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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (7/8)高齢化するオープン馬――進まぬ世代交代
 7月7日の開催で、今年の中央競馬は288日の開催日数のちょうど半分を消化した。すでに3歳馬と古馬の混走が始まり、クラス分けの再編も行われているため、今後は各世代の力関係の見極めが、勝ち馬検討の上でも必要になる。過去3年の上半期に行われた平地重賞38競走の勝ち馬の年齢別の内訳は以下の通りである。

 
2000年1312
2001年17
2002年1114

 2000年は根岸Sが11月実施のため、レース数が1つ少ないが、6歳以上の馬の勝利数が年々、増えているのがわかる。2000年は3分の1弱の12勝だったが、昨年は16勝、今年は18勝。今年は9歳のゲイリーフラッシュがシルクロードSを勝ち、8歳のブロードアピールがガーネットSを圧勝した。芝、ダートの違いはあれ、いずれも1200メートル戦である。9歳と言えば、一昨年までの数え年表記なら10歳で、障害馬でもない限り、まず現役を続けていない年齢である。ブロードアピールの場合は牝馬。同馬はデビューが遅かったが、軌道に乗ってから休みなく使われ、36戦を経験。3月の現役最後のレースがドバイ・ゴールデンシャヒーン遠征なのだから恐れ入る。

 各世代の力関係を見ると、96年産世代の強さが目につく。この世代はテイエムオペラオー、メイショウドトウが代表選手だが、両馬とも故障知らずで、2000年の宝塚記念から昨年の有馬記念まで、国内の中長距離G1を皆勤。残ったナリタトップロードも今春、G2を連勝するなど相変わらず元気だ。その前の95年産世代は、エルコンドルパサー、グラスワンダー、スペシャルウィークを擁し、近年最強と言われた。彼らと比べ、96年組は派手さでは劣るが、頑健さで勢力を維持している。見逃せないのは、次の97年組のふがいなさである。内国産の代表選手であるエアシャカール、アグネスフライトは、クラシックの後は勝ち星がない。この世代の評価を下支えしているのはエイシンプレストン、アグネスデジタルの両馬で、この2頭がいなければ、間違いなく近年最弱の評価を受けるだろう。

 現4歳は、間違いなく高レベルと言えるはずだが、数では6歳勢に後れを取っている。ただ、質的には昨年のジャパンC以降、フェブラリーS以外のG1をすべて勝っている。クロフネとアグネスタキオンという飛車角がすでにターフを去っているが、ジャングルポケット、マンハッタンカフェという東西のトップに加え、脇を固める存在のダンツフレームが宝塚記念でG1ウイナーの仲間入りを果たし、サンライズペガサス、ツルマルボーイも台頭。マイル・短距離路線にはショウナンカンプ、ミレニアムバイオがいて、バランス良く好素材が並んでいる。現3歳勢はまだデータが足りないが、函館スプリントSでサニングデールが早くも重賞制覇。短距離戦は年齢差が出にくいとは言え、6月の重賞で古馬を破るのは珍しい。また、宝塚記念でローエングリンが3着に粘り、愛知杯でもナムラサンクスが入着を果たすなど、粒はそろっていると見て良い。

 それにしても、97年組は別として、後続世代が弱いわけでは決してないのに、なぜ高齢馬が活躍するか。その理由は「数」にある。ダービー、オークスシリーズ前の時点でのオープン馬の年齢構成を10年前と比較すると、以下のようになる。

 6上
1992.5935376
2002.54076125

 これはクラス編成替え前の数字で、7月1日現在は以下の通り。

 
美浦211222171999
栗東3224482822161

 相変わらずの東西格差だが、3歳馬53頭が加わっても、6歳以上が101頭と最大勢力となる。特に美浦は44.4%が6歳以上なのに対し、4歳のオープン馬はたった12頭しかいない。ここまで来ると、相当いびつな年齢構成と言わざるを得ないだろう。現行規定では、収得賞金が3200万円を超えている馬は、引退の日までオープン馬であり続ける。一方、昨年行われた賞金加算方法の改定により、現4歳馬が下の条件から勝ち進んだ場合、最低6勝、激戦区の1000万、1600万条件で計3勝しないとオープンにたどり着かない設定となった。高齢馬主体の構成となるのは、こうした事情も背景にある。

 高齢馬が量的にも数多く残り、レースでも活躍する原因には、以下のようなことが考えられる。まず、不況で馬主の経済状態が厳しくなった。本業が苦しければ、新しい馬への投資は手控えられる。産地の不況で、内国産、外国産の別を問わず、種牡馬の頭数も額も落ち込みが激しい。こうしたことから、稼げる馬は少しでも長く現役を続けさせる傾向が強まる。第2に、各調教師の管理可能頭数が増えたため、故障などで長期の休養を要する馬を、きゅう舎事情=馬の入れ替えという要請で引退させる必要がなくなった。さらに、調教施設や獣医療の進歩で、事故の発生率が下がる一方、故障馬の復帰する確率は高まった。有力馬の引退理由といえば、最近は屈けん炎が目につくが、これもウッドコースでの調教が一般化したことを抜きには考えられない。また、骨折の治療技術も格段に進歩していて、長期の休養を経て復帰する馬も多くなって来ている。

 こうした現象は、一概に良いとも悪いとも言えない。ただ、競馬はもともと消長の速い世界で、次々に新たなスターが現れることで活気が生まれる面もあり、世代交代が進まないのは好ましくない。幸いにして、現在はG1を争うクラスでは高資質の3、4歳馬が多いが、7、8歳馬がいつまでもG1を争うような事態は競馬人気にも影響するだろう。一方、競走条件の設定にも、現在の状況をある程度、反映させる必要が出てくる。JRAは昨年、重賞競走の出走優先順位決定方法を改め、過去1年の活躍度を加味した方式を導入した。現在の事態を先取りしたような措置で、うまく機能しているが、今後も状況の変化に合わせて、出走馬選定方法や、負担重量の設定にさらなる修正が必要となるかも知れない。



 
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