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NIKKEI NET

更新:2009/07/02

(3/27)変革期にある米国ITベンダー業界(氏家 豊氏)

 今回は、米国におけるITサービス提供の現状についてのご報告。米国の大手ベンダー動向を踏まえて、最近の実態に迫る。

まず、米国で今、まさに大騒ぎしているのが企業ガバナンス、コンプライアンス規制。日本版Sox法の導入は一期先送りされて2009年3月決算期分からとなったようだが、米国では2002年に法律が施行されて以来、事業会社、金融機関を問わず、ほとんど実業の足を引っ張っている。現に、IPO (新規株式公開)はここに来て大きくシュリンク。公開作業時にかかる数億円のコスト負担に耐えられない。この件は、元々はエンロン事件に端を発しているわけで、違反すると当然刑事罰である。会社法、民事ビジネス指導ではない。この徹底振りが、また米国を強くする、世界の少し先を走らせるということではあろうが、例えば、企業における顧客情報の電子データ化に関しては、回りまわってブッシュ政権のテロ対策の一環と見るのが米国でも一般的である。

米国でも注目度が高い、売上伸び率上位の関連ソリューション群を挙げると以下の通りである。トップはやはり、上記の(1)セキュリティー、コンプライアンス管理:SOX法が猛威を振るい、営業部隊は新規開拓をストップして顧客データの入力作業に追われている。(2)業務プロセス、パフォーマンス管理:ハードウェア/ソフトウェアに、特定レベルのパフォーマンスを確実に発揮させる。また作業量の増減に応じてスタッフとコンピュータを追加・削減するためのプロセスを担保する。(3)アプリケーション可用性(Availability)、運用管理:アプリケーション、データベース、OS、ハードウェアを年中無休で提供するためのインフラ完備である。またこれに関連して(4)災害復旧、対応管理:物理的なメディアの損傷対策、または内部的な機械的・電気的問題などによる重大なデータ喪失への対策が求められる。さらには、(5)システム構成、変更管理:ソフトウェアの定期的なアップグレード管理や変更がパフォーマンス、可用性、セキュリティーを低下させないことを確保する。  

 ところで最近米国でも、業界トップクラス企業(特にIBM。当地ではオラクル辺り)の動向も受けて、ITサービス提供において、益々強調されている点が、「コンサルティング力の強化」である。一見、言い古された謳い文句に見えて、実はかなり具体的な実践を伴っている。何より、顧客企業の業務内容の中身、実際に精通していることが求められてくる。これまでのような、コンピュータ周り(のみ)に強い外部部隊では許されなくなってきたと。つまり、

(a) 顧客ビジネスや業界のニーズ把握: 端的には、その業界の経験者、専門家を備えておくことが必須。前述のIBMによるコンサルティング会社買収の背景がここにあったのは周知の通り。例えば、これまた大きなテーマである「業種アプリケーション」開発でも、そのインフラ、汎用ソリューションまでは作れても、セミ・カスタマイズドものは、その相手業界経験者(しかもその中でもシステム開発にも経験して入ればベスト)が不可欠。

(b) 顧客企業業務への完全な対応: 顧客企業の業務理解からさらに進んで、相手企業の関連システム従業員を含めた、相手企業資産との完全連携、活用。買収も全く辞さない。確かに、相手企業の業界常識だけでは把握しきれないその企業特有の業務フロー、組織風土に及べば、これはもう外部部隊ににわかに把握できようはずもない。結局は、ITサービス提供企業側の資本動員力次第という話になる。

(c) 業界ごとシステム開発の標準化: そこで、実効性を伴ったコンサルティングを行うために不可欠なのがこのテーマ。開発・サービス提供コスト軽減ニーズと相まっている。つまり、これまでのような、効果も見えない大掛かりで高価なパッケージモノソリューションでは、これからはお客様が納得しない。元々英国に端を発するHPのITSM/ITILや最近のIBMによるサービスサイエンスの提唱はこの辺に無関係ではなかろう。業界の以前からの共通テーマ。

(d) パッケージアプリケーション提供力強化: そしてソリューション提供、それもよりSmall&Middleクラス企業向けの柔軟性を持った、コンパクト(顧客企業から見て低コスト)なサービス提供力が益々求められてきた。実は、これも一種のブーム的になってきた感もある。パッケージ発想の元々強い米国ソフトウェアベンチャー企業には、益々フォローではある。日本の場合、ここが歴史的に弱い。

      

