TALK SESSION 03 「日経電子版」で仕掛けるビジネスチャンス

佐々木 康(デジタル編成局編成部[2009年入社]) × 橋本 あずさ(デジタルビジネス局[2008年入社])

日経IDを基軸としたプラットフォームで、より時代のニーズに応える情報発信を実現する

日本経済新聞のデジタル版として2010年にスタートした「日経電子版」。有料会員数は年々増加し、50万人(2017年1月時点)を超えるウェブメディアへと成長した。日経のデジタル戦略の核となる日経電子版のサービス開発を担当する佐々木と、広告営業に携わる橋本の2人が日経電子版のポテンシャル、今後のビジネスチャンスを語り合った。

―日経電子版が50万人という有料会員数を持つまで成長してきた理由を教えてください。

橋本

 日本の新聞社で最初に本格的な電子版事業を有料サービスで始めたのが、私たち日本経済新聞社です。サービスを開始するに当たり、社内で最も議論したことの一つが、購読料の設定でした。日経電子版の購読料は4200円(宅配紙とセット購読の場合、電子版料金は1000円)。これは宅配紙の購読料とほぼ同水準で、海外の新聞社の電子版と比較しても高い金額です。「こんな価格で売れるのか」「高すぎるのではないか」という声もあったと聞いています。しかしその心配をよそに、創刊以降右肩上がりで成長しています。

佐々木

 日経電子版は有料会員数で世界の有力メディアと競い合う水準にまで成長してきています。英フィナンシャル・タイムズを加えた日経グループでは、米ウォール・ストリート・ジャーナルを抜き、米ニューヨーク・タイムズに次ぐ世界2位の規模です。

橋本

 他紙と比べて購読料が高いのに、なぜ成長できているのか。それは日経のコンテンツの質と、読者層に起因している部分があります。日経電子版の読者の多くはビジネスパーソン。日本国内だけではなく、海外を飛び回る方も多い。日経電子版は国内外どこにいても必要な経済情報を得られるだけに、ビジネスパーソンの多くに購読していただけているのだと思います。また豊富なコンテンツに加えて、検索や記事保存など便利な機能が充実していることも成長の理由に挙げられると思います。

佐々木

 海外にいるビジネスパーソンが「日経電子版は役に立つ」と言ってくださる話は、私自身、中国に研修に行っていたときによく聞きました。紙面イメージをそのまま表示する紙面ビューアーは統一されたレイアウトのため、記事を読みやすいようですね。

―日経電子版が成長してきた中で、広告媒体としての役割はどのように変化してきましたか。

橋本

 ここ10年の変化として、広告主がデジタル専門の担当者を置き、デジタル広告専門の予算を設け始めたことが挙げられます。デジタルの特性をきちんと把握し、適切な戦略を提案しないと広告出稿をしていただけません。日経電子版など日経グループが提供するサービスの会員になると、ユーザーには日経IDが付与されます。日経電子版はこの日経IDという読者のデータベースを活用し、広告主の細かなニーズに応えられる特徴を持っています。私はラグジュアリーブランドと輸入車のクライアントを担当していますが、商品はとても高額で、ある程度の年収がないと手が出ないものが多い。そんな高額な商品のブランディングを行う場合、多くの人の目に触れる広告を掲載するよりも、年収や役職などターゲットの属性を絞って打ち出すほうが費用対効果は高まります。さらにラグジュアリーブランドはそのブランドイメージが重要なため、いろいろな媒体に露出することでブランドイメージを損なうリスクもある。その点、日経電子版は日本を代表するビジネスメディアであり、会員制という特性がある。媒体の強みが明確だからこそ、選ばれているという事実があると思います。

佐々木

 読者が日経IDを持つ日経電子版はユーザー属性が明確なため、購読者の顔がはっきりとわかる。だから「日経電子版の読者はこんな人たちです」と広告主などに明確に伝えやすい。日経BP社などグループ会社とも連携したことで、日経IDを持つ会員は約750万人います。これだけビジネスに特化した会員情報を保有しているメディアはほかにありません。会員データは広告効果を高めるために生かすことはもちろんですが、データなどを分析することで電子版の改善にもつなげることができ、よりよいサービスへと成長させることができるのです。

―実際に分析したことで、どのようなことがわかってきましたか?

