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(2)教授は起業家

師弟で事業化

 今年5月、「早稲田の杜(もり)」がはぐくんだベンチャー企業の種が神奈川県相模原市で芽を出した。幼児用品リサイクルショップのキッズグッズだ。

 社長の小林成樹氏は早大大学院のMBA(経営学修士)コースに在学中。講演で大学を訪れた中古本販売大手、ブックオフコーポレーション(同市)の坂本孝社長にアイデアを売り込んだところトントン拍子に事業化話が進んだ。

 筆頭株主はブックオフだが、第2位株主は小林氏の指導教員である大江建教授。資金援助が目的ではない。市場分析や資金計画など具体的な起業戦略を提案し、監査役にも就任した。「『キッズオフ』では駄目。もっと独自性の出る社名を考えなさい」などと指示する。実質的にもう一人の経営者だ。

 開店3カ月の売り上げは予想の1.4倍。2007年の店頭公開を目指し、全国展開も検討する。「学校で扱うのは過去のケースばかり。本当に勉強になるのは生きたケース」(大江教授)。理論優先だった大学の枠から一歩踏み出す。

元企業人ズラリ

 少子化で生き残りを模索する大学と、大学をもっと活用したい産業界。双方の意を酌んで新たな価値の創造を目指す「ビジネス・プロフェッサー(ビジ・フェッサー)」の存在感が高まっている。

 「産業界と距離を置いていた昔の影を引きずってはいけない」。高知工科大教授に転じた元松下電器産業副社長の水野博之氏は学内でこう説く。大学院として日本に初めて誕生した起業家コースのトップに就任し「ここを突破口に大学を変える」と教授にソニー、大成建設などのビジネスマン経験者を招き、「産」を意識した布陣を敷く。

 産学融合の第1弾として8月5日、電子・光システム工学科の平木昭夫教授が考案した次世代ディスプレー用発光源技術を事業化する会社を教授たちと地元企業の共同出資で立ち上げた。学内技術をもとに誕生したベンチャーを支援し、産業振興に貢献する新しい大学像を探る。

 「投資させてください」。8月11日に設立された米ベンチャー、eCHARGE日本法人の川畑正大代表のもとには電話がひっきりなしにかかってくる。電子商取引の代金を公共料金に上乗せする仕組みを提供するe社には初日だけで30件を超える出資や提携の話が殺到した。

 川畑氏は米本社幹部にして米スタンフォード大学教授。これまで3社のベンチャー設立に携わり、1社はナスダック(米店頭株式市場)に公開、1億円を超える個人資産を得た。96年設立の米e社も社員150人の企業に成長している。

 大学教官の金もうけには批判もあるが、「スタンフォードでは教授も学生も、至るところで事業の計画を話し合っている」(川畑氏)。研究の傍ら10社ものベンチャー設立にかかわり、ミリオネアー(億万長者)となる教授も少なくない。助教授だったジム・クラーク氏はシリコングラフィックス(現SGI)やネットスケープ・コミュニケーションズの創立にかかわり情報産業に旋風を巻き起こした。

兼職容認の方向

 米では大学の研究成果の産業利用が3兆5000億円の経済効果と、25万人の新規雇用を生んだといわれる。研究成果への見返りがインセンティブとなって、次々と新たな成果を生む「知の好循環」と、一定のルールのもとでの兼職の容認。ここに「ビジ・フェッサー」活躍の素地がある。

 日本でも昨年から学内の知的資産を産業界に移転する組織「TLO」が多くの大学で誕生した。政府は来年4月からTLO役員に限り、国立大教官の兼職を認める。民間企業についてもできるだけ認める方向で今年秋に結論を出す方針。

 30年近く東大で教鞭(きょうべん)をとった日本テキサス・インスツルメンツの生駒俊明社長は「身を削るような研究活動は使命感だけでは続かない」と訴える。研究成果の正当な対価を是とし、産学間の自由な往来を後押しする環境を整えることが価値創造の新しいうねりを生み、新産業の勃興(ぼっこう)を促す。

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