
| 日本経済新聞社・日経産業地域研究所は9月20日、虎ノ門パストラルで日経消費経済セミナーを開催した。 テーマは「市場をつくるデザイン力」です。技術革新は着実に進んでいますが、市場が成熟化するなかで、研究開発費に見合うほどには消費者ニーズをとらえられなくなっています。市場を開くには、デザインやコスト管理にも配慮した新しいビジネスモデルの構築が欠かせません。玩具・日用品について米国の動向に触れながら、葉佐商品研究所代表取締役の葉佐弘明氏に講演していただきます。また、競争が激化する薄型テレビ業界にあって独自の地歩を築いているバイ・デザインの経営戦略について、同社取締役の伊豆田伸吾氏に講演していただきます。 (10月22日発行の「日経新製品ウォッチャー62号」) |
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| バイ・デザイン取締役 国内統活責任者 伊豆田 伸吾氏 <略歴>1962年生まれ、明治大学文学部卒、山水電気入社。船井電機、タイトー、京セラマルチメディアコーポレーション、セコムを経て、2004年バイ・デザイン入社。 |
質感デザインの逆張りマーケティング戦略
| バイ・デザイン取締役 国内統活責任者 伊豆田 伸吾氏 |
バイ・デザインはデル日本法人トップから転身してアキアを起こした飯塚克美によって、液晶テレビ、プラズマテレビなど薄型テレビを製造・直販する会社として2003年6月に設立された。工場を持たないファブレスビジネスを徹底させるとともに、先進的な技術を持つメーカーと積極的にパートナーシップを推進。企画、開発、デザインは日本で、製造は中国・台湾メーカーに委託するというOEM(相手先ブランドによる製造)ビジネスモデルを採用した。独自のローコストオペレーション、徹底した少数精鋭主義で固定費を抑え、低価格を実現している。 本社は東京・築地にあって、営業所が大阪に1カ所、米ラスベガスに販社、中国・アモイに事務所がある。日本事務所のメンバーは約30人。派遣社員を加えて40人ほどだ。アモイ事務所に5人いる。2004年の売り上げが約5億円、2005年が56億円、2006年が73億円、今年は85億円を目標にしている。 飯塚は「日本は競争が厳しい。我々のような新規参入ブランドが戦うには不利だ」と、米国を中心にしたOEMを考えていたが、今では国内の売り上げの方が多い。 OEMは競争相手が多く、毎年うまく仕事を確保するのが難しい。しかし国内はバイ・デザインブランドで始めたので、販路を築いて自社ブランドを定着させれば売り上げが急に減ることはない。 調査会社のディスプレイサーチによると、国内の出荷台数は現在7位だ。2008年度には日立製作所を抜いて第5位を目指している。6位から下は40万〜50万台で接近しており、ハードルは高いが狙える位置にある。 |
■大型で安いモデルを販売■■■■■■■■■■![]() 国内の商品ラインアップは、液晶テレビとプラズマテレビとDVD内蔵液晶テレビだ。液晶テレビは15〜47インチで、デジタルチューナーを搭載しているものと、非搭載のアナログ製品がある。プラズマテレビは42インチと50インチで、やはりデジタルチューナーを搭載しているものと搭載していないものがある。今年はDVDプレーヤーを内蔵した液晶テレビに力を入れている。 20年ほど前、日本の家電業界ではNIES(新興工業経済群)ブームで、韓国メーカーなどが注目された。当時はブラウン管テレビとビデオデッキの時代で、そうした新規参入メーカーは最も安い15型、20型のテレビ、普及価格帯の再生専用ビデオデッキを扱っていた。その影響が尾を引いて、NIESの電機メーカーは今でも低価格品メーカーというイメージから脱しきれていない。 バイ・デザインはこの点を踏まえて、「大型で安く」というコンセプトで参入した。最初の発売機種は業務用の40インチ、30インチ、22インチの液晶テレビだった。40インチの価格は50万円とした。当時、国内の大手の販売価格は100万円ぐらいだった。 現在の主力はDVDコンポも含めて、小型が9割ほどを占める。理由はひとつに、大手が20型以下はコストが合わないために撤退していることが挙げられる。 ブランドは「バイ・デザイン」のほか、PB(プライベートブランド)がある。eyefi(アイファイ)、tecHDisplay(テックディスプレイ)はドン・キホーテさん向けだ。 