佐々木

 まず有料会員読者はどのような属性の方なのか、きちんと把握することから始めました。予想通り、多くのビジネスパーソンに読まれているメディアで、年齢層が比較的高く、若い人の割合は低かったのです。このままではいずれ日経離れが起きるかもしれない。そこで若い人に会員になってもらい、日経電子版を読んでもらうには、どのようなプロモーションを打つのがいいのかを考えました。

―具体的にどのような戦略を練ったのでしょうか?

佐々木

 若い人が読みやすいように日経電子版の改良に努める一方、2016年2月には若者をターゲットにした「NIKKEI STYLE」というウェブメディアを新しく立ち上げました。コンセプトは「ライフスタイルに知的な刺激を」。日本経済新聞社と日経BP社が新聞、雑誌の編集で培ってきたノウハウを結集し、サイトを共同運営しており、経験豊富な編集長がそれぞれの専門チャンネルでサービスを展開するライフスタイルサイトです。日経電子版はブランド価値を守るためポータルサイトに記事を転載することはしていませんが、NIKKEI STYLEは記事の転載も協力し、読者の導線を確保しようとしています。これは大きな決断でした。このような積極的なチャレンジで、これまでリーチできていなかったユーザーを獲得していこうとしています。そしてNIKKEI STYLEに訪れたユーザーを日経電子版に誘導することで、購読者を増やすことを目指していきたいですね。

橋本

 広告営業の立場からすると、日経電子版のターゲットであるビジネスパーソンとマッチしづらかった消費財などの商品の広告を打ち出す幅が広がったメリットがあります。日経全体のプラットフォームの中でより効果的な広告の提案ができるようになりました。どんどんユーザー目線に立って、サービスをつくっている実感があります。

佐々木

 そうですね。アプリのUI(ユーザーインターフェイス)もずっと検討を重ねてきて、どんどん改善してよくなってきています。記事の細かい行間のマージンを広くしたり、見出しを全角ではなく半角にして文章が途中で切れないように工夫したりと、ユーザーフレンドリーな観点で改良しています。

橋本

 ユーザー目線で考えると、電子版の読者にとって、広告はどうしても邪魔になりがちです。だからこそ広告に関心を持ちそうなターゲットをセグメントし、そのターゲットに合わせた広告を打ち出していく手法が大事になってきます。広告主も従来はインプレッション数(広告の露出回数)を重要視していましたが、現在はどの手法が効果的なのかといったことを考えるように変わってきました。今年から外部のデータベースと連携して、ユーザーの興味関心といった部分も見ながら属性を整理し、より細かな部分でセグメントをして、ユーザーが関心のある広告を出すような手法を採用しています。読者が使いやすい媒体こそ、高い広告効果が生まれる。そのことを念頭に置きながら、これからも媒体のあり方を考えていきたいと思います。

佐々木

 どんなメディアを目指したいかという議論を重ねていくと、部局の壁が取り除かれていく気がします。開発側からも「広告の導線としてこんな風に改善すれば、より高い効果が出るんじゃないか」と提案するようにもなっています。

橋本

 そうですね。開発チームが広告のことをよく考えてくれているというのは、とても肌で感じます。これからは日経電子版に広告を掲載するだけではなく、イベントを行うなど企業とコラボレーションする広告のあり方も探っていきたいと思います。私たち日経やコラボレーションしている企業だけでなく、ユーザーにとっても有益な情報を提供するサービスをこれからも考えていきたいですね。企業に広告を出稿してもらうビジネスに加え、個人ユーザーも巻き込んだ収益モデルを持つメデイアにならないと大きく成長することはできません。幸いにも挑戦を後押しする風土がこの会社にはあります。多くのチャレンジをしていきたいと考えています。

佐々木

 挑戦あるのみですね。その結果として、メディアとしても、会社としても、個人としてもさらに成長していきたい。日経グループ入りしたフィナンシャル・タイムズからもどんどん人が来て、開発チームの中に新しい考え方が生まれています。日経のデジタル事業の現場はそんな刺激あふれる環境です。

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