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日経グローカルシンポジウム「官業の民間開放が地域を変える!」
 日本経済新聞社・日経産業消費研究所は9月7日、東京・大手町の日経ホールで、日経グローカルシンポジウム「官業の民間開放が地域を変える」(内閣府、社団法人日本ニュービジネス協議会連合会後援)を開催した。このうち中田宏・横浜市長、太田房江・大阪府知事、宮内義彦・規制改革・民間開放推進会議議長の基調講演の要旨は以下のとおり。
基調講演1
 「民の力が存分に発揮される都市・横浜」
 中田 宏氏(横浜市長)
 横浜市長になって宣言したのが「民の力が存分に発揮できる都市」。市役所は民の力を信じて、民が活発に物事を展開できるフィールドを提供し、それをバックアップしていくことに徹するということだ。運営・展開の手段としては、まず情報公開を徹底した上で、政策、財政、新時代行政という3つの中期プランを策定し、具体的な作業を進めている。
 例えば、市立保育所は土地を貸し出し、建物を売却し、順次民営化を進めている。さらに、横浜市立大は独立行政法人化し、少子化で若者人口が減少する中、「大学が全てではない」という時代の流れも前提として、真剣に生き残りをかけて運営してもらっている。指定管理者の問題については、何かにつけてこの施設は例外だという声が多いので、原則、指定管理者を導入する方針を出し、外郭団体にもハッパをかけている。
 広告事業の意識改革を市役所全般で展開しており、パンフレットなどのスペースを提供することで、年間7000万円の広告収入が入ってくる。広告媒体としては、ネーミングライツ(命名権)を導入した日産スタジアムの効果が大きい。スタジアムの維持管理には年8億円かかり、そのうち5億円を市が補助していた。年間4億7000万円で日産自動車に命名権を売却したことにより、7万人収容の日本一の競技場に対して税金の補てんがなくなった。
基調講演2
 「大阪版PPP改革と地域主権の確立」
 太田 房江氏(大阪府知事)
 大阪はもともと「民のまち」であり、コミュニティも色濃く残っている。民のまち大阪が先頭に立ってこそ、官業の民間開放というものが役人的でなく自然発生的な動きとして実現できるのではないか。大阪版PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)とは、行政と民間が手を組み、あるいは競争して、良いライバル関係のもとにそれぞれが府民に最も必要とされるサービスを提供する、そんな自治体となっていこうということである。
 まず協働・タイアップとして、いわゆるアドプト(養子縁組の意味)事業では、道路や河川を地域のボランティアの方たちに単に維持するだけでなく"養子"としてもらい受けていただき、育ててもらっている。今では道路・河川あわせて4万2437人453団体の方に参加いただいている。府の健康科学センターとコンビニエンスストアとの健康にいいお弁当の共同開発は第3弾となり、2003年から60万食を売り上げている。企業には健康をキーワードとした新しいビジネス機会から利益を得てもらい、府は監修料として売上の一定割合を儲けさせてもらっている。
 民間開放としては、「総務サービスセンター」が全国から注目されている。職員は申請(発生源入力)とバックオフィス部門での認定を責任を持って行い、その間のITシステムやコールセンター(フロントオフィス部門)をIT企業グループに運用・管理してもらう。事務の集約化と民間委託により、本庁、出先機関、府立学校を含めて約400人の人員削減、約40億円の削減効果を生みだした。入札契約センターの場合は全面委託とはいかないが、ITの活用によりこれまでバラバラにやっていた入札事務を集約する。事業者は入札参加資格申請から入札、支払まですべて画面上ででき、すべて電子データでやりとりすることにより不正が入ることを防ぐ。効率化とともに適正化をこのシステムで達成する。
 指定管理者制度は最も注目されている制度であり、18年度当初までには66施設へこの制度を導入していく。市場化テストについては今年6月に府独自のガイドラインを作った。できるだけ実現可能性の高いものにするため、官民競争型のほかに提案アウトソーシング型も示し、民間から提案を公募する。官はコストを開示し、民間の方には「私たちにならこれぐらいのことができる」ということを提案していただく。
基調講演3
 「今、なぜ官業の民間開放か」
 宮内 義彦氏(規制改革・民間開放推進会議議長)
 日本経済には官という、民間セクターでない部分が行う経済活動が非常に大きな地位を占めている。郵政も官が行う経済活動の大きな固まりのひとつだ。官の主導する経済活動をこのまま放置しておいていいのかどうかは大きな課題だ。
 日本は多額の公共投資の結果、国レベルで700兆円以上の借金がある。その中で何をやったかと言えば、たくさんのハコモノをつくり、それを運営する団体が官にぶら下がっている。これを打ち破るために指定管理者制度を作った。
