「顔が見えない」「指導力に欠ける」……。就任以来、こんな評判がつきまとってきた福田康夫首相が政権の看板にしようと力を入れているのが「消費者行政の一元化」だ。ようやく、具体的な検討が始まったばかりだが、すでに迷走の気配がうかがえる。
首相が公式に、消費者行政一元化の新組織創設を表明したのは今年1月の施政方針演説だが、実際には昨年10月の所信表明演説の時から温めていた課題だった。11月には国民生活審議会に、消費者の視点から行政、法制度のあり方全般を総点検するよう指示するなど布石は打っており、2月には首相官邸に消費者行政推進会議(座長・佐々木毅学習院大教授)を設けた。首相がこだわるのは「国民の目線」だが、今のところ、議論は「霞が関の目線」に終始している。
首相がこれまでに示した方針は「新組織を創設」し「強い権限を持たせる」ことに尽きる。推進会議の内部では、公正取引委員会が所管する景品表示法や、経済産業省が所管する特定商取引法などをすべて新組織に移し、執行権限を一元化すべきだなどの議論が始まっている。しかし、既得権を奪われることに危機感を抱いた省庁側は早くも激しく反発している。
「公取委が全部引き受けます」――。公取委のある幹部は町村信孝官房長官に会い、公取委の強化こそが消費者行政の一元化であると力説した。この幹部は米国や韓国などで、公取委が消費者行政全般を担っている例も示した。
一方、経産省は「行政に隅々まで消費者目線を徹底できるか、各省がより消費者問題に取り組むということができるか、という方が大事だ」などと主張し、与党幹部らの説得に動いている。同省を切り離し「消費者庁」を設置する動きに警戒を強めているためだ。
議論は「応援団」も巻き込んでいる。「消費者庁をつくると改革派、そうじゃなければ後ろ向きという構図がつくられかけている」――。自民党消費者問題調査会のある議員は憤慨する。「消費者庁をつくっても肥大化した組織ができるだけ。内閣府の国民生活局を強化すればいい」という意見も出ている。
混乱の芽は省庁や国会議員の権限争いだけではない。重要な論点である「法の抜け穴」対策を巡っては「悪徳商法は法のすき間を狙ってやっているので、後追いにならないような仕組みにしなければいけない」という議論と「『後追いからの脱却』とは事前規制の強化だ。規制改革の流れに逆行する」という意見がぶつかりあっている。「閣内不一致」が目立つ空港の外資規制を巡る混乱を思い起こさせる。
首相は「国民のためになる行政をしたいということに反対なのか。そんな人はいない」と述べ、静観を決め込んでいるが、政権発足以来、何度となく聞かれた「首相の真意がわからない」というため息が聞こえてくる。自ら掲げた看板を「福田色」に塗ることができるのか、首相の決意が問われている。
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