掲載日:2007/2/9(日経産業新聞)

| キリンのビール「ザ・ゴールド」 |
| 飲み飽きぬ味、飽くなき追求 |
チェコ製法に学ぶ![]() あえて熱処理、酸味抑える キリンビールは三月二十日、ビールの新製品「ザ・ゴールド」を発売する。ビールの本場のチェコにおいしさの原点を見いだし、これまでと違った飲み飽きない味わいを提案したのが特徴だ。容器も斬新なデザインにして、従来製品との違いを際立たせた。“新感覚”をアピールして、ビール離れが進んでいる若者の需要を掘り起こす。 苦みは「隠し味」 原料は麦芽一〇〇%。チェコ産を使用して、本場のおいしいビールづくりを再現した。 通常、麦芽だけを使用したビールは満腹感を感じやすく、何杯も飲み続けられなくなる。このため、国産ビールはプレミアムビールなどを除いて、副原料にトウモロコシやコメなどを使うのが一般的だった。ザ・ゴールドが目指したのは、麦芽一〇〇%でも飲み飽きないビール。そこでまず取り組んだのは、味のバランスの見直しだった。おいしいビールはよく「味わい深い、コクがある、うまみがある」などと表現される。それを味覚的要素に分解すると、「甘み、酸味、苦み」になるという。飲み飽きない味づくりの秘密は「酸味と苦みを見直すことにあった」(国内酒類カンパニー営業本部マーケティング部)。国産ビールはこれまで「生」を標榜(ひょうぼう)してきた。しかし、ザ・ゴールドは生ではない。その理由は「酸味」にある。生ビールは非加熱処理といって、醸造したビールの殺菌を加熱ではなく除菌用フィルターで処理する。その際、殺菌が進むようにビールを酸性化するため、味に微妙な影響を及ぼす。ザ・ゴールドはそれを避けるため、あえて生にしなかった。これが従来よりも酸味が弱く、飲み飽きない味につながった。もうひとつのポイントは「苦み」だ。原料のホップの苦みはビールの味づくりに欠かせず、これまでも苦みを強調するビールが多かった。だが、ザ・ゴールドは「苦みを飲み飽きない味を引き出す“隠し味”」(同)に見立て、微妙に調整した。ヒントは日本料理。同社はこれを「隠し苦味」と名付ける。チェコは世界有数のビール愛好国。国民一人あたりのビール消費量は年間百五十七リットルと、ドイツを上回る。麦芽一〇〇%ビールがこれほどまでに飲まれているのは、単に国民性だけでなく、飲み飽きない味に仕上がっているからだ。発泡酒などビール系飲料が定着したことで、ビールは一段と本格感のある味が求められている。プレミアムビールの人気が高まっているのもそのためだ。ザ・ゴールドはビールの本格感を国外のチェコに求めた。これ自体が新しいビールのコンセプトといえる。 斬新なデザイン 容器にも新しさがある。薄いゴールドと白を配色して、ビールの液色と泡をモチーフにしたデザインはシンプルで、「おやじくささ」がない洗練された雰囲気は若い人のフィーリングにも合う。国内のビールブランドは長年、大きな変化がなかった。キリンビールにとって「一番搾り」以来、十七年ぶりの新ブランドが市場に新風を吹き込む可能性は大きい。流通業界も「久しぶりの大型商品」と期待する。関係者によると、すでにスーパー、酒類量販店などが発売日に合わせて発注した量は百万ケースから二百万ケースになるという。ビール不振のなかでヒットを予感させる好調な出足といえるだろう。 (産業地域研究所スタッフライター 相良隼二) 【表】▼商品名 「ザ・ゴールド」 ▼発売日 2007年3月20日 ▼店頭価格・販売目標 350ミリリットル缶が207円程度、500ミリリットル缶が270円程度。今年内に約800万ケース(大瓶20本換算) ▼特 徴 アルコール分4.5%。うまみと苦みのバランスで飲み飽きない味に 【図・写真】3月の発売に向け急ピッチで生産(茨城県取手市の取手工場) |
| 開発者から | キリンビール国内酒類カンパニー 営業本部マーケティング部商品開発研究所新商品開発グループ主査の和田徹氏 |
| 本場に滞在し研究 低アルコール飲料の「氷結」などを開発したことはあったが、ビールは初めて。かねがね日本は世界のビールの味を悪くする張本人と考えていたので、その“怒り”をぶつける思いで取り組んだ。本場のチェコのビールを味づくりのコンセプトにしたのも、そうした背景がある。実際、現地に一カ月以上滞在して、ビールづくりを徹底的に研究した。 ビールは一杯目だけで、二杯目からは焼酎、チューハイといった飲み方が一般的だ。だが本来は何杯も飽きずに飲むのがビールの楽しみ方だと思う。チェコでもそうして飲まれている。世界に通用するビールをつくったので、輸出を視野に入れている。もちろんチェコの人にも味わってもらいたい。 |
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