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第3回・競合分析、競合分析でシェア逆転の背景を探る

日経POSデータデータ分析ツール「Planogrammer」を使った分析シリーズの第3回目のテーマは、「競合分析」です。POSデータを使って分析することで、激しいシェア争いを繰り広げる競合会社の間で、勝負の分かれ目がどこにあったのかが浮き彫りになります。

取り上げるのは、昨年話題になったビール市場のシェア逆転劇です。サントリーがサッポロのシェアを上回り業界3位となった背景について、検証してみたいと思います。ビールなどアルコール類について、シェア動向を語る際に新聞などで通常使われるデータは出荷実績(課税ベース)ですが、今回の分析では、日経POSデータとPlanogrammerを活用して、より流通の現場に近い販売金額のデータによってシェア逆転の背景をひもといてみたいと思います。

2008年度のメーカー各社のビールカテゴリーの売り上げ実績

右記の表が、日経POSデータから、2008年度のメーカー各社のビールカテゴリー(発泡酒・第3のビール含む)全体の売り上げ実績とそこから算出されるシェアをまとめたものです。

サントリーのシェアは12.3%とサッポロの12.0%を0.3ポイント上回っており、シェアを逆転、キリン、アサヒに次いで、同社にとって初めての3位獲得となったわけです。ここで用いられる売上高は、POS分析でよく用いられる来店客1000人当たり販売金額(PI金額)で、各月のPI金額を合計したものです。以降の分析では、この年間累積のPI金額を用います。

価格政策が奏功(時系列分析)

2008年度のメーカー各社のビールカテゴリーシェア実績

それではシェアの逆転の背景に何があったかを、日経POSデータを使って時系列分析によって、さらに検証してみたいと思います。

月次ベースでシェアの推移を確認してみると、サッポロが値上げを実施した4月に初めてシェアが逆転、サントリーが1ポイント近くサッポロを上回りました。ビール類が最も売れる7、8月には2ポイント以上の差をつけ、この期間の“貯金”が2008年年間の販売シェア逆転を決定付けたと思われます。

サントリーが値上げをした9月以降の各月のシェアはサントリーとサッポロの2勝2敗で五分五分です。同社の取った夏場にかけての価格政策が2008年のシェア逆転劇に大きく貢献したことがわかります。

ヒット商品がシェア上昇に貢献(サブカテゴリー分析)

これまでビールカテゴリー(発泡酒・第3のビール含む)全体を見てきましたが、今度はサブカテゴリー別に分解して価格以外のシェア逆転の要因を分析してみたいと思います。

ビール、プレミアムビール、2008年度メーカー別売り上げ実績

ビール

ビールにおいては、キリンがシェアを落とす中、サントリーが前年比11.2%増とプレミアムモルツの好調(同16.9%増)を支えに一番売り上げ(PI金額)を伸ばしており、シェア上昇の大きな要因になっていると考えられます。


発泡酒、2008年度メーカー別売り上げ実績

発泡酒

発泡酒は市場全体で売り上げ(各社のPI金額の合計)が前年比で5%減少するなか、メーカー別ではキリンのみが売り上げ(PI金額)を伸ばしています。サントリーはダウントレンドの中、前年比6.9%減とサッポロ(同35.8%減)と比べると健闘しており、シェア逆転の一つの要因になっていることがわかります。


第3のビール、2008年度メーカー別売り上げ実績

第3のビール

第3のビールについては市場全体で売り上げが前年比14.8%増と大きく伸びています。キリンが少しシェアを落とした中、前年比で約3割売り上げを伸ばしたアサヒ、サントリーと売り上げを減らしたサッポロで大きく明暗が分かれています。サントリーは金麦のヒットもあり前年比27.2%増と大きく売り上げ(PI金額)を伸ばしており、これが対サッポロのシェア逆転の大きな要因と考えられます。

2008年のサントリーによるシェア逆転の背景にある重要なポイントは、(1)価格の据え置きによるビール・発泡酒の健闘、(2)プレミアムモルツや金麦といったヒット商品の存在、の2つの要因の相乗効果によると考えられます。08年9月のサントリーの値上げ以降のサントリー、サッポロのシェアを比べると、両者五分五分で推移している状況です。09年は価格要素を除いた本当の実力が試されると思われます。

今回は、日経POSデータを基にPlanogrammerを使い、逆転劇で話題になった業界に注目し、メーカー別のシェアにフォーカスして分析をしました。メーカーの競合戦略を考える上でシェア分析は大切な指標となるため、実効的な企業戦略立案にぜひ活用されてはいかがでしょうか。

(マーチャンダイジング・オン代表取締役専務 中田秀幸)