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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (9/29)つぎはぎルールをシンプルに……
 今年の北海道シリーズも1週を残すだけだが、衆目の一致するところ、最大の収穫はレディブロンドとナチュラルナインの2頭だろう。前者は5歳のデビュー戦で1000万条件特別(函館・TVh賞)を勝つ離れ業を演じ、ここから5連勝。連闘で10月5日のG1、スプリンターズSに向かうことになりそうだ。後者の方は、中央のG1を走るかどうか、不透明だ。仮にあっても、曲折を伴うだろう。北海道・道営所属のまま、500万→1000万(支笏湖特別)→オープン(札幌日経オープン)と3連勝。あとの2戦は芝2600メートルで、菊花賞の伏兵と目された。だが、3連勝した時点で、菊花賞挑戦には中央移籍しか道はなく、移籍が消えた時点で挑戦は幻となった。

 少し補足すると、ナチュラルナインの馬主(木村龍彦氏)は、中央での馬主登録がなく、移籍は馬主登録のある人への転売を意味する。だが、これだけの実績馬となれば、手放したくないと思うのが普通だ。売る気になっても、値段が折り合うかどうかは疑わしい。結局、同馬はかつて所属した船橋の川島正行きゅう舎に戻ることになった。都合4回目の転きゅうとなる。菊花賞は無理として、年内に中央のG1に参戦する道がないわけではない。同馬は認定競走を勝っているため、アルゼンチン共和国杯(G2)や福島記念、京阪杯(ともにG3)の出走資格がある。ここで結果を出せば、ジャパンCや有馬記念で、中央の登録馬との賞金順争いに持ち込める。ただ、ジャパンCは日本馬の枠が少なく、有馬記念はファン投票がある。現実的には、年内に芝のG1競走を走ることはなさそうだ。

 中央の方を見れば、今年の菊花賞も例によってサンデーサイレンス産駒のオンパレード。芝2600メートルで2勝したトウカイテイオー産駒と来れば、注目を集めただろう。「1回札幌、1000万条件、芝2600メートル」といえば、一昨年はマンハッタンカフェ、昨年はファインモーションが勝った出世レースである。ところが、菊花賞を目指す道営所属馬にとっての"一次予選"は、旭川の「王冠賞」(ダート1600メートル)。支笏湖特別の5日後に行われた。芝3000メートルのG1への前哨戦が、砂の深いダートの1600メートルとは、いかにもズレた印象を禁じ得ない。少なくとも、中央1000万条件の芝2600メートルで勝った馬より、優先順位が高いというのは、理解不能な設定というべきである。

 1995年の中央・地方の交流拡大の際には、G1ステップへの参戦のルートが確立される一方、特別指定交流競走(特指)も新設されたが、両者の関係が十分に整理されていなかった。ナチュラルナインは現時点で特指を3勝しているが、G1に参戦する上では、この3勝の価値が全くない。1999年のレジェンドハンター(笠松)も今回と近い状況だった。地元のステップ競走から、当時のデイリー杯3歳Sに進んで勝ち、朝日杯3歳S(現朝日杯FS)2着。だが、翌春のクラシックでは2歳時の実績はご破算。結局、体調が整わずに地元の"一次予選"を回避し、トライアルにも進めなかった。

 JRAは一昨年から、重賞やオープン特別で、出走優先順位決定の際に「過去1年間の収得賞金」を加味する新ルールを導入した。単純に収得賞金順で決まる3歳戦も、デビューからの期間を考えれば同じ発想である。今回挙げた2頭の収得賞金は、レジェンドハンターが2歳暮れの時点で2950万円、ナチュラルナインは現在、2200万円である。同じだけ稼いだ中央馬が除外される可能性は、皆無に等しい。だが、地方所属というだけで出馬投票もできないのだ。

