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NIKKEI NET

更新:2009/07/02

(1/11)米国流情報開示に学ぶ点(石戸 太氏)

 アメリカ環境法の基盤となるものにスーパーファンド法がある。

 1980年12月11日、当時の米大統領であったジミー・カーターが「包括的環境対策・補償・責任法」と呼ばれるCERCLA(Comprehensive Environmental Response, Compensation, and Liability Act of 1980)に署名し、別名スーパーファンド法が始まった。これを機会に、連邦政府レベルによる全米に広がる汚染地域を対象とした浄化プログラムの始まり、スーパーファンド法プログラムを通じ、EPA(米環境保護庁)がリードを取り、事故が原因で汚染された土壌、有害廃棄物の不法投棄により汚染された土壌などの修復に向けた長い歴史の幕開けとなった。

 EPAの立場は、汚染土壌への緊急処理の対応だけに留まらずに、汚染された土壌に含まれる汚染物質からの地下水への影響、汚染土壌の処理、取り扱い、汚染物質の廃棄に関する処理技術の開発を推進し、汚染サイトに隣接する住民への情報開示や対処に向けた活動への参加を呼びかけるまで様々な活動をしている。EPAは、修復した土壌、地域の再利用までの決定権を有し、汚染土壌修復の統括的な立場にあり、汚染修復を命ずることができ1980年以降EPA's Enforcement Programの名の下に2.4兆円に及ぶ措置を講じてきている。

 では、スーパーファンドが適用されているサイトはどの程度あるのだろうか。

 包括的環境対策・補償・責任法のデータベースが一般に開示されており、これらの情報はインターネットを経由して瞬時に閲覧することができる。因みに、修復優先順位の高いサイト(National Priorities List sites)をデータベースで選んでみると、データベース上では1609箇所の汚染サイト情報のデータを見る事ができる。因みに、この数字の中には、既に修復作業が終了し、安全であると表示されているサイトも含まれている。

 スーパーファンドの適用を受けた民間、政府関連のサイトのうち、62%に相当する966箇所のサイトは、修復工事が完了しており、残りの422サイトは現在も引き続き修復工事が慣行されている。しかし、今日においても4人に一人のアメリカ人は、スーパーファンドの適用を受けたサイトから3マイル以内に住居しておりおり、毎年、今まで知られていなかった化学物質や廃棄物が見つかり、人体の影響と環境への潜在的な危機の見地より、適切な新しい技術研究開発が盛んに行われている。

 上記に述べるスーパーファンドサイトのデータベースの他にもEPAでは様々な情報を開示している。参考までにもう一件のデータベースをご紹介する。Envirofacts Data Warehouseと称するサイトがあり、このサイトでは、スーパーファンドの他に、自分達が住んでいる近郊で、どのような有害廃棄物が発生しているかの情報を入手することができる。例えば、弊社のある郵便番号94085を入力して検索すると、7件の会社・施設が表示され、有害廃棄物を生成している企業名、住所、電話番号、隣接地域情報に加え、どのような有害物質がNAICSコードに準じて見ることが可能だ。検索する際には、トピックとして、廃棄物、廃水、毒性の高い物質、大気、土壌、放射性物質に区分されている。中でもユニークと思われるのが、大規模施設を対象とした環境規制準拠の履歴もみることができるので、興味のある方は、Envirofacts Data Warehouse のサイトを覗いてみていただきたい。

 スーパーファンドサイトの再利用という観点から一例を取り上げる。Fairchild Semiconductorという名前に懐かしさを覚える読者もいらっしゃると思うが、シリコンバレーにあるマウンテンビュー市にあった。フェアチャイルドのあった半導体工場は有機溶剤が地下タンクから漏出し、地下水汚染を引き起こし1981年当時は大きな問題となった。その後、スーパーファンドの適用を受け、EPA、カリフォルニア保健サービス省、Keenan-Lovewell Venturesの協力のもとに当該地域を浄化し、現在はNetscape Communicationsの新しいオフィスとして再利用されている。再利用にあたっては、再利用開発の浄化に対する責任範囲を考慮し、Prospective Purchaser Agreementと呼ぶ契約をEPAとデベロッパーの間で締結し、汚染浄化にEPAが参与することにより、浄化が完了した後のデベロッパーへの責任範囲を特定するといった方式が取られた。

 このようにスーパーファンドサイトが再利用されているサイト、並びに再利用を目指して浄化に着手されているサイト数は全米で550箇所に及んでいます。これらのスーパーファンドサイトの再利用施設が生み出している経済的効果は1300億円に及び、3万人の新規雇用を生んでいると発表されています。スーパーファンドサイトの再利用に関する情報は、Superfund Redevelopment Programで詳しい情報を入手することができます。

 昨年を振り返り、日本でも多くの環境問題が取り上げられるようになった。

住宅地、学校、公園といった市民が接する施設での土壌汚染の発覚、アスベスト問題、目に見えにくい大気汚染や水質の悪化など今年も多くの事象が取り上げられることと思われる。アメリカの環境規制に身をおく筆者としては、情報開示に日米での隔たりを感じせざるおえない。リサイクルを中心に、確かに日本人の環境への意識は高いものがあるといえるが、自分たちの枠を超えた領域で発生する環境汚染には、事前保護のシステムに課題が残っている印象を受ける。より多くの情報開示の導入され、一般市民が手軽に入手できる情報の環境づくりが、これからの日本の環境対策に大きな変化をもたらす一歩と思われる。

◆石戸 太(いしど・とおる)氏◆
 ディト株式会社(本社サンフランシスコ市)President & CEO。1984年よりシリコンバレーを拠点に半導体を中心としたビジネス(製造、販売)を手がけるとともに、インテル社との間で0.13um向け装置共同開発を5年間行なう。現在, セキュリティーに特化したネットワーク・コンサルティング、システム開発、米国製品の日本市場向けローカリゼーション、日米企業間の業務提携、共同開発を中心に活動を行っている。昨年、フォーチュン・トップ100米国企業と日本企業との業務提携をまとめた。http://www.dittoinc.comを参照。

[1月11日]
※「海外トレンド」は、米国シリコンバレーでベンチャー企業関連のコンサルティングや情報収集に携わる日本人ビジネスマンによる現地からの最新情報を中心に、海外各地のベンチャー企業の動きを紹介するコーナーです。

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