  それでは、これらの具体策を実現するためにどうしているか。上記と一部重複するが、改めて以下の2つである。パートナーシップ(連携、提携)と買収である。

・パートナーシップ: ソフトウェアベンダーも、業務、業種ごとのオンデマンド方式によるソフトウェアのラインナップを充実しておき、顧客がそうしたオンデマンドモデルの利点を利用しやすくするため、また特に、小・中規模企業向けアウトソーシングに対応するため、企業と組んでインターネット上での配信プログラムを構築する。それは、より多くの独立ソフトウェアベンダーが、そのアプリケーションをインターネットで実行できるよう再構築するビジネスアプリケーション・ホスティング(アプリの直接収集、組織化)でもある。 一般的に事業展開において、フォーカス志向が強い米国企業では、お互いの強みと弱み(ニーズ)をかなりオープンにするところがあって、その点ではパートナーシップが組みやすい。

・買収: さらに進んで、IBMのCorio買収に代表されるように、サービス体制を完備するために、中規模企業向けのホストアプリケーションサービスを実行するためのソフトウェア開発ASP業者の買収。IBMの場合は、そのメインフレームソリューションの強みに加えて、ソフトウェア対応力の付加でもあった。顧客に対してより迅速な導入、使い勝手の向上、より柔軟なコスト体系(安い)のホスティングソリューションの提供である。 逆にASP業者側は、IBMがホスティング運営用に開発してきたインフラソフトウェアを獲得する。これには管理タスクを自動化するためのツールや、インターネットを通して顧客にアプリケーションを配信するためのツールが含まれる。

米国主要プレーヤーの最近の戦略について、業者タイプごとに整理してみた。最初の従来からの大手ハードウェアベンダーは、益々ITサービスコンサルティング・ベンダー、ソリューションベンダーを志向して、ツールをもつソフトウェア大手ベンダー、ベンチャー企業(その集積業者であるASPも含め)と組んでいる。米国では、EDS以外元々影の薄い3つ目のITアウトソーサー、日本で言う専業SI(System Integration)業者は益々存在価値を問われている。EDSの買収問題に代表されるところ。結局、このセクターも、これまでの企業向けソリューションサポート実績のある順に、大手ハードウェアベンダーに取り込まれつつあるとも言える。何より、ご存知の通り、この部分の実質仕事は今や米国本土では行われていない。インドである。製造業(製造プロセス)が米国内では今やほとんど行われていないのと全く同じである。こんな流れの中で、敢えて顧客先の事業の中身には一線画して、兎も角、セキュアな土俵提供に徹するコロケーション・センター業者のモデルは今後のITサービスの大きなモデルとなっていこう。実際、米国企業のITアウトソーシング実態は全くもって各社各様で、ITセキュリティー、空調、電源管理完備した、スペース借りニーズは根強いだろう。この表、日本のITベンダー業界の今後を占い、自社の事業ポジションを再検証する上でも活用されたい。

業者タイプ企業名事業推進モデル
ハードウェアベンダーIBM, HP, Sunパッケージアプリケーション提案力強化/ 開発・サービス提供の標準化。益々ITコンサルティング・ソリューションベンダー化。パートナーシップ強化
ソフトウェアベンダーOracle, SAP, Microsoftハードウェアベンダーとの連携。ASPサービスモデル追求。ソフトウェアインフラ、パッケージソリューション提供から踏み込んで、ここでもコンサルティング力充実へ
ITアウトソーサーEDS, Perot, Indiaサービス提供メニューの充実。ITサービス/業務代行サービス。特色あるSI、得意サービスモジュール(業務、業種いずれでも)の確立急務
ASP業者例:SalesForce.comSalesForceの成功ASPモデルの追及(Data Management Sol)。ハードウェアベンダーによる取り込み
コロケーション・センター業者多数企業サービス提供内容充実、安全、安心性完備。ハードウェアとソフトウェアのリセール
ソフトウェアモジュールベンチャー多数企業新しいインフラソリューション発想か、業務・業種パッケージアプリケーション開発力が決め手。大手ベンダーへの食い込み必須

◆氏家 豊氏◆
SBFコンサルティング代表。日本国内でIPO、VC投資、M&A関連業務に携わっていた当時から、シリコンバレー代表企業の日本法人を担当。日本の研究・技術計画学会会員。SBFは、ソフトウェア、コンピュータ・ネットワーク、その他エレクトロニクス分野に亘って、主に日系企業向けに技術R&D、製品開発、その後の資本提携・企業投資を含む事業開発段階のサポートを行うリサーチ&コンサルティングチーム。

http://www.sbfconsulting.com/東北大経卒。

※「海外トレンド」は、米国シリコンバレーでベンチャー企業関連のコンサルティングや情報収集に携わる日本人ビジネスマンによる現地からの最新情報を中心に、海外各地のベンチャー企業の動きを紹介するコーナーです。

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