日本経済新聞社は金融機関の経営データを解析するツールを開発した。見やすさと操作性を追求した「NIKKEI Financial RAV(Risk Analysis Visualization)」を金融エグゼクティブ向けのデジタル媒体、NIKKEI Financialのサイトで公開する。さまざまな指標を使い、地銀の実力とリスクを分析した。

取締役会の多様化が進む
業種別の貸出依存度
地銀の貸出額を業種別に分類し、どの業種との関係が深いかを示す。地銀の平均値に比べて貸出依存度が高い業種を強調表示する。日経NEEDSのデータを利用。
実績ランキング
主要な財務指標の順位と変遷を表す。上位10位までは赤字、下位10位までは青字で示す。日経NEEDSのデータを利用。

実力とリスク 一目で

RAVはNIKKEI Financialの会員なら誰でも自由に使うことができる。サイトのトップに誘導窓口を作るほか、関連記事も展開する。(1)実力診断(2)リスク傾向分析(3)実績ランキングの3つの観点から地銀の経営を見える化する。

(1)実力診断はオリジナルスコアで金融機関の実力を定量的にはかる。地銀のポテンシャルを40以上の指標の組み合わせから導く。「財務力」「収益力」「成長性」「経営の独自性」「ESG」「地域経済の状況」「職場環境・処遇」の7項目と総合力をS~Eのランクと順位で表示する。B以上なら平均を上回る。

(2)リスク傾向分析は、「財務の毀損」「収益力の低下」「ESGの脆弱化」の3つのリスク傾向を示す。グリーンのゾーンはリスクテークが大きすぎたり小さすぎたりせずバランスがとれた状態を示す。金融機関のリスクアペタイト(傾向)を見える化する。

実力診断とリスク傾向分析のモデルはリスクアペタイト・フレームワークやグローバル金融規制に詳しいプロモントリー・フィナンシャル・ジャパンの協力で開発した。同社が指標を算出する。

(3)実績ランキングは金融機関の開示データをもとに地銀の現在地を示す。日本経済新聞社のデータサービス日経NEEDSと連携し26項目から気になる指標を選んでランキングを並べ替えることができる。表示される財務指標はNEEDSからまとめて取得することも可能だ。

実力診断

実力診断は銀行が開示する40以上の指標を組み合わせて実力を分析する。「財務力」「収益力」「成長性」「経営の独自性」「ESG」までの5項目をまとめて「総合力」を算出する。

外部環境の優位性を示す「地域経済の状況」と従業員の処遇を示す「職場環境・処遇」も掲載する。S~Eで表示される実力が「B」より上なら平均以上の実力がある。

リスク傾向分析

リスク傾向分析は「財務の毀損」「収益力の低下」「ESGの脆弱化」の3つの項目のリスク傾向がどれくらいあるかを示す。グリーンのゾーンはリスクテークが過大でも過小でもないバランスがとれた状態を表す。

「財務の毀損」は財務の安定を損なうリスクがどれくらいあるかを示す。資本効率を判断する材料になる。

「収益力の低下」は収益力や効率性が落ちるリスクがどの程度あるかを示す。「ESGの脆弱化」は地域や社会、ESGへの貢献が低下するリスクを示す。経営層や従業員が社会規範を逸脱して行動するミスコンダクト、システム障害の発生などで社会的評価を損なうリスクが高まる・・・