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激突の現場

野党共闘の憂うつ

 「民主党が多数を制すれば暴走が始まる危険性が大きい。バラマキと暴走はもうたくさん」。社民党の阿部知子は通勤客が行き交うJR藤沢駅前で訴える。政権交代が実現した際の民主党、国民新党との「連立の要」がキャッチフレーズだが、批判の矛先は自民党だけではなく民主党にも及ぶ。

◆影響力残せるか

 自民党前職に民主、社民両党がそれぞれ挑む神奈川12区。「選挙協力で2人ともメリットがある。選挙区替えを」。昨春、民主党代表だった小沢一郎は、側近の元職、中塚一宏との共倒れを防ごうと阿部に打診したが、半年もの協議の末、物別れに終わった。

 社会保障費の自然増抑制方針の撤回、労働者派遣法改正案……。党政審会長の阿部には政策実現に向け民主党を動かしてきたとの自負がある。

 参院に加え衆院でもキャスチングボートを握れば連立内で発言力は増す。こんな皮算用は民主党への強い追い風の前で狂い始めた。「社民党に入れても死票になるだけ」。選挙区を回る阿部もやるせない言葉を浴びる。仮に民主党が単独で衆院再可決が可能な3分の2を得れば社民、国民新両党への配慮も薄れるとの警戒感も強い。

 「1区は中林さん、比例は国民新党に」。国民新党の新人、市川智志は6月、昨年から準備した神奈川1区からの出馬を断念し比例代表に回った。民主党がいわば落下傘候補の中林美恵子を擁立。“後出しジャンケン”に国民新党は激怒したが、1区の自民党候補は首相、麻生太郎の側近である松本純。小沢は勝てる野党候補にこだわった。

◆調整はしたが…

 民主党と社民党が競う選挙区は前回衆院選の31から14に、国民新党との間では9から1に激減した。野党共闘のかけ声の下、小沢主導でじっくり調整した成果だ。それでも民主党が自党候補の当選を最優先する冷徹さを貫くなら少数野党は煮え湯を飲まされかねない。

 市川も比例転出の際、民主党と1区の比例票を国民新党に回す約束を交わした。だが関係者は「まだ手応えはない」。

◆埋没の恐れも

 社民、国民新両党も衆院選で政権交代を目指すが「民主党と合わせて過半数がベスト」(国民新党幹部)というのが本心だ。二大政党の勢力が伯仲してこそ、少数政党はいずれかの陣営に付くことで法案や首相指名の事実上の決定権を得る。参院でそれぞれ5議席にすぎない社民、国民新両党が民主党から譲歩を引き出せるのも、過半数確保には他の野党の協力が不可欠という事情による。

 1993年の衆院選後は日本新党と新党さきがけがキャスチングボートを握った。誕生した非自民政権で日本新党から細川護熙が首相、さきがけから武村正義が官房長官のポストを得た。

 民主党は衆院選後、社民、国民新両党と連立を組む方針。とはいえ民主党代表の鳩山由紀夫は本音を漏らした。「来年の参院選で民主党が単独過半数を取れば、その事は消えていく。それまでは連立が最優先課題だ」

 つかの間の連立にすぎないなら利点は薄いが、野党のままでも独自政策を実現できない。国民新党代表の綿貫民輔は「民主党にすり寄る気はない」と独自路線もちらつかせる。「社民党は新しい政治の中の不安解消役」。連立を念頭に訴える党首の福島瑞穂にとっても党勢退潮に歯止めをかける正念場だ。(敬称略)

神奈川12区

桜井 郁三 65 自 前[公]
山田  茂 45 諸 新
中塚 一宏 44 民 元
渡辺 慈子 61 共 新
阿部 知子 61 社 前[国]

神奈川1区

松本  純 59 自 前[公]
香西 亮子 35 共 新
中林美恵子 48 民 新[国]
山本 誠一 37 無 新

(注)届け出順。年齢は投票日現在。[公]は公明推薦、[国]は国民新推薦。敬称略

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