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セッション2 「ユビキタスネットワーク産業の創出」
ユーザーの視点、より重要
討論する(左から)朴、吉田、藤井、櫛木の各氏(19日午後、東京国際フォーラム・ホールC)

 セッション2では「ユビキタスネットワーク産業の創出」というテーマで、松下電器産業の櫛木好明常務、トヨタ自動車の吉田博昭取締役、マイクロソフトプロダクトディベロップメントリミテッドの藤井照穂プレジデント、韓国サムスン電子の朴魯柄副社長らがパネル討論した。司会は野村総合研究所の村上輝康理事長。

 司会 今日はユビキタスにかかわる様々なコンセプトの位置づけをしたい。まずユビキタスネットワーク産業について普段考えていることを紹介していただきたい。

 櫛木 ユビキタス時代のネット家電サービスは家庭内では3つに分類している。AV関連を中心とした「eエンターテインメントライフ」、防犯や健康などの「eセーフティーライフ」、白物家電の遠隔操作など「eコンビニエンスライフ」だ。ユビキタス社会を実現するには、個性豊かなサービスと最適なコンピューティング環境が必要だ。

 藤井 ビジネスや家庭内での様々な情報を統合的に扱えるようになるには解決すべき技術的な問題があるが、最も大事なのは情報にアクセスするための機器が多く出てくることだろう。それぞれの機器が自由に情報をやりとりするためにソフト会社としていかに貢献できるかを考えている。

 吉田 ユビキタス社会の一端として高度道路交通システム(ITS)を考えると、技術も大事だがそれを使う人間1人ひとりを主人公にしていく考え方が最も大切だ。消費行動は感情に大きく左右される。供給側がいくら理屈をつけても空論に終わり、実際の展開ができなくなるのではないか。

 司会 理想的なユビキタスネットワーク社会が到来する時期はいつごろになるだろうか。

 櫛木 2007年ごろになる可能性が高い。(機器同士の)接続やユーザーインターフェースなど機器側の開発にも大きな課題を抱えているが、それより重要なのはプライバシーなど法律上の問題だ。ユーザーにメリットをもたらす効果と、ネット上のウイルスのような反作用とのバランスの中で、効果の方がより大きいと認識された時がユビキタスネットワーク社会の始まりだと思う。

  コンテンツ(情報の内容)配信でも著作権保護の問題や、もっと容量が大きい通信環境の整備など多くの課題を解決しなければならない。ウイルスやハッキングなどの問題も深刻さを増している。これらを解決し、何らかの満足の得られる状況が来るのは2010年ごろになるのでは。

 司会 産業側のビジョンに対して、ユニバーサルデザイン論を展開している(会場有識者席の)関根千佳ユーディット社長はどう考える。

 関根 これまで機器は「できるから付ける」という発想で機能を次々に追加してきたが、現実にユーザーはそれを求めているのか、本当に切実なニーズからその機能が付けられているのかといった観点を持っているのかを伺いたい。

 櫛木 消費者が本当に必要としているものを作るには消費者との対話が必要だ。モノ作りの現場で実証実験をして改善していく過程を10回繰り返さなくては必要なものには突き当たらない。その過程で収れんしてきたものが本当に役立つものだと思う。

  たしかに「良い」というのは「多い」という意味ではない。ユビキタスな製品というのは一つの小さい機器にすべての機能を統合するわけではなく、特定の機器ごとの機能に焦点をあてて設計したものだと考えている。

 司会 (会場の有識者席にいる)データメディアの唐澤豊社長から、通信をエンドユーザーに開放することが必要という指摘が出ている。

 藤井 消費者も一緒になってソフトウエアを開発するというモデルを考えることが1つの方法だと思う。コンピューターの専門家でなくても自由に作業できるプラットホームを提供しなければならない。セキュリティーやプライバシーなどの共通部分を固めて、消費者がそれぞれのニーズにあったものに安心して挑戦できる環境を整えることが大事だ。

 司会 個々の企業にとってユビキタスネットワークは「市場」でもある。どんなプロセスで産業・市場が具現化していくのか。

 櫛木 ユビキタスに関する技術は異種技術の混合で、著作権や課金認証といった問題も異なるルールの混合と言える。広範な異種企業の結合によって成り立つのがユビキタスのインフラ基盤だと思う。異種企業の結合によってBtoB(企業間取引)の多様性が実現できる。機器、サービスとも多様性を高めると同時に、ユーザーにとって最もメリットのある組み合わせに淘汰(とうた)を進める。これがユビキタスネットワーク社会での産業の発展過程と考えている。

 吉田 一番難しいのは「ユーザーの視点」とは何かということだ。生産財、消費財、BtoB、BtoC(消費者向け取引)といった様々な取引の中で、誰を「お客様」として見るのか。車では、個人でドライブを楽しむ人に求められる要素と、仕事で荷物を運ぶ商用車に求められる要素とは全く違う。

 インフラ面では「メディアフリー、キャリアフリー、方式フリー」にして、どの無線電波でも受けられるように機器を1つにする必要がある。ただ、技術の問題は全体の3割程度。後は法律や業界風土など非技術的な要素の方が、事業展開の際の障害になるのではないか。

 司会 メディアフリー、キャリアフリーのユビキタス機器は自動車でも家電でも共通なものになるのか。あるいは各用途に応じた特別なものになるのか。

 吉田 これは消費者が何を専用機で望むのか、汎用機で望むかによる。コストと機能をどこまで求めるかによって区分されていくのではないか。

 櫛木 人を中心に考えると、使われる局面によって異なるものになる。最近、車にも(カーナビゲーションシステムなど)音声認識が入り始めたが、人に優しく、使いやすく、安全が基本になるだろう。

 司会 技術面の話が出てこなかったが、会場にいる産業技術総合研究所の高木浩光さんはどう考えているか。

 高木 解決すべき問題としてプライバシーがあるが、解決の見通しはまだ立っていないと思う。ネットのように全く自由な世界を提供して消費者にサービスを考えさせるという方式と、プライバシーの問題は相いれないところがあり、どうバランスを取っていくべきだろうか。

 藤井 普段、自らの個人情報を他人に話すかどうかは、相手が信頼できるかどうかを自分で判断して決めている。ネットでは相手が見えにくいのでプライバシー管理が難しい。そういう機能をソフトウエアに付加し、普段は人間が自然にやっていることをインターネット上でも実現できるようなインフラを提供しなければならない。

[3月31日/日本経済新聞]

パネリスト
朴 魯 柄氏 サムスン電子 デジタルメディア総括副社長(韓国)
吉田 博昭氏 トヨタ自動車 取締役
藤井 照穂氏 マイクロソフト プロダクト ディベロップメント リミテッド プレジデント
櫛木 好明氏 松下電器産業 常務取締役
司会
村上 輝康氏 野村総合研究所理事長
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