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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (6/11)番組の再検討――宝塚記念をどうするか?
 9日の東京、中京で春季競馬番組が幕を閉じた。従来は、福島、阪神の開催も春季番組に組み入れられ、函館のみで夏季番組が先行スタートする形だったが、今年からは15日開幕の福島、阪神も3歳以上の新クラス編成による競走と新馬戦が一斉に行われる。

 ともすれば、「消化試合」の雰囲気があるとされた6―7月の競馬を活性化させるのが狙いだが、そこで問題となるのが宝塚記念である。今回も9日に登録馬が発表されたが、はっきり言って低調な顔ぶれだ。G1勝ち馬はジャングルポケット、エアシャカールの2頭。ファン投票10位以内の馬では、8位サンライズペガサス、9位ダンツフレームを含め、登録したのは4頭。30位以下のホットシークレット、ローエングリン、アクティブバイオが「ファン投票選出馬」として出走資格を得た。投票自体が形がい化しているのだ。

 過去10年間で、宝塚記念のファン投票上位馬10頭中、実際に出走したのは45頭で、平均では4.5頭。最も多かったのはサイレンススズカが優勝した1998年で7頭。近年、空洞化が指摘される有馬記念でも、昨年は4頭止まりだったが、過去10年では67頭。3分の2は出走していた計算になる。夏のグランプリも看板倒れだ。

 もともと宝塚記念はのろわれた(?)G1だった。桜花賞と天皇賞・春しかない春季の関西地区にテコ入れする意味で設定され、有馬記念と同じくファン投票まで取り入れた。もともと競走番組を巡っては、各競馬場の馬主団体が「おらが競馬場に大レースを」と、主張するのが通例。宝塚記念の設定を見ると、関西側の東への対抗意識がのぞくのだが、馬はそろわない。過去20年で、出走馬が15頭を超えたのは4回。過去10年では95年(京都施行)だけである。

 「ダービーから翌年のダービーまで」を区切りとする競馬のカレンダーの中で、有馬記念はプロ野球のオールスター戦に似た位置になる。有馬記念は歳末施行も手伝って、競馬ファン以外にも年中行事として受け入れられた。だが、1年間に2回、それもレギュラーシーズン終了後にオールスター戦を組めば、日米野球のような花相撲と化するのは避け難い。実際には、中央競馬にオフシーズンはない。「トップホースといえども、1年中、稼働して欲しい」というのが施行者の立場だが、馬を使う側はそう考えていないようだ。

 看板と実態のズレを埋めようと、JRAも様々な手を打っては来た。96年から施行時期を1カ月近く繰り下げたのもその一つ。3歳馬の参戦を促すのが狙いで、「日本版キングジョージ」化を図ったのだが、結果から言えばこれも不発だった。実は宝塚記念は60年の設立から8回は、「3歳以上」で行われ、63年には3歳馬コウライオーが3着に入っている。当時は6月末か7月第1週の実施で、3歳馬を使うこともできた。だが、68年からは時期が1カ月繰り上がり、出走資格自体も「4歳以上」に変更された。3歳馬に再び開放されたのは87年で、併せて施行時期も2週繰り下げられた。こうした試行錯誤の跡を見ても、時期的な難しさが浮かび上がる。

 今回もダービー2着馬シンボリクリスエス、3着馬マチカネアカツキの参戦プランが浮上したが、結局は立ち消えとなり、3歳馬はダービーを除外されたローエングリンだけが参戦する見通しだ。本物のキングジョージでは毎年、古馬と3歳の一流どころの初対決が見られるが、宝塚記念がなぜそうならないか?そこには、3歳馬の大レースの性格の違いがある。日本は米国に近い「淘汰(とうた)型」なのだ。輸入種牡馬のラムタラは95年、1戦1勝のキャリアで英ダービーを制した。日本や米国で、新馬を勝ったばかりの馬はそもそもダービーに出られない。「出走させることに意義がある」というオリンピック精神なのか、最初から適性や能力で馬を振り分けることをしない。従って、いかに能力のある馬であれ、5月の1週目までにある程度の実績=賞金を重ねることを求められる。当然、レースを重ねた消耗度も大きい。欧州のクラシック馬がキングジョージに出てくるのは、相対的にフレッシュだからではないか。

 今年の英愛2000ギニー馬ロックオブジブラルタルは、英国の名門サッカークラブ、マンチェスターユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督の持ち馬(共有)だが、同馬のエイダン・オブライエン調教師は距離適性を考慮してダービーに目もくれなかった。ダービーといえども、一つの選択肢に過ぎないという思想もある。

 こう考えると、宝塚記念活性化に3歳馬を取り込む考え方は分が悪いように見える。そこで、他の角度からアプローチしてみよう。まず、宝塚記念前段の5月後半から始まる開催が中京に置かれていることをどう考えるか? もともと、この時期は阪神開催で締めくくりが宝塚記念だったが、96年に高松宮記念を5月に移設するために中京に振り替えられた。だが、その高松宮記念は一昨年から3月に移され、ここに中京開催を組む必然性が薄れてしまった。95年まで、古馬の春シーズンのローテーションは天皇賞・春の3週後に安田記念、さらに4週後に宝塚記念と続いていた。92年には3戦フル出場してオール2着だったカミノクレッセがいた。これは例外としても、古馬には以前の方が使い勝手は良かった。今や、3200メートルという距離は日本のほとんどの競走馬にとって「特殊領域」である。宝塚記念が繰り下がると、いわゆる中距離馬は春先に目標が全くなくなってしまう。その間げきを3月末のドバイ・デューティフリーや4月のクイーンエリザベス2世Cが埋めつつあるのが現状だ。

 一つ考えられるのは、宝塚記念を元の時期に移し、安田記念もそれに併せて繰り上げることか。ただ、その場合は、金鯱賞に替わるようなG2クラスのステップ競走が5月初頭に一つ欲しくなるが、設定すれば天皇賞や安田記念のフィールドを食ってしまう恐れもある。また、検疫問題も絡んで、香港のクイーンエリザベス2世Cとの関係も難しくなる。いずれにしても、アグネスデジタルやエイシンプレストン級の馬が、守備範囲内のレースをパスしてしまうのは良い状況とは言えず、香港―宝塚の連動性は確保したい。

 もう一つ、3歳対古馬の対戦の場は、札幌記念に設定する手もあるかも知れない。高松宮記念の現状や、今年のスプリンターズSが新潟で施行されることを考えると、「ローカル」にこだわる必要もなかろう。ここ数年、ダービーデーでさえ、夏のような暑さになる年が多いが、サラブレッドは暑さに弱いことを思えば、夏に大レースを組んでも、そう盛り上がるものではない。その意味では、番組の改編に、過度の期待を抱くことは考えものという気がする。



 
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