 解決策は単純だ。「中央競馬で収得賞金のある地方馬」については、JRA所属馬と同列に扱い、収得賞金順に並べるだけでよい。例えば、500万条件、1000万条件と2勝した馬は1000万円。これだと菊花賞には出走できない可能性が高い(昨年の場合、1400万円=中央3勝馬が8分の3の抽選に)。G1のトライアルについても、「中央で収得賞金のある地方馬」に、地元予選組とは別に出走枠を設定する。出走意思のある関係者は、可能性の高い方を選択する。所属のいかんを問わず、中央競馬で実績を残した人馬を、それ相応に遇さないのは、競馬主催者としての自己否定に等しい行為だ。なお、地方所属馬のJRAでの勝ち星は、1997年以降10→11→19→16→14→10と推移してきた。中央馬のほとんどいない札幌の2歳戦なども含まれていてなお、この程度の数字である。仮に中央で勝った地方馬の自由な参戦を認めても、混乱を招くとは考えられない。

 騎手に関しても、こうした考えは応用できる。ダブル免許を巡る議論では、中央と地方の間で「どちらが身柄を確保するか」といった人権以前のやり取りがかわされた。もっと話を単純にできないのか。例えば、「所属のいかんを問わず、中央競馬である年に20勝した騎手は、翌年1年間は自由に騎乗できる」としてはどうか?

 28日の神戸新聞杯では、二冠馬ネオユニヴァースに福永祐一が騎乗した。主戦のミルコ・デムーロが3カ月の短期免許期間を終えているためである。JRAは7月に特例措置として、「同じ馬でG1を2勝した外国人騎手は、免許期間満了後もその年のG1に限って騎乗できる」としたため、菊花賞やジャパンCではデムーロが騎乗できる。杓子(しゃくし)定規でない対応をしたことは評価できるが、いかにもその場限りの手法である。昨年、安藤勝己騎手を巡って、JRA騎手免許試験のハードルを下げるために設定した「20勝×2年」の規定にも言えることだが、あからさまに属人的なルールの乱発は少々見苦しい。前述のルールを導入すれば、外国人ではデムーロのほか、オリヴィエ・ペリエ、ケント・デザーモなどは、自由に参戦できるだろう。地方では今年、すでに20勝を超えた小牧太(兵庫)と吉田稔(名古屋)のほか、石崎隆之(船橋)、岩田康誠(兵庫)にもチャンスが出てくる。彼らが大レースなど「ここぞ」という局面で参戦すれば、競馬が盛り上がることは間違いない。20勝に届けば翌年も1年免許が与えられ、届かなければ一から再スタート。外国人騎手は従来の短期免許で、地方騎手は交流免許で、再度、20勝の大台を目指す。制度の大枠を動かす必要はない。

 これはプロゴルフのシード権制度に近く、日本のプロで日米両ツアーのシード権を保持していた選手もいる。この場合、出場試合を選ぶのは選手側だが、それと同じで「いつ、どこで乗るか」の調整は本人に委ねれば良い。例えば外国勢が1年中、日本に腰を据えるとは思えない。現在の15週が、5―6カ月に延びる程度だろう。実はペリエはある雑誌に「現役最後の年は、日本に腰を据えたい」と記している。中央競馬が世界の名手にかくも愛されたのは素晴らしいことで、その思いに応える度量があっても良い。地方騎手に関しては、中央の騎手会への拠出金など、調整を要する問題はあるが、すべては金銭で片の付く話で、大きな障害ではない。短期免許制度がある以上、3カ月が良くて1年は困るという理屈は立つまい。

 11月2日の天皇賞を巡っては、外国産馬の出走枠争いが関心を集めることになろう。現状では、エイシンプレストン、ファインモーション、アグネスデジタルの3頭のうち、最大2頭が「除外」の憂き目にあう可能性がある。この3頭中2頭をはじかれる事態になれば、世界の笑い者である(「内国産馬の出馬投票が15頭以下なら、出走枠を拡大する」という、申し訳のような付則があるが…)。

 ルールを極力シンプルにして、実績より属性が優先するような反スポーツ的な手法を捨てる。これだけで競馬社会の風通しは良くなるだろう。「行政官の競馬」には無理な注文かも知れないが……。



 
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