国内開催地めぐり明暗・広島と横浜の戦略
国内最大級の競技場「横浜国際総合競技場」[共同]
 「屋根が開催競技場の条件にはなっていない」―。スタジアムに屋根がないとして、広島市が一昨年12月、日本と韓国共催の2002年ワールドカップ(W杯)の開催地から外されたとき、市長の平岡敬(70)は強い調子で憤慨した。

 一方、7万人を収容できる国内最大級の横浜国際総合競技場を掲げ開催地に決まった横浜市は「ぜひ決勝の開催地に」と次の夢を追う。

 日本国内の開催地として10の自治体が、15の候補の中から決まったが、明暗を分けた両市がW杯に向ける思いは対照的だ。

 平岡が財政難を理由に競技場「ビッグアーチ」の屋根架設断念を明らかにしたのは開催地決定の数日前だった。架設費用は150億―170億円といわれた。

 結果的に、屋根付き競技場は開催条件の一つとされただけに、中四国ブロックで唯一の候補地として確実視されていた開催を逃した。

 広島県サッカー協会事務局長の大嶽憲正(57)は「世界から観客が集まるW杯の波及効果が理解されなかった。平和都市ヒロシマを世界にアピールする絶好の機会だったのに」と残念がる。

 広島は埼玉、静岡と並び御三家と呼ばれるほどのサッカー王国。しかし経済効果と結びつかないのが悩みだ。

 1994年、Jリーグ前期で優勝したサンフレッチェ広島の1試合平均の観客数は1万7000人を超えた。だが、97年は平均6500人まで減少。3期連続の赤字決算で、累積損失は約9億円。

 県サッカー協会は「2002年大会の組み合わせ抽選会だけでも広島で」と日本サッカー協会に提案書を提出。広島の復権に望みをつなぐ。

 一方の横浜市は2002年大会の決勝戦開催を目指し意気盛んだ。

 市教委にある開催準備委員会事務局では、フランスW杯視察の準備を進める。担当課長本多俊雄(48)は「日韓の少年サッカー大会やシンポジウムなど、共催イベントも考えたい」と抱負を語る。

 3月1日、競技場のこけら落としのダイナスティ杯は荒天で、屋根のある記者席に雨が吹き込んだ。横浜市は「世界中の報道関係者が集まるW杯では許されない事態」と即座に改善を検討する手際の良さだ。

 「フランス大会やJリーグの経験を踏まえ、決勝にふさわしい競技場にしていく」と、競技場の技術担当部長小島賢治(57)。その視線は4年後に向けられている。(敬称略)〔共同〕


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