オバマ米新政権誕生

コラム:ホワイトハウスへの道

(11/20)オバマ氏が目指すべきはルーズベルト?それともレーガン?

 フランクリン・デラノ・オバマ――。

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン米プリンストン大学教授は11月中旬、オバマ次期大統領の名前に「ニューディール」の産みの親、フランクリン・デラノ・ルーズベルト大統領(通称FDR、在任1933―45年)の名前を混ぜた題名のコラムを発表。オバマ次期大統領はFDR時代から多くの教訓を学ぶべきだと説いた。

 自動車をはじめとする産業界、自治体、金融機関、個人まで政府による経済介入を求める声は強まるばかり。「小さな政府」を志向し、規制緩和や減税で経済回復を目指す「レーガン革命」は終焉を迎えたとの声をよく聞く。

 一方で「オバマ氏の勝利はレーガン時代の中心思想が依然として有権者に支持されている証拠」(大手世論調査のラスムッセン社長)との見方もある。オバマ氏は金融危機が深まるなか「95%の勤労世帯の税を下げる」と訴えて支持率を高めた。減税はレーガン大統領が傾斜した「サプライサイド経済学」の柱の1つ。選挙前の調査では「自分の税を下げてくれそうな候補」としてオバマ氏を挙げる人がマケイン氏を大きく上回り、共和党のおはこであるはずの「減税」という“アメ”を奪うことに成功した。

 オバマ氏にとって今後の試練は、上下両院で議席を増やし勢いに乗る民主党議会といかに対峙するかだ。これまでのところ、オバマ次期大統領は経営難のビッグスリー(米自動車大手3社)への政府支援に積極姿勢を示しているほか、首席補佐官に就くエマニュエル氏も景気下支えとしてインフラへの投資拡大が必要として、「ルーズベルト型」を望む民主党議会と歩調をあわせているようにみえる。

 ここで覚えておきたいのは「米国は基本的に中道右派の国」との見方が多いこと。米誌ニューズウィークの調査によると、自分を保守派とみなす人が40%なのに対し、リベラルを自称する人は20%にすぎない。10月上旬のラスムッセン調査では「(レーガン大統領一期目の就任演説のフレーズである)政府が問題を解決してくれるのではなく、政府こそが問題なのだ」との主張に約6割が賛成。反対は3割弱にとどまった。金融機関の支援に当初から世論の非難の声が強かったことをかんがみても、次々と支援の対象を広げると反感を浴びる可能性が高い。

 膨らむ財政赤字もオバマ次期大統領の手を縛る。いったん財政赤字が膨らむのは仕方ないとは言え、早期に財政健全化路線に戻すことができるか。そのとき、勤労世帯に約束した減税を続けることができるか。選挙活動中に減税をうたって当選。その後、撤回せざるをえなかった大統領(ブッシュ父)が再選を果たせなかったことは記憶に新しい(read my lips, no new taxesのフレーズが語り草に)。

 減税は望むが本質的には政府の介入を嫌う「レーガン型の国民」、大きな政府を志向しがちな「ルーズベルト型の民主党議会」。難しい舵取りを迫られるオバマ次期大統領は「フランクリン・フセイン(オバマ氏のミドルネーム)・レーガン」を目指すべきかもしれない。(国際部=宮下奈緒子)