 規制改革会議で議論している中で、あきらかに国でなく民間に任せたらいいではないかというものがある。これを担当している省庁と個別に交渉するが、猛烈な抵抗に遭い、難攻不落と言える状況だ。そこで個別に議論するのではなく、全省庁、国のやっている事業を横串に見直す方法を考えた中で、でてきたのが市場化テストだ。市場化テストはすでに諸外国で行われており、実績もある。そして、日本のように官製市場が大きな場合は、より大きな効果が期待できる。
 市場化テストで一番重要なのは、官の事業を民間と同じようなベースに乗せて入札することだ。官、独立行政法人などが行っている事業をそっくり民間と競わせることで、官のやっている全ての仕事を効率のいい方に任せていく。そのためには横串をさせるだけの強い法律を作る必要がある。現在、市場化テスト法推進室ができて、法律の立案にはいっている。この法律が成立すれば、官業の民間開放は画期的な形で進むだろう。民間の参加、地方での積極的な推進が規制改革会議の動きと一体化することで、本当の意味の日本経済の活性化ができるものと信じている。
パネル討論
 「自治体業務の民間開放をどう進める」
 出席者(写真、左から)
 志太  勤 氏(日本ニュービジネス協議会連合会会長)
 金田 孝之氏(横浜市副市長)
 坂田 道夫氏(東京都足立区区民部長)
 植村 敏明氏(アクティオ専務取締役)
 鎌形 太郎氏(三菱総合研究所地域経営研究センター長)
 この討論では規制改革・民間開放推進会議委員も務める志太氏、官業見直しを積極的に進める横浜市の金田氏、自治体でいち早く市場化テスト導入に取り組む足立区の坂田氏、全国の多くの自治体で指定管理者受託の実績があるアクティオの植村氏、パブリックビジネス研究会を立ち上げ指定管理者制度の課題克服への提言などを行っている三菱総合研究所の鎌形氏を招き、自治体業務の民間開放をどう進めるのかの具体策を話し合った。 (司会は日経グローカル編集長 石塚慎司)

【問題意識】
 志太 日本は今、幕末、第二次大戦後に続く三度目の大変革の時を迎えた。国も地方も巨額の借金を抱えた日本を再建するには小さな政府を実現していくしかない。 私が委員を務める規制改革・民間開放推進会議では継続してこの課題に取り組んできたが、官の壁はまだ非常に厚い。 その点、国の省庁より横浜市など地方の方がはるかに進んでいる。
 金田 官業の見直しを論じるときの問題意識は3点。 第1に保育、病院、交通など自治体がその地域で供給者として大きな比重を占めている分野で官が撤退した場合、全体としての供給をどうするか。 第2に自治体がサービス主体になっているときに生じる消費者保護の問題。 第3に公務員の雇用問題であり、官が撤退すれば、その仕事に携わっていた人をどこに振り向けていくのか。その具体的なプロセスを考えておく必要がある。
 坂田 足立区は「官業の民間開放」に25年前から取り組んできた。成果は着実に出ている。 区の職員数はピーク時の1982年に実質6000人だったが、今年度4000人を切った。今後5、6年から10年以内にもう1000人減りピーク時の半分になる。 逆に官業開放で区内の民間雇用も増えた。住区センター(公民館)を25年前から住民の自主管理で運営していて、そこでの雇用が800人。 学校・保育園の給食の民間委託で約1000人。一番大きいのは介護保険で、公務員のヘルパーがやっていたサービスを独自の判断で全面民営化し、現在は約4300人に拡大しているなどだ。
 植村 アクティオは指定管理者制度に積極的に取り組んできた企業だ。 従来から公共施設運営の受託に積極的に取り組んできたが、施設そのものを首長に代わり請け負うという今回の制度ができることを見越し、 03年9月の改正自治法施行の段階で既に専任チームを立ち上げて、自治体から指定をいただこうと頑張ってきた。 ただ、この仕事に携わってみると実に大変で、自治体側も、民間側も共に新しい制度改革の中で産みの苦しみを味わっていると思う。
 鎌形 指定管理者制度は制度ができた03年当時はやや注目度が低かったが、大きなインパクトを持つ。 同じ公共施設の民営化ではPFI(民間資金による社会資本整備)があるが、これは建設から運営管理までと事業規模が大きく、参加する事業者も限られる。 これに対して指定管理者制度は1つ1つの事業は小さいが、既存公共施設すべてに適用されるもので、波及効果は非常に大きい。 その中で三菱総研でも昨年5月にパブリックビジネス研究会を立ち上げて研究してきた。

【指定管理者制度の課題】
