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日経地域情報化大賞2005
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【基調講演】
 テーマ: 「京都式行政経営と電子府庁の推進」
講師: 山田 啓二 京都府知事  

講演する山田啓二京都府知事=9日、京都市
 記念シンポジウムでは、京都府の山田啓二知事が「京都式行政経営と電子府庁の推進」と題して基調講演を行った。「府民本位の行政運営」を訴え、ネットワーク作りや情報共有などについて取り組みを紹介した。

 山田知事は府民価値の創造を目指す行政が必要とし、「府民の絆を強くする」「府民とともに行政を創る」「行政のパラダイムの変換」などをキーワードに、府内にブロードバンド環境を整えた「デジタル疏水」事業や、府庁のデータを府民に開放する「統計情報データウェアハウス」を紹介した。

 また、現在は「情報公開」の段階を終え、今後は行政が一方通行で情報を提供するのではなく府民と双方向で対話することによって、よりよい行政サービスを提供することが必要との考えを示した。そのために、縦割りでデータを管理するのではなくデータを軸としたシステム設計を進め、誰でもアクセスできるように専用ツールの開発はせず、ブラウザーでの閲覧方式を導入するとの方針を述べた。

 主な発言内容は以下のとおり

 今は、電子政府、電子府庁の流れが進んでいる。これは時代の流れで止めることができないものだと思う。これは行政を根本的に変える力を持っている。ただ、この力はよい方向に行くのか、悪い方向に行くのか、まさしく考え方次第だ。悪い方向へ行けば管理型社会へ進んでいって、非常に厳しい社会になる可能性を含んでいると思う。

 しかし、情報化を進めることで府民本位型の行政を進めていくこともできる。どうすればできるのか、「府民の絆を強くする」「府民とともに行政を創る」「行政のパラダイムの変換」の3つ柱を中心に京都府では考えている。

 まず、「府民の絆を強くする」ということ。府民のネットワークを作る事を提案している。京都では「デジタル疏水ネットワーク」というインフラを作ってきた。これは2.4ギガの本流を作り、2ギガの支流を作るというものだ。これでブロードバンド環境を整え京都全域をカバーしている。構造上、府内をループ状に覆っているのでどこで障害が起こっても利用を妨げることはない。またLANファイバーを使っていくので、とても安価だ。

 このネットワークを一般開放しているので、府民と府民を結ぶ大きなインフラができた。これを利用してホームページや掲示板、電子メールを使い人と人とのつながりを強固にする取り組みが行われている。たとえば、子育ての問題があったとき、子育てのネットワーク組織がホームページを利用して絆を深めることで、子育て支援を行うといったことができる。

 他の事例としては、若者の就職を支援するジョブカフェも京都市にはあり、2000人くらいの若者が利用している。そこで、新しく福知山市にジョブカフェの支所を作った。ジョブカフェに来る若者はみな、いい子達ではあるが、考えていることを伝える表現力に乏しい。ジョブカフェでは専門家からコミュニケーションの訓練を受けることでこれを改善しようとしている。しかし、福知山市まで専門家を派遣するというわけにはいかない。そこで、デジタル疏水を使ってネットを通じ、福知山市にいても京都市と同じ専門家の講義を受講できるようにする。空間的な距離を越えたつながりを生むことができると思っている。

 第二に「府民とともに行政を創る」ことだ。これは、まず府民へ府庁のデータを開放することだ。府民が行政に参画するとき必要なのは情報だろう。どうやってこの情報を府民が把握するかが大切で、それを実現するのが電子府庁だ。それで行政の透明化が図れる。

 これまでは、部署によってばらばらに情報を持っていた。これは縦割りを基本としたデータの管理だったからだ。そこで情報をひとつにまとめた集中サーバーを立ち上げる。この情報を府民に開放することで行政の持っている情報と府民の持っている情報がほとんど同じになる。行政の持っている情報が府民に対してオープンになることが、府民の府政参画の大きな鍵になるだろう。

 また、なにか計画がある場合、それを元に予算を作る。その予算を元にさまざまなチェックもする。このプランニングの過程を公開し府民の意見を集約していく。目標達成度の公開なども行い、すべての段階において、府民が参画することで行政プロセスが透明化できる。

 最後に「行政のパラダイムの変換」だ。

 電子府庁を進めることによって、行政自体が変わる節目になってきた。どのように変わるのかというと、情報の公開から共有へ進むというパラダイムの転換が起こるだろう。

 これまで情報公開によって、地方は充実してきた。いまでも国と地方の大きな違いはこの公開に力を入れていることだ。それによって住民との距離をなくすことができた。

 この第2ステップとして、ただ公開するだけでなく、共有することで大きなパラダイムがあるのではないか。よく考えれば、公開というのは一方通行だった。公開だけでは透明といっても、ただの受身となる。これがインターネットを中心としたイインタラクティブな環境を持つことで双方向となり、パラダイムが起こる。

 これまで陳情することが行政の基本だったが、いつも川上と川下という関係になっていた。これからは対等な立場になり、住民が行政に参画できるものが立ち上がると、行政のパラダイムが起こるのではと考えている。

 そして住民の価値を高めるようになると思う。それを高められないものはどれだけ効率化できるかを徹底したい。端的なのは職員の給与計算などだ。こういったものは電子府庁化でスリム化できるだろう。これはまさに電子府庁かする過程で効率化すべき。ある程度定型化して、手間を省くほうが効率化が進む。毎年何十億円というコストの削減を生むだろう。

 現在は電子申請システムや予算編成支援システムなど9つのシステムを同時に開発している。順に開発したのでは非効率だと思っている。

3つの原則に沿って一度にやろうとして開発・運営をこれから3年くらいで一度に開発したい。

 ひとつは、縦割り方式でそれぞれがデータを持つのではなく、データを中心にデータベースを構築し、データの重複をなくす。そうすると効率的なシステムになる。またWeb方式の導入を試みている。これでいつでもどこでもデータにアクセスすることができる。セキュリティー面での危険は生まれるが、住民に対する効率は飛躍的に上がる。この方式は賭けだが果敢に挑みたいと思う。

 残された課題はある。まず、職員の意識改革。そしてデジタルデバイドの問題だ。高齢者や障害者への対策を考える必要がある。

 こういった課題を乗り越えながら、管理型社会ではなく「人間中心」の電子府庁作りを行い、京都は徹底した情報の共有を図ることで府民本位の電子府庁を築きたい。
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