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日経地域情報化大賞2007
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【「日経地域情報化大賞」討論会】
 「全国の地域情報化推進者が意見交換――研究討論会開催」

地域情報化研究討論会の模様=11月2日、新潟市
 全国でIT(情報技術)を活用した地域活性化に取り組む担当者らが2日、新潟市内で「地域情報化研究討論会」を開催した。これは、この日行われた「日経地域情報化大賞2007」(日本経済新聞社など主催)の参加者が、互いに意見や情報を交換する場として企画されたもの。

具体的な事例を検証しながら、活発に議論を繰り広げた。司会は日本経済新聞社の坪田知己日経メディアラボ所長。

 この討論会は事例発表とフリーディスカッションで構成され、事例発表は「東峰そんみん塾」の澁谷博昭塾頭、特定非営利活動法人(NPO法人)桐生地域情報ネットワークの塩崎泰雄理事長、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)の庄司昌彦助教が行った。

「東峰そんみん塾」を紹介する澁谷博昭塾頭
 澁谷氏が塾頭を務める「東峰そんみん塾」は、福岡県朝倉郡東峰村にある。陶器の小石原焼で知られる人口2800人ほどの小さな村だ。この村が昨年「東峰村元気プロジェクト」として、他県における地域情報化の成功事例を学び、実践するという試みを行った。その手本となったひとつが富山県の「インターネット市民塾」である。これはインターネットを使い、誰でも手軽に自分の知識を他の人に伝える講座を開設できる、現代版寺子屋とも言うべき取り組みだ。その事例を参考に今年4月、東峰そんみん塾を設立した。多くの住民が積極的に参加し、「甘酒のつくり方」「山登りの魅力」といった講座をネット上に公開している。今月は、パソコン教室なども開く予定という。

 続いて発表した塩崎氏は、パソコン通信の時代から20年以上も桐生地域の情報化に貢献してきた、地域情報化のパイオニア的存在。これまで数々のプロジェクトを立ち上げてきたが、今年7月に新たに「FM桐生」というコミュニティーFMを開設した。桐生の有力企業9社が出資しており、市民に情報発信の「場」を提供するというコンセプトのもと、コンテンツの90%以上を地域住民が自ら作成している。収入を確保するため、多様なCMのプランを用意するなどまだ苦労は多いというが、塩崎氏は「面白いことになってきているという充実感はある」と手ごたえを語った。

「FM桐生」について説明する桐生地域情報ネットワークの塩崎泰雄理事長
 そして庄司氏は、この1年ほどで全国に広がった地域SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)について、いくつかの先進事例を紹介した。兵庫県でインフォミーム社が運営する「ひょこむ」は、コミュニティーとして盛り上がりを見せるだけでなく、システムをオープンソース化して他の地域に提供するという取り組みを始めている。これにより、今後地域SNS同士の連携が実現する可能性があるという。また千葉県・西千葉地区でNPO法人トライワープが運営する「あみっぴぃ」は、この地域にキャンパスのある千葉大学の学生と、地元商店街の緊密なコラボレーションが特色。学生と商店街というリアルな関係を、SNSを通じて発展させ、新たな価値を生み出そうとするもので、これまでにイベントの開催や公式グッズの販売などが実現している。

 庄司氏の分析によれば、地域SNSの成功事例に共通した傾向として(1)活発なオフライン(ネット上だけでなく、実際に顔を合わせる)活動(2)人間関係の橋渡しを実践(3)地域メディア化または既存地域メディアとの連携、などが挙げられるという。

 後半のフリーディスカッションでは多様な問題提起がなされた。地域情報化大賞の審査委員も務める兵庫県立大学大学院の辻正次教授は、「長く地域情報化を見てきたが、最近、高齢者が疎外されている傾向はないだろうか」と疑問を投げかけた。これに対し、地域情報化大賞で日本経済新聞賞を受賞した、岩手県川井村で高齢者安否確認システムの運営を手がけている岩手県立大学の小川晃子准教授は「自分たちのシステムはNTTの固定電話を使った情報サービス『Lモード』を採用しているが、それを使って高齢者が“メル友”ならぬ“エル友”を作っている。アクティブに情報活用する高齢者も少なくないのでは」と答えた。

 富山インターネット市民塾推進協議会の柵富雄事務局長も「70代の女性が講座を開くこともあるし、そこから発展して起業した高齢者もいる。確かにPCの操作などは高齢者にはきついかもしれないが、困難を乗り越えるということもひとつのモチベーションになるのかもしれない」と述べた。さらに、やはり審査委員である麗澤大学の林英輔情報システムセンター長は「自分も年齢的にはシニアだが、年寄りだという気持ちは全くない。それが高齢者にとって重要なことだと思う」と力強く語った。

地域SNSについて解説する庄司昌彦GLOCOM助教
 一方で庄司氏は「むしろ、こうした取り組みに参加する20代が少ないほうが問題」とコメントした。これについて実際に地域情報化に取り組んでいる20代の出席者からは「僕たちの世代は『間違いを指摘される』ことを恐れ、何もできなくなってしまう傾向がある。ちょっとした示唆などがあれば、それをきっかけにして乗ってくる若者は多いはず」と分析した。

 佐賀県で地域発の起業スクール「鳳雛塾」を立ち上げた、慶應大学環境情報学部の飯盛義徳専任講師は「ある地域の取り組みが、その知的資産をオープンにすることによって他の地域に広がると、またそれが自分の地域にフィードバックしてくる。それは嬉しいことだし、そうして日本が元気になれば、と思う。だが現実には、ひとつの地域で成功したことが、他の地域でも成功するとは限らない。どこに注意するべきか、考える必要がある」と述べ、地域情報化の広がりに期待を示しながらも、現実には乗り越えるべき困難があることを指摘した。

 議論は深夜まで及び、多様な立場の参加者から報告や質問が相次いだ。司会の坪田日経メディアラボ所長は「こうした場で議論することで何かヒントを得たり、ここでの出会いがきっかけになって、新たな価値が生まれることを期待したい」と述べて議論を締めくくった。

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