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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (12/8)JCウィークの決算
 ダートは外国馬初優勝。芝は遠征馬9頭が掲示板も確保できず――。11月29日のジャパンCダート、30日のジャパンCは、何とも対照的な結果に終わった。ダートは過去3回で馬券の圏内に入った外国遠征馬が、第一回3着のロードスターリングのみと全く不振だったが、今回は米国で重賞入着級の5歳せん馬フリートストリートダンサーが、日本のダート路線ナンバーワンのアドマイヤドンに競り勝った。芝は逃げたタップダンスシチーの独り舞台。5着まで日本馬が占め、外国馬最先着はプレレートが111で最も低かったタイガーテイルだった。前年はファルブラヴとサラファンが2着までを占め、外国馬が5年ぶりに気を吐いたが、今回はこれまた対照的な結果だった。来年は史上初めて、芝とダートの両G1を同日実施する歴史的なJCデイとなるが、位置づけの難しさは相変わらずだ。

 ダートの位置づけの難しさは、当初からあまり変わっていない。何しろブリーダーズカップ(BC)から4―5週という短い間隔。真のトップクラスはこちらに全力投球してくる。しかも、ダートの遠征馬は当然ながら米国が中心。ラシックス(利尿剤)やビュート(鎮痛剤)が認められず、スパイク鉄も使えない日本には、おいそれとは来てくれない。ただ近年、米国の主流路線で南米出身馬の活躍が目立っていて、活躍馬の多くはBCの種牡馬登録も産駒登録もないため、BC出走となるとクラシックで80万ドル(約8700万円)という途方もない追加登録料が必要となる。今年は、夏以降の活躍で最強と目されていたキャンディライドが出走を見送ったため、高額の追加登録料の是非が米国内で議論を呼んだほどだ。JRAにすれば、こうした南米産BC回避組が、勧誘のターゲットになるはずだが、今年に関しては空振り。一昨年、G1級のリドパレスが惨敗したことも、米国の関係者にはトラウマになったかも知れない。

 ところが、今年の勝ち馬はもともとクレーミング(転売目的のレース)ホース。昨年、4万ドルで現在の馬主に転売された後、今年に入って重賞でも入着を重ねるようになった。そういうクラスの馬が日本のダート最強馬を競り負かした事実は重い。今回の場合、季節外れの豪雨でダートのクッション砂が流れ出し、むき出しの路盤の上を走る状態に近かったため、スパイク鉄を使えないことがハンディにならなかったとも考えられる。とは言え、元クレーミングホースが、1着賞金1億3200万円というビッグマネーを手にしたとなれば、海外の関係者がこのレースを見る目も変わってくるだろう。

 JRAが発表した今回の暫定レートは、フリートストリートダンサーが117、アドマイヤドンが116だが、3着ハギノハイグレイドは5馬身離されたため、レースレート(4着までの平均)は113.5にとどまった。国際G1昇格には、パフォーマンスレート(年末時点での上位4頭の平均レート)115が必要だが、このままでは道は遠い。それにしても、日本のダート馬の実力は、まだ十分に試されてはいない。砂の質や薬物、スパイクといった問題は、日本と海外の双方にとって、交流の障壁となる。日本馬が海外のダートで目を引く戦績を残した例は、一昨年のドバイW杯2着のトゥザヴィクトリーのみという状況。徐々に層が厚くなっていることは確かだが、まだ「世界に追いついた」とは思わない方が良さそうである。

 芝は特殊な馬場状態が災いして、先行した馬が流れ込んだだけ。レースとしては見どころに乏しい内容だった。暫定レートはタップダンスシチーが125で、2着ザッツザプレンティが114。着差9馬身の場合、レーティングは18前後の差がつくが、今回の場合、勝ち馬を130前後にしないと、レースレートが落ち、115を切ってしまう。JRAのハンディキャッパーとしては避けたい事態であり、苦肉の決断となったが、正式なレートが決まるのは、香港で今週開かれる国際会議。各国のハンディキャッパーがどう評価するか…。