デザインでは、まず質感にこだわっている。今は黒で、素材はプラスチック樹脂がメーンだが、2004年に発売した40、30、22インチのモデルはアルミ製だ。アルミは素材価値が高く、仕上げにも手間がかかる。今は国内の大型テレビでもアルミを素材に使ったモデルはないと思う。しかし、私たちはアルミ素材のシルバーモデルを出した。流通業のバイヤーの方には「高級オーディオのような質感だ」と高く評価された。さらに大型で高い製品を大手の半額で発売し、市場に強いインパクトを与えた。 デザインは最近、感性価値とか消費者の個性に対応という点から注目されている。しかし、飯塚は最初からどこに売り込むときも「うちのはデザインがいい、デザインに金をかけた」と言っていた。1〜2年たつと流通のバイヤーの方やユーザーからも、デザインを評価する声が聞かれるようになった。価格で違いを出そうとすると、評判を落としがちだ。私たちは、少しおとなしめで、奇をてらわず、それでいて一歩先を行くデザインを心がけてきた。 ■家電店別に異なるデザイン■■■■■■■■■■■■■■ ビジネスの手段として、デザインを生かしている部分がある。家電業界は寡占化、グループ化が進んでいる。いかにほかのチェーンとの違いを訴えるかが課題だ。そのためバイ・デザインブランドも、型番やデザインが違うモデルを展開している。 大手メーカーの製品はどこの大手家電量販店でも売っている。量販店にしてみれば中身は同じなので、価格だけの勝負になる。5年保証やポイント制で、お客さんを囲い込んでいる。しかし、違いを出す最も簡単な方法は、違う製品を売ることだ。私たちは同一サイズでも、スペック、デザインなどを変えて、流通ルートごとにオリジナル製品を提供して好評を得てきた。 なぜ、こうしたデザインを武器としたビジネス手法がなかったのか。日本ではOEMを受ける会社は、最低1年間の契約で、取り扱い台数は3万台以上だ。プラスチック筐体をつくる金型代の負担も必要だ。いくら家電量販店さんの規模が大きくなったとはいえ、数千万円の金型料を負担して、3万台のリスクを持って、自分専用モデルをつくることはなかなかできない。しかし、私たちには専用モデルを提供できるノウハウがある。 私たちのテレビはデザインだけで売れているわけではなく、価格も大手メーカーの製品に比べて大型で5万円、中小型で2万〜3万円安い。低価格が実現できるのは、低コスト経営を貫いているからだ。社員は全世界で50人に満たず、事業所も世界で4カ所しかない。もちろん自社ビルはない。研究開発費も、独自の画像チップを共同開発したりはするが、研究所を持っているわけではない。生産はすべて外部に委託している。 ■中国で生産しコスト削減■■■■■■■■■■■■■■ 液晶テレビの生産は、中国では薄型テレビでトップクラスのメーカーに委託し、私たちの製品の7〜8割を占める。1年〜1年半に一度の割合で、共同で商品企画もしている。 テレビの金型は非常に高い。この金型代をどうやって抑え、同時に多くの機種を展開するかにノウハウがある。私たちがデザインしたものが一つあるとすると、私たちで金型費は出すが、中国メーカーが自社ブランドで売るときは、その金型を使っていいという契約をする。実質的に金型代は中国メーカーが7割、私たちが3割ぐらいの負担になる。 プラズマや液晶パネルの品質にもこだわっている。機種によっては国内メーカーの製品も使わせてもらっている。画像処理LSIでも画質や機能は大きく左右される。低価格帯の製品には安いチップセットを採用し、大型の高価格帯の製品ではジェネシス・マイクロチップとかピクセルワークスとか世界的なメーカーの製品を採用する。 設立当初のターゲットは米国だったが、今は国内を中心に欧米、一部のアフリカもカバーしている。ブラジルで日本と同じデジタル放送の方式が採用されたので、南米も視野に入れていきたい。 今後伸びていくのは、私たちが生産委託している中国だろう。現地メーカーなどと組んで、バイ・デザインブランドでの展開を考えたい。 最後になるが、バイ・デザインという社名が示すように、今後もデザインにこだわっていきたい。デザインがいいというだけでなく、取引先によってデザインを変え、取引先に目に見える利益を享受していただくというデザインの使い方を実践していけるのが私たちの強みだと思っている。 |