などの調査により、年1回ランキングが公表され、アナリストの市場価値が一目瞭然(りょうぜん)になる。サッカーのポジション争い同様、同じ担当なら順位が上のアナリストがポストを得る。
ふるい分けはJリーグより厳しい。日興リサーチのアナリストやエコノミスト90人のうち新会社に移るのは30人余り。移籍しても新しい職場でアナリストやエコノミストとして活動するのは十数人に過ぎない。このうち1つの業種を任されるヘッドに就くのは長年、自動車業界アナリストのトップを続けた松島氏など2、3人だ。
選抜に漏れれば、日興本体やNSSBで債券の営業など別の仕事に就く。アナリストを続けようとすれば、外に飛び出すほかなく、昨年10月から25人が日興リサーチを去った。
転職志向高まる
アナリストというと、高い専門性と引き換えに数千万円から1億円前後の報酬を得る、“普通のサラリーマン”とは別世界の人と思われがちだ。しかし、それは外資系証券の話。
日興リサーチの場合、ボーナスなどで能力が加味されるとはいえ、基本的には日興証券本体の給与体系で評価されてきた。若手を育てるためにチーム制を採用し、育成手腕も人事評価に反映するなど、組織原理は日本企業そのもの。それだけに「いきなり市場に放りだされればショックは大きいと思う」と同社の渡辺和朗専務は打ち明ける。
日興本体も揺らいでいる。合理化計画の一環として年初から募った選択定年制の応募者が、想定の250人を大きく上回り、840人余りに膨らんだ。
株式や債券の引き受けなど投資銀行部門の人員のうち、新会社に移るのは2分の1の約380人。振るい分けの結果、新会社に移れず、社員の中には「山一証券の破たん以来、割り増し退職金をもらって自宅のローンを一掃、銀行系証券会社などへ転職を図る割り切り組が増えている」(幹部)という。
法人部門のある管理職は「今さら外資系でハードに働く気はないが、残っても個人営業でどれだけ頑張れるか……」と漏らす。M&A(企業の合併・買収)業務など成長が見込める投資銀行部門を切り離した後、本体、とりわけ営業現場の求心力が低下しかねない状況だ。
「5年間で全社員の4割、1200人を削減すると言っても、本当にしんどいのは最初の1、2年だ」。コスモ石油の岡部敬一郎社長は同社のリストラ計画の反響に驚き、数字ほどドラスチックではないと説明するのに懸命だ。合理化計画では希望退職を99年度に1回、300人募集するのみで「打ち止め」。後は定年退職、採用抑制、グループ外出向などで人員削減していくという。
「大ナタの手前」
岡部社長は「断がいから飛び降りるような雇用リストラが必要な経済環境」としながら、「それは一般論で当社は別」とつけ加えるのも忘れない。だが、中堅管理職からは「グループ外出向は早い話が実質的な人員リストラ。日本石油と三菱石油の合併発表以来、メスはかなり深く入ってきた」との声も出てきた。
こと雇用に関して日本のリストラは、表向き社員と会社の微温的な関係を維持しながら進められる。再就職支援サービスを手掛けるウェイ・ステーション(東京・港)の林明文社長は「企業の雇用調整は、なりふり構わずナタを振るう一歩手前。多額の割り増し退職金を手にする退職長者もいる」という。
だが、土地や株式の含み益をほぼ使い果たした企業の大盤振る舞いは、そう長くは続かない。すでに「医薬品業界などでは、ビッグバンにさらされた金融業界並みのリストラが始まりつつある」(ヘッドハンティング会社の日本コーン・フェリー・インターナショナル)という。“優しさ”の原資にも限りがある。(「社員と会社」取材班)

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