第6回 ポストサンデー
大種牡馬サンデーサイレンスがこの世を去ってから、間もなく2年になる。今年生まれた世代には、サンデーの子はもういないが、コース上では遺児たちが相変わらず猛威を振るっている。
サンデーサイレンスのレースを見たことはないが、種牡馬になりたての時期に目にする機会があった。ヒョロヒョロした印象で、パワーを要求される米国のダート路線で二冠を制した馬には見えなかった。今思えば、この辺に、芝中心の日本の競馬で活躍する素地があったのかもしれない。
産駒を自分で扱って感じたことは、とにかく競走馬に仕上がる確率が高い。2歳のデビュー前には、育成場で調教されるのだが、育成場の方から「早く(美浦に)入きゅうさせてくれ」と言われることが多かった。調教の間に自分で身体をつくってしまうのである。
サンデー自身は多少、気難しい面があり、三冠最後のベルモントステークスを落とした(2着)一因となったが、産駒も直線で内に内に寄っていくクセがある。ただ、それとて小さな欠点と言うべきで、性別を問わずエネルギッシュな性格の持ち主が多かった。
自分で扱った中から、バブルガムフェローやスティンガー、最近のダンスインザムードといった素晴らしい馬が出た。彼らは「レースに行ってすごい」タイプだった。1頭で調教していても、勢い良く走り出すようなことはないが、実戦では激しい闘志を見せる。全体的に見ても1200メートルから3200メートル、ダートもこなす。まさに万能だ。
これほどの大種牡馬が出ると、その後の馬産は非常に難しくなる。すでにサンデーの子で種牡馬入りした馬は50頭以上。繁殖牝馬も数多く、牧場に戻っている。近親交配が強くなり過ぎるので、サンデーの産駒同士を交配することは当然できない。スティンガーはキングマンボ(キングカメハメハの父)と交配するために米国に渡った。ダンスインザムードも、引退後の交配相手にどの種牡馬を選ぶかが難しい。
12、13の両日行われた日本競走馬協会主催の「セレクトセール」では、ダンスインザダーク産駒にゼロ歳馬史上最高額の4億9000万円の値がつくなど高い評価を受けた。確かに、社台グループが支えていることもあって、結果を出していると思うが、近親交配をいかに避けるかという問題は今後もついて回る。
そう考えると、やはり「ポストサンデー」は、サンデーとは別な系統から現れるだろう。それを探し、育てるのが、今後の生産界と現役の競走馬を扱う我々に共通の課題である。国内の限られた血統だけでなく、視野を広げて様々なタイプの馬を見ることが求められている。海外、特に芝中心の欧州にも、目を向けていく必要があると思う。
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藤沢 和雄(ふじさわ・かずお) 1951年9月、北海道生まれ。52歳。88年3月開業。93年に初の全国最多勝。95年から9年連続全国最多勝を継続中。98年にタイキシャトルで仏GT制覇。シンボリクリスエスは一昨年から2年連続で年度代表馬に選出された。[2004年07月27日/日本経済新聞 朝刊]
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