「実年齢より10歳若い条件で求人情報を探してください。58歳の男性が35歳を採用上限にしていた会社に就職した例もあるんです」
2月中旬、京都市内のホテルで開かれた再就職支援セミナー。20―50代後半の男女260人が集まる。年齢制限など無視していいとの指摘に、参加者たちが一斉に息をのんだ。
声の主は埼玉県立職業能力開発センターの主任職業訓練指導員、小島貴子さん(45)だ。高卒で都市銀行に入行し、結婚退職した後、1991年、32歳で職業訓練指導員になった。以来、急速に悪化する労働市場と増える一方の再就職希望者の間に立ち続ける。特にこの3年は中高年の指導に力を尽くし、再就職を成功させた中高年は1000人以上にのぼる。熱気あふれる指導ぶりから、再就職のカリスマとの呼び声も高い。
小島さんの再就職指導は5、6人で、互いの就業経験を話し合う徹底的な“個人史の棚卸し”から始まる。「自分自身をきちんと分かっていないことは再就職の最大の障害」だからだ。
参加者は、職場で実績を上げたのになぜ自分がこんな目に遭うのかと自信と不満の間で揺れ動くか、早く次の仕事を見つけたいと不安に駆られているかのどちらかが多い。しかし他人の視線に自分の能力や仕事をさらしていくうちに、目に輝きが戻り始める。自分の過去をきちんと評価できるようになり、参加者は「マイナスイメージだった職探しが楽しいと思える」まで元気を取り戻す。小島さんがやりがいを感じるのはそんな時だ。
一方、「たかだか数百万円の借金で人生を狂わせてはいけない」と、多重債務者の相談・救済に立ち向かうのは、かつて消費者金融大手に勤め、現在は行政書士の資格を持ち法務事務所で働いている小田優子さん(29)だ。2002年、インターネット上に「優子の借金・債務整理相談室」と題したホームページを立ち上げた。月40―50の相談メールが届く。
相談者に対する姿勢は「貸し手と借り手は対等の立場で契約したのだから、貸し手だけが悪いのではない」と厳しい。だが、滞納の結果の一家離散や自殺例も目の当たりにしてきただけに、「何とか立ち直って」との思いが人一倍強く、活動の原動力になっている。
相談者の多くは30代までの女性。直接会ってみると、流行ブランドで着飾った相手の雰囲気と借金漬けという現実がとても結びつかない。「無人の現金自動預け払い機(ATM)の普及で誰にも会わず借りられるため、借金への抵抗感が薄れている」と思う。
一定の返済能力がある人には、貸し手との交渉で返済額を減らし収入の範囲内で返済していく特定調停の手続きを紹介する。「3―5年かけ借金を返すことで苦労が身に染み、再び借金苦に陥ることが減るのでは」との願いもこもっている。
相手の状況に応じた変幻自在の口調、厳しい現状認識、相談者の力になろうという熱意――。人生立て直しという大事にあたって彼女たちが信頼されるのは、硬軟を自然に使い分け、相手のやる気を奮い立たせる能力が自然に備わっているからだろう。
[2004年2月20日/日本経済新聞 夕刊]