 鎌形 指定管理者制度は運用について自治体に任されている部分が非常に多い。よく言えば地方分権だが、悪く言えば対応がまちまちだ。 最大のネックは従来は直営あるいは外郭団体に管理委託をしている職員をどうするか。その課題があるので公募して民間に任せることが少なくなっている。 一方、民間サイドにも、公共施設の運営とサービスの提供には公的責任があり、民間の事業と基本的に違うという理解が十分ではない。 この問題に関して三菱総研の研究会では6月に提言を行ったが、ポイントは3つ。第1に公平な競争条件による公募選定。 第2に公共サービスを民間に任せるのだから公と民間との役割分担、リスク分担をきちんとする。 第3に運営開始後のトラブルなどに対応する官民のパートナーシップだ。今回は外郭団体の問題などでできなかったが、次回は公募するという自治体も非常に多い。 2年後、3年後、かなりの数に広がっていくだろうと思う。その意味でも、民間企業の方々には、ぜひ成功事例をたくさんつくっていただきたい。 そうすると公募していない自治体に「なぜうちはやらないのだ」という突き上げなどが当然出てくる。
 植村 優良な民間企業が指定管理者に指定されないことがある。まず自治体が行う公募条件の中で、民間のよい団体が選ばれにくい条件が加味されていることがある。 「地域内団体」という限定つきの公募もある。民間にとっていちばん辛いのは、心の中では当選させる団体を限りなく秘めているのだが、表面上はオープンにしている場合だ。 自治体が職員の雇用問題などもあり「今回は外郭団体をとりあえず選定しておこう」といった動きは、ある程度やむを得ないのかなとは思うが、 再選定まで次の数年の猶予の中でそうした問題をどう収束させるのか、まさに選定した翌日から考えていかないと、結果的にますます苦しい中でこの制度を導入をしないといけないことになることを指摘しておきたい。
 金田 横浜市ではさまざまな経緯から公募できないものを除き原則、例外を作らず公募にしている。ただしこの点は庁内で激論があった。 一番議論したのは美術館を巡ってだ。「美術館も原則公募で」という意見に対して、私自身は無理ではないかという議論をした。 例えば美術館の企画物は長い場合には5年間ぐらいかけて仕込む。そうすると、仮にどこかの民間団体に決まっても、渡す時期はかなり余裕を持っておかなければいけないし、相手方にも準備期間を設けなければならない。 選定も非常に難しい。おカネの話は分かりやすいが、よい企画、よい内容というのは実は第三者に対して非常に証明が難しい。 それをどうやって選定していくかの議論が難しかった。
 志太 ニュービジネス協議会ではメンバーがいくつかの自治体に赴き、その自治体の事業を点検し官でやるべきか民でやるべきかの「仕分け作業」に取り組んでいるが、 既に民間に移ったという表示はあるが、実際にはその先は外郭団体といったケースもある。 また、植村氏が指摘した点では、企業にとっては公募条件がどうしようもないという感想を持った。問題があれば、規制改革会議にもぜひ上げていただきたい。

【市場化テストの展望】
 坂田 市場化テストは小さな政府の議論とつながる。小さな政府をもっと圧縮して「極小の政府」を考えた場合、何が残るか。 戸籍と税金、後は高齢社会だから国民健康保険と年金ぐらいか。このあたりが最後まで残るなら、思い切ってそれ自体を市場化テストの対象にしてしまえば他の分野は急速に進むだろうという発想で、 足立区は今回、内閣府の方へ市場化テストを行うための規制緩和の提案を6つほど出した。 戸籍業務、地方税の徴収などのほか、区民事務所と出先で行っている業務を全部外へ出す。今171人、17カ所でやっているが、これを所長と地域関係の担当者を除き外へ出そうという内容だ。 基調講演で大阪府の太田知事が、大阪府では市場化テストを競争型と提案型に分けていることを紹介していたが、足立区の場合は協働型を考えている。 競争型については当然、官と民が競争するのは素晴らしいことだし、国の法律もそういう方向で断固やってもらいたいと思う。 しかし実際に自治体レベルではなかなか難しい。日本は官と民が本格的に戦うことはない。それがひどい場合は癒着だが、よい場合は協働となる。
 鎌形 市場化テストの大きなターゲットはまず国の業務。指定管理者制度については改正自治法で3年以内にやらなくてはいけないということで自治体が一生懸命やったが、国の公共施設も博物館、美術館、官舎などいっぱいある。 それらは指定管理者制度の枠外なので残っている。一方、自治体が市場化テストを使っていく意義は坂田氏がお話になったように、 先進的な自治体にとって、まだまだやりたくてもいろいろな規制の中でできないものがたくさんある。それをできるようにする意義は非常にあると思う。
 志太 指定管理者の議論でも指摘されたのと同様、民間が落札しても、その事業者がもしアウトになったらどうするのかを官の方々も非常に不安に思っていると思う。 アウトになったら再び官がやらなければいけないということでは100%合理化にはならない。 で日本ニュービジネス協議会連合会では「代行保証」という仕組みを研究している。例えば給食サービスにはこの制度があり、どこかで事故が起きると他の業者がサッと行く全国ネットワークができている。 こうした仕組みで不安をなくさないと民間に100%ずばりと仕事が出てこないと思う。
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