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日経地域情報化大賞2007
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【基調講演】
 「災害時にITの果たすべき役割」
講師: 泉田 裕彦 新潟県知事  

 泉田裕彦・新潟県知事は2日午後、「地域情報化フォーラム inにいがた」(日本経済新聞社など主催)の冒頭に「災害時にIT(情報技術)の果たすべき役割」と題した基調講演を行った。2004年と07年に新潟県を襲った2つの大地震を振り返り、震災時の情報インフラの問題点を指摘。ITのメリットとデメリットを勘案したうえで「災害時にはITに過剰に頼るのではなく組み合わせが重要だ」と語った。

 講演ではまず、情報の途絶と孤立の問題を取り上げた。3年前の新潟中越地震では「連絡が取れない情報の空白地ほど危ない」状態だったという。山が動いてケーブルが切れ携帯の回線が使えなくなった山古志村の村長と連絡が取れたのは次の日の朝5時ほどだった。衛星携帯電話を配備していた集落もあったが、孤立した地域は高齢化が進んでおり、うまく使われなかったという。そうした経験から、「普段使っていないものを緊急時だけ使えるかという話になる。普段使っているものの安全性を高めないと、通信途絶と孤立の問題には対応できない」と指摘した。

 今年7月に起きた中越沖地震では通信環境は確保されていたが、知事自身、「あわててお互いに電話を掛け合って電話中になってしまい、連絡がなかなかとれない」という経験をしたという。「通信環境があれば連絡が通じるというのは幻想」と言い切り、特に災害が発生した直後に正確な情報を入手し対策を判断することの難しさを語った。

 災害時におけるメディアの役割についても事例を挙げて紹介した。電気が通じないと「ITはただの箱」になってしまうが、離れたところと情報をやり取りするには便利で外部からの支援を受けるうえで活用できたという。中越沖地震では、必要な援助物資などを県のホームページに掲示してボランティアに伝え混乱を回避したほか、災害場所の文字情報をITを利用して地図情報に落とすことで視覚的に理解しやすくし、円滑に情報共有を進めた。

 コミュニティーFMの「FMピッカラ」は被災地に必要な情報をきめ細やかに届ける役割を担った。しかし、放送の弱点は「一瞬にして消えてしまう」ことだという。聴いているときは情報がくるが、いつでもタイムリーな情報が得られるわけではない。最新の情報を早く大勢に伝える放送、必要な情報をいつでも確実に伝える掲示板や紙などメディアごとに特性があり、さらに時間軸によってもメディアに求められる役割は変わるという。こうしたことから、「放送メディアがいいのかフェース・トゥー・フェースがいいのか避難所の掲示板がいいのかインターネットがいいのか。それぞれ役割があり、それを使い分けるのが重要だ」と強調した。

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 基調講演に続いて、受賞者らによるトークショーが行われ、プロジェクトが成功したポイントや苦労した点などを紹介した。日経MJ賞を受賞したブログポータルサイト「村ぶろ」を運営する和歌山県北山村の奥田貢村長は、自らモバイルパソコンを持ち歩きブログをこまめに更新し、村長ブログは1日平均6万ページビューを記録しているという。住民はわずか500人という村ながら、「村ぶろ」には6000人が「バーチャル村民」として会員登録し、活発なやりとりを行っている。「過疎地にある村が活性化するための大きな社会実験だ」と64歳の奥田村長は若々しく語った。
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