 それにしても、今回際立ったのは外国馬の不振である。9頭が枕を並べて討ち死にと言って良い。年に何度もない特殊な馬場状態が影響したことは間違いないが、本来なら欧州の馬はこんな馬場に慣れているはず。あくまでも推測だが、以下のようなことが考えられる。すでにジャパンC(芝)は23回目。海外の関係者も、どんな馬なら勝負になるか、見極めがつくようになった。日本の堅い馬場と速い展開に向くタイプを選んで連れてくる。ところが、当日は極悪馬場で見事に当ては外れた――。実際、牡牝の欧州勢エース格となるアンジュガブリエル、イズリントンは、ともに欧州域外でのG1勝ち星があり、関係者からは「良馬場で戦いたい」という声が聞こえていた。BCターフ勝ち馬としてはコタシャーン以来、10年ぶりに参戦したジョハーも切れ味が身上だ。ジョハーの場合、フレグモーネで中間、馬場入りを2日休んだ影響もあったようだが…。

 単純に「何が見たい」という考え方で名前を挙げれば、今年の欧州馬はハイシャパラル、ダラカニ、スラマニだったと思う。だが、そろってジャパンCを前にターフを去ってしまった。「4歳以上の馬は走るべきではない」と考えているフシさえあるアガ・カーン殿下の持ち馬が活躍すると、まず日本に来てくれるのは期待薄なのだが、4歳まで現役期間を引っ張ったハイシャパラルも来なかったのは、JRAにすれば誤算だったか。現役を続けたのは、同馬を所有するクールモアグループに、サドラーズウェルズ産駒の種牡馬がだぶついているためと思われる。"親"も健在なのに、すでにモンジュー、ガリレオがスタッドインしている。何か付加価値をつけないと、種牡馬として評価されない。ともあれ、BCターフで同着優勝という結果を出すと手じまい。日本の土を踏むことはなかった。

 今後のジャパンCはどんな位置づけとなるか。カギを握るのは香港国際競走とのかね合いだろう。昨年のジャパンC優勝馬ファルブラヴは今年、欧州最強馬に育ったが、「距離不向き」と見てジャパンCをソデにして香港に回った。社台グループが権利の一部を取得したのに、である。今年は有馬記念は12月28日に設定されたため、ジャパンCと香港との間隔は2週しかないが、サラファン、デノンなどが香港に回る。それほど、香港との競争は厳しいのだ。もちろん、競馬のステイタスから見て、ジャパンCを待たずに引退するような馬が香港に行くとは考えにくい。ただ、日本も香港も、収益重視の現実的な馬主が勧誘のターゲットであることは同じである。

 その意味で、JRAが昨秋以来、相次いで導入した新機軸は一定の成果をあげたと言える。昨秋にはレーティング115以上の馬に対して、輸送費と滞在費の一部を肩代わりする措置を決定。次いで今年には、宝塚記念とジャパンCに報奨金制度を創設。当該年度の海外主要レースで1、2着に入った馬が参戦した場合、最大1億3000万円を支給することにした。その結果、3月の高松宮記念にはディスタービングザピース、エコーエディの米国馬2頭が参戦。エリザベス女王杯、マイルCSにも2頭ずつが参戦と、過去に外国馬がほとんど来なかった関西ブロックのG1にも遠征馬が相次いだ。特にエリザベス女王杯のタイガーテイルは3着に入り、ジャパンCへの予備登録があったことを生かして日本に居残った。6着とは言っても、出走奨励金は2000万円で、2戦で4500万円の荒稼ぎである。

 黙っていてもスターが集まってくることが望めない以上、手を尽くすしかない。一連の取り組みは従来の発想から踏み出したものだが、情報提供やホスピタリティという点では、香港やドバイW杯といった後発の国際競走に学ぶべき点は、まだあるのではないか。



 
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