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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (9/9)有馬記念日程問題が決着――JBCの行方は不透明
 来年の有馬記念はどうやら、暮れも押し詰まった12月28日に行われることになりそうだ。全国公営競馬主催者協議会(全主協)と地方競馬全国協会(NAR)は3日、来年末の開催日程を従来より繰り延べたいとしたJRAの希望を受け入れると発表した。年末年始の開催日程を巡っては、1991年に中央、地方双方の協議で、12月28日から1月4日まではJRAが開催を組まないとの申し合わせが成立。これを受け、農水省競馬監督課長と旧自治省地方債課長の間で覚書が締結され、農水省畜産局長も同趣旨の通達が出している。

 だが、昨年11月にJRAの運営審議会で、一部委員から「有馬記念の開催時期が早すぎる」との意見が出され、これを受けた形でJRAも通達を見直すよう、農水省への働きかけを始めた。通達といっても実態は中央と地方の協定で、見直しには地方側の同意が前提となる。年末年始はゴールデンウィークと並ぶ地方のかき入れ時。東京大賞典(大井)を初め、各主催者が大レースを組んでいる。東京大賞典の場合も、昨年は有馬記念の6日後の29日(土曜)開催。過去の例から、有馬記念との間隔が長い年ほど、売り上げが伸びていた。28日に有馬記念が組まれると、「成功の方程式」は崩れる。こうした事情から、“反対給付”なしに翻意は難しい。そこで、JRAは今年のJBC(ジャパンブリーディングファームズカップ)当日(11月4日=月曜)に福島開催を移設し、JRA施設でJBCを発売する構想を打ち出したが、これが思わぬ波紋を呼んだ。

 この経緯については5月の当コラムで詳細に触れたが、JRA側の提起はJBCの実行委員会に持ち込まれたため、実行委員会内部はJRA提案に肯定的な岩手を中心とする主催者と、東京大賞典を抱え、強硬に反対した大井などが対立する事態となった。もともとJBC実行委員会に加わっているのは7主催者に過ぎず、ほとんどの主催者に影響が及ぶ「28日問題」について、最終決断を下す権限はなかった。手続き上のボタンの掛け違いが、事態を紛糾させた一因だったが、結局、後に問題は全主協で再協議。11月4日の福島開催という“ウルトラC”は時間切れで不可能となった。一方で、強硬姿勢を見せていた大井も、松崎利光・事業推進部長がこの問題を扱う「開催執務委員長会議」の議長を務めていた事情もあり、「多くのファンのニーズに応える」として、28日開催に同意した。これにより、通達を見直す環境が整い、農水省も作業に動き出した。

“12月28日の有馬記念”をどう見るか

 のっけから脱力してしまうが、JRAは「売り上げ的なメリットははじき出せない」(総合企画部)と言い切る。では、利点は何なのか。除外問題緩和には多少役立つかも知れない。今年の有馬記念から来年の中山金杯までは2週間あるが、こうした場合、年明けの開催で出馬=除外ラッシュが起こるのが通例だ。間が詰まった方が多少はマシだろう。ただ、除外問題はすぐれて構造問題。5―6年に1度の有馬記念繰り下げは、本質的な解決策では全くない。

 28日開催にこだわる人の立場は、いささか情緒的なものだ。「有馬記念は紅白歌合戦に匹敵する暮れの国民的行事。極力、押し詰まった時期の方がムードが出る」。今日ではダービーや有馬記念は俳句の季語になっている。「売り上げうんぬんとは別に、季節感を大事にすべし」という主張もわからないではない。だが、毎年28日に開催できるわけではない。「本当は30日でも31日でも構わない」と言いたいのだろうが、金融機関や警察当局が動いてくれなければ、それは絵に描いたモチ。21日か28日かはせいぜい気分の問題。少なくとも筆者は、競馬の本質にかかわる問題とは考えていない。

 むしろ、「年に1週間くらい、競馬を忘れる時期があっても」と考える人だって、いてもおかしくはない。少なくともJRAのファンはそのくらい多様になった(伝統的な馬券中毒患者ばかりでなくなった)と、筆者は思っている。この不況下でも、年末に海外旅行する人は今も多く、中には28日の有馬記念を泣く泣く(?)ソデにする人もいるだろう。顧客が多様になればなるほど、対応も一様では済まなくなる。施行者にとって、それは喜ぶべきことだが…。

 一方で、過去、長いインターバルの間に、地方競馬を“発見”したファンも少なくないはずだが、そういう機会は確実に狭まる。今後、地方の主催者は住み分けに頼らず、さらなる自助努力を求められる。確かに厳しい状況だが、嘆くだけのような主催者には、この問題がなくても、しょせん未来はない。地方側に同情はしないが、一方で28日の有馬記念にこだわる感性にも違和感を覚えるのだ。

相互発売拡大策の行方

 有馬記念の開催日問題とは対照的に、こちらはストレートな打算の世界。今回の決着で誰が得をしたか? おそらく、今年のJBCを主催する岩手は不本意だろう。JRAが日割の決まっていた福島開催を動かしてまで、協力姿勢を示すのは尋常なことではない。岩手にすれば「他の主催者に先駆けて、JRAと信頼醸成を図ってきた結果」なのに、その果実を手にできないのだ。4競馬場とウインズ4カ所での場外発売は、他のダートグレード競走での対応とほとんど変わりない。果実を得るのは、来年のJBC主催者である。

 ところが、その主催者が決まらないのだ。採算ラインが40億円と言われる中で、売り上げの確保や運営面の負担は重く、目下、来年の開催に手を挙げている主催者はない。こうなると、昨年開催した大井に再び、お鉢が回ってくる可能性は高く、各地持ち回りという理念はもはや風前の灯(ともしび)。JRAと犬猿の仲だった大井が、本格的な協力を受ける第一号となる皮肉な結末が見えてきた。一方、もう一つのスポンサーである生産者の間には、札幌や中京での開催論すらある。地方競馬振興の理念はどこへやら。理念の担い手がこれでは、JBCは単なる統一G12競走増設で終わる。

 それでも、JRAの多くの施設で地方のレースが発売されれば、一歩前進だろう。JBCを突破口に、各主催者とJRAとの間で、より広範な協力関係が構築されることが望まれる。ただ、その前提は自助努力である。場外発売所一つ開けるにも、地元調整に要する時間と労力は小さくない。こうした地味な作業への取り組み不足が地方競馬衰退の要因だったことを、改めて想起すべきである。



 
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