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株式相場低迷でも底堅いのは 〜低流動性銘柄に注目

流動性の低い銘柄が底堅い——。昨年来、株式相場は軟調な展開が続いていますが、過去に大きく下げた局面について株価騰落率を調べてみたところ、売買があまり活発でない流動性の低い銘柄が比較的下げ幅が小さいことがわかりました。NEEDSの「ティックデータ」や「財務データ」などを用い、企業業績の回復力などの条件も加え、低迷相場でも比較的下げにくい銘柄を探ってみました。

日経平均株価はここにきて大きく下げ、2007年7月の高値から3割以上低い水準で推移

日経平均株価はここにきて大きく下げ、昨年7月の高値(1万8261円98銭)から3割以上低い水準で推移していますが、この夏までには大きな下落局面は3回ありました。

信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題による世界的な金融不安から、月間下落率が11.2%まで拡大した今年1月、年初来安値である1万1787円51銭まで下げた3月、日経平均が54年ぶりの12日続落を記録する起点となった日を含む6月です。

1、3、6の各月において、比較可能な上場企業2882社(金融などを除く)の株価騰落率を算出、大きい順に並び替え、上位から10%ごとに10のグループに分け、上から順に「グループ1」「グループ2」と名づけ、最下位を「グループ10」としました。ここで売買の活発さを示す流動性をグループ別に調べてみたところ、株価上昇率が大きい上位グループほど流動性が低くなる傾向がみられました。

気配スプレッド存在率と株価騰落率

流動性の指標は、時々刻々と変わるリアルタイムのデータ「ティックデータ」から算出される「気配スプレッド存在率」を用いました。これは取引時間(東証ならば前・後場合わせて270分)のうち、実際に売り買い両方の指し値が存在した比率で、売り・買いいずれの取引も可能だった時間の割合です。流動性を算出する指標としては、日次ベースの時価総額や売買回転率などがありますが、リアルタイムベースのこの指標はより精緻な流動性指標と言えます。

3つの月のいずれをとっても、株価騰落率上位(グループ1—5)の気配スプレッド存在率は80%以下でした。一方、騰落率下位(グループ6—10)の同指標は80%を上回りました。通常、株式市場では「相場下落局面では流動性の高い銘柄を選ぶべきだ」と言われるが、その常識に反する結果となっています。

この結果をもとにすると、相場が軟調なときは流動性の低い銘柄に資金をシフトする手法が有効と言えそうです。もっとも、景気が後退局面に入って経営破綻する上場企業も出始めていることもあり、業績の底堅さや財務体質の良さにも目配りする必要もあります。

そこで、以下の条件で「低迷相場で下げにくい銘柄」を選んでみました。1、3、6の各月の下落局面において、気配スプレッド存在率が80%以下で、株価騰落率上位(グループ1—5)に入っている銘柄を選定したところ、199銘柄が残りました。

さらに(1)自己資本比率50%以上(2)前期実績、今期予想ともに増収(3)経常利益の増加率が前期実績でプラス、今期予想で5%以上(4)予想配当利回りが東証一部平均の1.8%以上——という条件で絞ると、7銘柄が選択されました(評価時点は8月8日)。最後の条件を加えたのは、株価が下がっても、配当である程度補えることが考えられるためです。

7銘柄の上場市場を見ると、東証1部に上場する銘柄は1つもなく、東証2部が2銘柄、大証2部が3銘柄、大証ヘラクレスとジャスダックに上場するのがそれぞれ1銘柄でした(重複上場銘柄については売買高の大きさなどから日経デジタルメディアの定める「主市場」を採用)。これらの銘柄は、日経平均や東証株価指数(TOPIX)など機関投資家が運用目標の目安とする株価指数の動きに影響されにくく、相場下落局面でつれ安しにくいという側面もあります。

7銘柄の株価騰落率と気配スプレッド存在率

実際、昨年末から9月26日までの株価騰落率をみても、1銘柄を除き同期間の日経平均の騰落率を上回りました。また、その7銘柄の騰落率平均はマイナス10%と、 同期間の日経平均の騰落率(マイナス22%)を12ポイント上回りました。配当利回りの高さを加味すれば、その差はさらに広がるとみられます。

もっとも、流動性の低さは市場に流通している株式数が少ないため、好きなときに必要な株数を売り買いできないリスクを常に抱えます。また、相場上昇局面に入ると、逆に上がりにくい理由に転じてしまう可能性もあります。

ただ、景気の動向や企業業績を考慮すると、株式相場はしばらく不透明な局面が続きそうで、下げ相場に強い銘柄を選ぶ際に、流動性の低さに着目するのも一つの考え方と言えるのかもしれません。

(日本経済新聞社NEEDSカンパニー 渡部肇)