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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (4/28)一服した除外ラッシュ――投票する側にも問題あり?
 東京競馬場が新装オープンした4月26日は、入場者、売り上げともに前年を大きく上回った。今年に入ってから関東エリアは、ずっと中山開催が続き、冬場を過ぎて成績の落ち込みが目立っていた。日経平均株価がバブル後最安値を更新するなど、一般経済情勢が悪化する中で、JRAも反転のきっかけを探すのは難しく、数少ない好材料である東京のリニューアル効果への期待は小さくない。

 中山の成績悪化は、半年を超える連続開催でファンに飽きが来ていたことや、天候不順などの事情もあるが、見逃せないのは出走頭数の減少である。例年、10月に行われていた福島開催を、4月5―21日に前倒しした影響が表れた。中山の開催ごとの出走頭数は、1回開催が1484頭、2回開催が1467頭で、一回開催について言えば、除外頭数が延べ1438頭と、出走頭数に迫る数だった。三回開催に入ると、中京開催の影響で1403頭と微減。ところが、福島開催2日目の4月6日は151頭、3日目の12日は147頭。1日平均180頭前後で推移していたラッシュ時と比べ、30頭以上も少なくなった。

 特に目についたのはダートの中距離戦の少頭数である。福島開催での番組編成は、未勝利が1000メートル4つに対し1700メートルが16、500万条件は1000メートル2に対し、1700メートル19と、中距離戦ばかりを組む形になった。このため、中山のダート1800メートルの出走馬が激減。4月13日には未勝利戦が出馬投票わずか2頭で不成立。競走取りやめという、平地競走では7年ぶりの珍事となった。いささかみっともない展開に映るのだが、福島が1700メートル偏重の編成になったのは、馬主への(過剰な?)サービスという側面もある。今年から1700メートルは、出走可能頭数が従来より1頭増えて14頭となった。1000メートルは12頭のまま。ここ数年、除外問題の解消を強く唱えて来た馬主団体の意向に配慮して、1頭でも多く出走できる1700メートルを多めに編成したのである。

 だが、出馬投票する側の意識がついて行かなかったようだ。競走取りやめとなった13日の開いた1レースの枠は、久々の分割競走で埋められた。分割されたのは500万条件のダート1200メートル。41頭が出馬投票し、分割しながら9頭が積み残された。20日の番組も急きょ変更されたが、これはダート1800メートルの未勝利戦を1200メートルに振り替えるものだった。これらの事実から浮かび上がるのは、除外問題を馬主やきゅう舎関係者がフレームアップしているという疑念だ。

 終了したばかりの中山開催を見ると、ダート1800メートルの3歳未勝利戦はすべて12頭以内で、8頭立ても4競走を数えた。1頭かわせば出走奨励金(306000円)にありつけるレースがあるのに、なぜ除外覚悟で短距離戦に出馬投票するのか? 「距離適性を重視した結果だ」という答えが返ってきそうだが、この時期の未勝利戦のことである。能力の高い馬なら、その程度の適性の差は地力でカバーできそうなもの。少しでもチャンスがある"すき間"を狙わず、人が右に動くと、文字通り「右に倣え」する。こうした行動パターンは、美浦の関係者に特に目立つ。目端の利く栗東の調教師なら、少頭数で相手関係の楽そうな番組をすかさず狙っていくタイプが多い。

 芝でもダートでも、能力の足りない馬が短距離戦に集まって来る現象は、奇観と言うべきである。豪州には、公式競馬への出走資格をかけた「バリアトライアル」と呼ばれる能力検定がある。芝1000メートルで、勝たなければ資格が得られない。生産頭数が世界一で、しかも低価格という豪州ならではだが、日本の未勝利の短距離戦には、何やら賞金つきの能力検定という趣がある。ただ、「負ければお払い箱」という厳しさはなく、9月の中山、阪神まであと5カ月は未勝利戦が編成され、しかも対戦相手は徐々に弱くなっていく。

 今回、JRAが福島開催を4月に移行したのは、関東エリアの出馬ラッシュの緩和と、未勝利戦の編成のあり方の改革という二つの狙いがある。関東で上半期に除外が多い理由は、福島と新潟が厳寒期で開催できず、東京か中山の1カ所に馬が集中することにある。しかも、今年は昨年末の開催終了が12月22日と早く、2週開いた1月第1週には、出走態勢の馬がそろっていた。こうなると、除外で優先出走権を持った馬が次々に先に送られ、「除外が除外を生む」という状況が生まれてくる。だが、投票する側もその辺は織り込み済み。在籍馬と競走数の関係が最もアンバランスな古馬500万条件の短距離戦でも、大半は3―4回の除外で1回は出走できる。すき間があっても狙わないのだから、"確信犯"と言えなくもない。

 逆に例年、関東エリアで出走頭数が少ないのは、10月の東京開催だった。積み残された未勝利馬が福島に出走するために馬房を埋めた分、上級馬が外部育成牧場に出て、東京の番組が空洞化するという流れだった。今年の変更は、秋の東京に起こる現象が春に移ったと言える。JRAでは、新馬・未勝利戦をあくまでも、その年のクラシックにつながるレースと位置づけ、クラシック後は極力、戦線を縮小する方針を採っている。今年の番組改編で、20年近く続いた秋の福島の未勝利戦は姿を消した。だが、いまだに仕上がらず、入きゅうもできない未出走馬が多いことを、現状は示唆している。

 一方で、もう一つの除外多発地帯の古馬500万条件は、番組の絶対数の少なさもあって、未勝利ほど状況は変わっていない。年間、1400近い未勝利戦に加え、地方での条件交流が約100、さらに昨年からは地方で勝ち星をあげた馬の"出戻り"もあり、いくらレースを消化しても、在きゅう馬の数はほとんど減らないのである。玉石混交のこの条件だが、未勝利と違って、高齢馬でも馬主が預託料を負担し続ける限り、きゅう舎に居続ける。この条件でこそ、近走着順など、実績重視の出走馬決定方法を考えるべきではないか。

 今後の除外問題の行方だが、JRAは10月から未勝利と500万条件について、新たな出走馬決定方式を導入する。当該条件で前回、3着以内に入った馬を優先する一方、それ以外に関しては出走間隔の長い馬から順に選定する。また、未勝利戦は新馬競走の一戦限定化に伴い、初出走馬、新馬に出走しただけの馬を優先する。もともとJRAは「除外された馬が、走れていないわけではない」との立場。今回の策も、出走スケジュールを立てやすくして、きゅう舎サイドが仕上げやすい状況をつくることに重点を置いたもので、これも馬主、きゅう舎関係者がどう動くかで効果も違ってくる。

 除外問題は、番組と在籍馬の数的なミスマッチが要因で起こる。正面から取り組もうとすれば、クラスと賞金の関係性の見直しや、登録料(ステークス)のあり方に踏み込む必要がでてくる。今後の在籍馬数の動向にも、考慮が必要だろう。おそらく数年後には、生産頭数の減少が表面化し、JRAでも現在のような出馬ラッシュが緩和されるという見通しがあるからだ。目先の除外頭数を離れて、登録料制度、賞金体系、条件別の競走数の配置、さらに言えばどの程度の数のレースをファンに提供すべきかという根本的な問題について、文字通り骨太の議論に取り組むタイミングではないか。



 
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