僕は20代をパリダカ三昧で過ごし、サハラですごい人たちをたくさんこの目で見てきた。そこには絶望的な状況を何度も何度もひっくり返して前進する人たちがいた。飲まず食わず眠らずで何十日も走り続ける人たちがいた。ガリガリにやせ細り、だけど眼だけはギラギラさせてダカールにたどり着く人たちがいた。そういう人たちを見ていると「人間て、本当にすごいんだなあ…」と単純に感動するのだ。そして人間のもつ「気迫」とか「執念」とか「意志の力」ということに想いが行くようになる。そりゃあもちろん、パリダカはモータースポーツだからいいマシンや潤沢な資金や盤石な体制が必要だ。コンジョーや気力だけで走りきれるような甘っちょろいものじゃない。また、そんな気持ちでいると命を失いかねない。でも、それでもやっぱり最後の土壇場で勝敗を決するのは



なのである。
 そんななかで、僕はもっと人間クサイ競技に興味を持つようになった。もっとその人の「人間としての総合力」が試されるような、原始的で荒々しいレースに挑戦したくなった。そこでMTBの耐久レースに出たり、遠泳のレースに出たり、山岳耐久マラソンにでるようになった。そしてしまいには“アイアンマンレース”と呼ばれるロングトライアスロンに挑戦するようにまでなったのである。そういった世界の究極の形がアドベンチャーレースなのだ。


 『レイドゴロワーズ』は5人1組でチームを組み、人力だけを頼りに深い大自然の中を踏破していくノンストップレースだ。800キロにも及ぶルートにはさまざまな地形が組み込まれていて、選手はランニング、マウンテンバイク、カヌー、乗馬、クライミングなどのタスクをこなしながら進んでいく。年によっては「ラクダ乗り」や「セーリング」「パラグライダー」などの種目が組み込まれることもあり、アウトドアスポーツ全般にわたる高度なスキルが求められる。
 面白いのはメンバー5人のうち少なくとも1人は女性じゃなくちゃダメで、また途中でひとりでも脱落者がでるとその時点でチームがリタイアになること。つまり5人は最後まで一枚板であることが求められるのだ。



 だから、例えば誰かが疲労して遅れると、他のメンバーはそれを助けるために荷物を持ったり、肩を貸したりする。極端な場合は、消耗した仲間を他のメンバーが交互に背負って歩くこともあり、それは他のスポーツでは絶対に見ることのない感動的なシーンである。


 でも、いつもいつもそんな感動的でもない。
 別に聖人君主が出場しているわけじゃないのだ。
 感動と同じぐらい、ドロドロした人間同士の戦いがある。仲間割れがあり、誤解があり、ののしり合いがあり、邂逅がある。チーム競技ならではの面白さと難しさがそこにはある。極限状況の中で人間の腹の底をあぶり出し、真の強さを戦わせる競技である。
 2000年の春。今回で第10回の記念大会を迎える『レイドゴロワーズ』は舞台をこの




に求め、ヒマラヤでの開催になった。
 僕はそれを追ってヒマラヤ山中へと飛んできたのだった。












掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。
このホームページに対するご意見・ご感想は style@nikkei.co.jpまでお願いします。
NIKKEI NETは「cookie」を使用しています。
Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.