上場企業の2020年4~9月期決算では「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を手がける新興勢力が頭角を現した。時価総額1000億円以上の主要企業を対象に増収率ランキングを作成したところ、首位はAI inside(AIインサイド)だった。手書き文字を人工知能(AI)で読み取って電子化する主力サービスが伸びている。

ランキングは金融、決算期変更などを除く3月期決算の主要企業479社を集計した。東証マザーズ上場のAIインサイドは4~9月期の売上高が前年同期の3・2倍の19億円にのぼった。

増減率は前年同期比。日経NEEDS調べ。20年4〜9月期の決算を発表した企業(金融、決算期変更など除く)のうち時価総額が1000億円以上の企業が対象。短信ベース、13日時点

手書き書類などをAIで電子データにする同社の主力サービス「DX Suite」は9月末時点で1万2754契約と、半年で7倍近くに増えた。今年から本格導入した神戸製鋼所は、協力会社から受け取る作業証明書や社内アンケートの処理に活用。アンケート入力処理の所要時間が半分以下になったという。

コロナ禍でDXが脚光を浴びる一方、企業や自治体への営業活動が停滞した面もある。AIインサイドはコロナの影響について「プラスマイナスゼロ」としており、21年3月期の売上高予想を前期比2・8倍の44億円に上方修正した。

DX勢では、クラウド活用の経費精算システム「楽楽精算」を展開するラクスもランキング9位に入った。4~9月期の増収率は31%。テレワークの広がりが追い風となり、導入企業は6837社と半年で12%増えた。請求書や納品書などを電子データで発行する経理部門向け「楽楽明細」も契約が伸びた。

このほか、クラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」を手がける弁護士ドットコムが13位に入った。

3位のJTOWERは携帯電話キャリア各社の共用通信設備を運用しており、増収率は58%。これまで大型ビルの構内システムが中心だったが、次世代通信規格「5G」普及をにらんで下期から屋外にタワー型の設備を相次ぎ着工する。

食材宅配サービスのオイシックス・ラ・大地は46%増収で4位。コロナ下で会員数が増えたうえ、1人当たり購入額も押し上げられた。高島宏平社長は「コロナでゲタを履いている」としながらも21年3月期の売上高予想を前期比27%増の900億円に引き上げた。

一方、集計対象とした479社のうち、42社は減収率30%以上だった。同50%以上の9社をみると、インバウンド(訪日外国人)消失など観光需要の低迷が色濃い。

羽田空港ターミナルビルの家主である日本空港ビルデングは減収率が84%と主要企業で最も大きかった。空港利用者の激減で施設利用料の収入や免税店の売り上げが吹き飛んだ。

日本航空、ANAホールディングスも減収率が70%を超えた。帝国ホテルは客室稼働率が下がり、宴会需要も限られて減収率69%、土産菓子メーカーの寿スピリッツは同65%と低迷した。

鉄道会社では東海道新幹線が主力のJR東海は65%の減収。富士急行はレジャー施設「富士急ハイランド」、西武ホールディングスは子会社のプリンスホテルが不振で減収率がそれぞれ58%、47%に達した。

もっとも、新型コロナのワクチン開発への期待などから、インバウンド関連銘柄の一部は株価が回復基調にある。オリエンタルランドは上場来高値を更新した。日本空港ビルデング、帝国ホテルなどもコロナ前の水準を取り戻している。