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更新:2009/07/02 (12/6)シリコンバレー流事業連携 2・ソフトウェア業界にみるM&Aイノベーション(氏家 豊氏)
最近、米国の情報システム開発中堅業者と出会った。汎用パッケージ製品志向の当地シリコンバレーのソフトウェア企業とは対照的に、いかにも都市型の米国東海岸企業らしく、顧客企業と相対での「システム作りこみモデル」である。話し込んでいる内に、実に日本の情報システム開発業者と内実が似通っている。私がそのような日本企業を念頭にも置きながら指摘したその会社事業モデルの可能性と課題に一々同意してきた。
私自身、一般的に言われるように、米国では、大手のハードウェアベンダーかソフトウェア専業ベンダーと、それに数多のソフトウェアベンチャー企業しか基本的には存在しないかもしれない、と考えてきた方である。ただ、ニューヨーク周辺のような大都市圏には、日本でそうであるようなシステム作りこみモデル業者は存在しうる、とも考えてはいた。ローカル事業展開をしている彼ら地場業者にとっては、広域展開、ましてや海外展開などありえない。その必要もないわけで、内外に広く存在を発信してこないので存在が見えにくかったなと実感した。 以下では、前稿に引き続き、米国における事業連携(パートナーシップ)のありようを、シリコンバレーほかのソフトウェア系企業についてさらに考えてみた。かつ、話をより現実的にするために、最近なされたM&A事例をベースに、その類型化を図ってみた。 前回、事業展開におけるイノベーションモデルの一般型マトリクスを確認した。つまり、事業展開の「既存」と「新規」を、縦軸に製品開発面、横軸に市場開拓面を据える。今回はそれをソフトウェア開発の現状に置き換えて掘り下げてみた。まず横軸から、これを所謂「横展開」と考えて、「アプリケーション・サービスモデル(以下、単にアプリケーション)」と考えよう。さらにそれは、より汎用性ある業務アプリケーションがまずあって、その右側に提案内容がより各顧客企業向けに具体性を帯びる業種アプリケーションがある。そうすれが、縦軸は自ずと「インフラ」ソフトウェアがくる。これらを下表マトリックスに整理した。これらはすべて、以下の米国の実例検証から割り出したものである。
通常、経営学の教科書では、正攻法として、上表のB,CさらにDと言った、現状を踏まえた新規展開が基本とされる。それに対して、以下のM&A事例では、EやFへの展開にも積極的に打って出るケースが出てくる。むしろ、この領域への新機軸展開を可能にするのがM&Aである、と実感させられるものがある。 事例1(A型)・・・現状の足固め: 企業データの保護ソフトウェア企業が、ある少し新しいコンセプトの暗号化ソフトを他社と共同開発し、その製品を自社で販売しているうちに、よく売れるものだから、より収益性を上げるためにその相手先企業を買収して、製品マージンをあげた、という例。これは、現状の製品提供における「足固め買収」である。 事例2 (C型)・・・新規業種アプリケーション調達: ITサービス、データセンター業務で、相手企業のシステム部門買収が例えばこれに該当しよう。金融機関向けにITサービス(システムの保守管理等)を提供しようとする時、金融というその顧客企業業態、そしてその企業特有のワークフロー、システム管理手法に精通している人間が内部にいなければ、とてもミッションクリティカルなシステム保守は難しい。それは、結果的に金融産業向けという業種アプリケーション提供力がもたらされる。 事例3 (D型)・・・新規インフラソフトウェア調達: 独自のコンテンツスキャニング機能を駆使したEメールやウェブコンテンツのセキュリティーの大手企業が、企業向けメール暗号化技術企業を買収。自社の手法(インフラ技術)とはちょっと違うやり方でやっている人気セキュリティーソフトの取り込みである。 事例4 (E型)・・・新規のインフラ、業務アプリケーション双方の調達: 業務意思決定のためのBI (ビジネス・インテリジェンス)ソリューション超大手企業が、その静的なデータウェアハウジング的側面に、「リアルタイム」でのデータ予測解析技術を加味するべく、そのような知的財産を有する企業を買収。かつ、この相手先企業が持っていた、リアルタイムの提案内容管理やフィールドサービス最適化といった新しい業務アプリケーション領域も取り込んだ。 事例5 (E、F型)・・・新規インフラソフト、業務および業種アプリケーション調達: インドにある、金融サービス業向けの大手ITソリューション・プロバイダーが、米国バージニア州のコンプライアンス・ソフトウェア企業を買収。明らかな新規インフラと業務、そして金融に留まらない事業領域向け対応でもある。なおかつ、この場合はインド企業の米国本土本格進出という側面をもつ。地理的な横展開が加わってくる。因みに、今回の数事例の中で、この場合が最も高額の買収金額であった。新しい領域をより取り込もうとするにつれて、対価も上がる、という関係。 米国のSI業者、ソリューション・ベンダーも、会社の規模が大きくなるにつれて、より顧客寄りにソリューションのインテグレートや「トータル」提案志向になり、サービス提供段階までカバーを迫られる。その際、その提案の構成要素はベンチャー企業に求めるという構造である。その過程で、必要に応じてベンチャー企業側に投資をしたり、丸ごと買収をかけたりするのは、上記でほんの実例を挙げたとおりである。例えば自社にとって、前述マトリックス表の各枡に位置する潜在パートナー企業情報を常に引き付けておくことは、実践的M&Aイノベーションに向けた第一歩と言えよう。最後に、ここで整理を試みたソフトウェア分野での考え方は、他のネットワークや半導体等の領域でも、「要素技術」と「アプリケーション・サービスモデル」として十分実感できるものがある。
※「海外トレンド」は、米国シリコンバレーでベンチャー企業関連のコンサルティングや情報収集に携わる日本人ビジネスマンによる現地からの最新情報を中心に、海外各地のベンチャー企業の動きを紹介するコーナーです。
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