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クルマ販売に見る経済対策 〜押し上げ効果の大きさは?

2008年9月のリーマン・ショックからほぼ1年。国内の生産活動は09年2月を底に緩やかに回復してきました。中心になっているのは自動車や電機などエコカー減税やエコポイントといった景気対策に後押しされた産業です。これらの経済政策の押し上げ効果はどの程度だったのでしょうか。NEEDSのデータを使って、乗用車の販売台数における効果の大きさを探ってみました。

販売台数が13カ月ぶりプラスへ

日本自動車販売協会連合会などがまとめた乗用車の新車登録台数(以下、販売台数とします)は、08年8月以降連続して前年を下回り、09年2月には前年比24%減にまで落ち込みました。

持ち直す乗用車販売

これに対し政府は環境対応車(=ハイブリッド車や低燃費車などのエコカー)の自動車重量税や自動車取得税を減免する「エコカー減税」と購入を促進する「エコカー補助金」を経済危機対策の目玉として打ち出しました(「参考」欄を参照)。

乗用車の販売台数はその後大きく持ち直します。エコカー減税・補助金導入後の4月以降、前年からの低下幅が縮小し始め、8月は前年比3.2%増と13カ月ぶりのプラスに転じました。9月も同4.2%増と順調に伸びています。

エコカー減税・補助金がハイブリッド車などの魅力を高め、販売増加につながったと思われます。

7〜9月期は11.3万台の押し上げ

NEEDS日本経済モデルの予測値を用いた推計式の詳細

では、景気対策は新車販売をどの程度押し上げたのでしょうか。乗用車の販売台数を所得、資産、自動車価格、ガソリン価格によって説明する推計式を作成してみました。政策導入前のこれらの変数の因果関係を示すこの推計式を使うと、エコカー減税などの政策が無かった場合の販売台数が試算できます。まだ実績値の公表のない7〜9月期の所得や資産などはNEEDS日本経済モデルの予測値を用いて推計式(下表)に代入すると、政策の押し上げがない場合の販売台数は7〜9月期で93.6万台と試算されます。

一方、同期の乗用車の販売実績は104.9万台と、試算値を11.3万台上回ります。この11.3万台はエコカー減税・補助金効果と言っていいでしょうか。今度は推計式を使って、別の角度から検証してみましょう。

自動車価格の6.5%値下げに相当

消費者はエコカー減税・補助金によって自動車購入時の費用を抑えることが出来ます。つまり、消費者にとっては価格の値下げと同じ効果があると考えられます。

政策の押し上げは?

先ほどの推計式で、自動車価格をどのくらい下げると足元の実績値である104.9万台の売り上げが導かれるか、試算してみると6.5%程度の値下げに相当することが分かりました。つまり、エコカー減税・補助金は、消費者にとって自動車の値段が平均6.5%値引きされたのと同じ効果をもたらしたと見ることができそうです。この「値下げ幅」は実際のエコカー減税や補助金と比べて妥当な大きさでしょうか。

車種によって減税額などはまちまちですが、例えば車両本体価格が200万円の乗用車を購入する場合、減税額は自動車重量税(マイナス42,600円)と自動車取得税(マイナス68,000円)で合計約11万円です(車両重量1.5t未満、75%減税対象車と仮定)。補助金10万円をプラスすると消費者への実質的な値下げ額は合わせて21万円。実に車両価格の約10%に相当します。

日本自動車工業会によると、エコカー減税を利用した販売台数は足元で全体の約60〜65%を占めています。65%の消費者が10%の割引価格で購入したと考えると、先ほどの平均6.5%の値下げという試算結果はエコカー減税・補助金効果の大きさと考えて良さそうです。つまり7〜9月期の11.3万台の販売台数押し上げ効果は、取得コストの面からも裏付けられたといえます。

補助金制度は09年度末に終了する予定です。減税制度も3年間の実施を当初うたっていましたが、民主党政権は現時点でその継続について明確にしていません。産業としてのすそ野も広く、他業種への波及も大きい自動車産業への後押しを今後どうするのか。経済全体への影響も含めて今後の政策対応が注目されます。

(日本経済新聞社NEEDS事業本部 塚本千津子)