競争激化するビール類市場

カバー率で定番商品を占う

ビール、発泡酒、第三のビールからなるビール類市場、その売り上げ構成はここ3年間で大きく変わりました。各社は相次いで新商品を投入していますが、乱立気味で消えていく商品のほうが圧倒的に多くなっています。このたびリニューアル版が登場したPOSデータ分析ツール「NEEDS-SCAN/TREND」の新機能も使いつつ、最近の新商品について分析してみました。


3年間で大きく変化したビール類の売り上げ

まず、ビール、発泡酒、第三のビールの売り上げ推移を見てみましょう。ほぼ3年前の2004年2月にサッポロビールは「ドラフトワン」の全国発売に踏みきり、爆発的なヒット商品となりました。このときビール、発泡酒に次ぐ第三のビール市場が誕生したといえます。その後サントリーも追随し「スーパーブルー」を発売しました。05年になるとキリンビールが「のどごし」、アサヒビールが「新生」を発売し第三のビール市場が一気に拡大しました。

それと同期して縮小したのはビール市場でなく発泡酒市場でした。発泡酒はその安さでビールから消費者を奪いましたが、今度は第三のビールにシェアを奪われています。04年、05年はビール類市場にとって激動の時期だったといえます。

ビール類市場はメーカー間の争いが激しく、出荷数量では昨年1位のアサヒビールが1億8814万ケース、2位のキリンビールは1億8721万4000ケースとその差はわずか92万6000ケースでした。今年に入りさらに競争が激しくなり、1−3月の第一四半期はかろうじてキリンが逆転しましたが、その差は45万2000ケースの僅差でした。


ビールの新商品が売り上げ増に貢献

激しいシェア争いもあり、各社それぞれの思惑のもと新商品が投入されています。各ブランドが今後どのような展開を見せるのかを探ってみましょう。

ビールではキリンビールが17年ぶりに新ブランド「キリン・ザ・ゴールド」を3月20日に発売しました。初回出荷数量160万ケースと当初予想の100万ケースを大幅に上回り、3月中に200万ケースを突破、年間目標800万ケースの2割を10日で出荷しています。その後は落ち着いてきたものの現在でも同社の「ラガー」並みの売り上げがあります。キリンにとって「一番絞り」、「ラガー」とともに三本柱となりそうです。

サッポロビールは4月4日に「ヱビス ザ・ホップ」を発売しました。ブランド全体の売り上げを押し上げ、4月23−29日の週には来店客千人当たり販売金額2134円で「キリン・ザ・ゴールド」(同2282円)に次いで5位に浮上しています。


カバー率でわかる定着度合い

新商品は、定番として定着するかどうかが重要です。それを占う際にわかりやすい指標としてカバー率(取り扱い店舗率)があります。新しいブランドが登場すると既存ブランドとの競合が起きます。これは消費者の嗜好によるところもありますが、メーカーにとってはコンビニやスーパーなどの店舗内での棚をめぐる争いのほうが切実です。棚のスペースは限られているので新商品が登場すると既存商品のどれかを棚からはずす必要があるためです。その場合、売り上げの少ないものが除外されるケースが多いようです。

その他にも各店舗の思惑により、同じメーカーの商品やコンセプトの似た商品を置くのを避けたりしています。カバー率が安定していれば定番商品として定着していると見てよく、カバー率が落ちてくれば定番商品になれず、そのうち市場から消えていく可能性が高いといえます。

それでは、日経POSデータでスーパーにおけるビール類で一番販売額の大きい350ML×6缶パックのカバー率を調べ、ここ1年に発売になった主なブランドが定番商品として定着していくかどうかを占ってみましょう。

「キリン・ザ・ゴールド」は、カバー率は92%で非常に安定感があります。同社ビールの「一番搾り」(同90%前後)、「ラガー」(同75%前後)と並び定番商品として定着してきたといえます。「ヱビス ザ・ホップ」は発売された週の79.9%から右肩下がりでまだ下げ止まり感はありません。特別なときに飲むプレミアムビールという位置づけなので多少カバー率が低下しても構わないかもしれませんが、そろそろ安定しないと市場に定着しない可能性もないとは言い切れません。

新商品が登場すると、まず売り上げに目が行きます。もちろんそのチェックも大事ですが、カバー率をみるとそのブランドの将来の姿を想像することが出来ます。

(日本経済新聞デジタルメディアNEEDSカンパニー 山崎兼広)