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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (2/12)総務省勧告とウインズの行方
 昨年のJRAの電話投票の発売金は1兆1084億円で、JRA全体の発売金の33.9%を占めた。3分の1を超えたのは初めてで、馬券を買うという行為の“バーチャル化”は急速に進行している。今年はインターネット、iモードを利用した投票方法も新たに導入される予定。携帯端末での投票が可能となったことで、外出先からの購入も容易になり、在宅投票の利便性は年々向上している。

 こうした中で、現場=競馬場でもなく、自宅でもない場外発売所(ウインズ)の位置づけは今後、非常に難しいものとなる。現在でも、非開催競馬場を含めたウインズでの発売高は、全体の約58%を占めているが、シェアは減少傾向にある。折しも、1月18日に総務省行政評価局がJRAに対する勧告結果を公表。ウインズの新設抑制や、既設ウインズの縮小・廃止が盛り込まれていたことから、関係者の間で大きな反響を呼んだ。勧告の内容も検討しながら、今後のウインズのあり方や展開方向について考えてみたい。

 この勧告の基になる調査は2000年4月、省庁再編前の旧総務庁が着手し、今年1月まで2年近くをかけて行われた。ウインズに関して興味深いのは、発売方法別の収入に対する経費率を出した資料である。1991年にはウインズの経費比率は15%に対し、電話投票が全体で19.8%。ところが、2000年はウインズが28.7%に対し、電話投票が7.4%という逆転現象が起こった。電話投票は年々、利用者が増加したことでスケールメリットが生じた一方、ウインズは入場者減少と新増設のコストにより、経費比率が膨らんだのである。

 特に、93年以降に新設された5カ所と、既設の8カ所が、運営経費の比率が急上昇した「投資効率の悪いウインズ」としてヤリ玉に挙げられた。新設のウインズは八幡、高松、新白河で、地域の経済力を考えても、もともと売り上げに多くは期待できなかった。既設ウインズで名が挙がったのは後楽園、錦糸町、浅草など。一口にウインズと言っても、地方と都心では抱える問題が全く異質で、同列に論じる意味はない。地方の新設ウインズのみを問題にしたのであれば、総務省勧告は着眼としても悪くなかったが、都心の売り場も同列に扱ったことで、競馬への理解の浅さを露呈したと言える。

 都心のウインズは、以前は競馬ファンといえども、一刻も早く用を済ませて立ち去りたい場所だった。身動きも取れないほどの混雑が常態で、G1開催日などは危険を感じた人も多かろう。高い収益性はファンの犠牲との裏返し。文字通りサービスの谷間だった。近年、入場者が減った効果で、都心のウインズのアメニティの水準はかなり向上した。入場者が大型スクリーンの前でイスに座ってゆったりレースを観戦できるのが本来の姿で、今までが異常だった。

 地方に関する限り、勧告はウインズの抱える課題とある程度シンクロしている。選挙で「出たい人より出したい人」という理想が実現しにくいのと同様、ウインズも収益性の高い大都市や地方都市の繁華街の計画が住民の反対などでしばしば挫折する一方、過疎地や工場跡地などの集客効果が乏しい場所は、ハードルも低い。勧告以降も東京・汐留の再開発地を除けば、地方での新設が目立つ。これでは全体として収益性が悪化するのは避けられない。しかも、ウインズ新設の過程ではしばしば、地方政界関係者や有力者などが不透明な動きを見せる。JRAは勧告に先手を打って、2002年度事業計画で「新規ウインズに係る調査・検討を当面、中止する」と明記した。狙いは「筋の悪い」案件の一掃に尽きる。収益性が低く、イメージ悪化を招きかねない案件は止めるのは当然である。

 これに関して、珍妙な主張を展開しているのが馬主団体である。昨秋、刊行された東京馬主協会の会報に掲載された協会理事の座談会では、「横浜新税を追い風にしてウインズ新設を推進すべき」という発言まであった。全部の自治体が同様の税を導入した場合、JRAの収益はほとんど消えてしまい、控除率引き上げを招きかねない。新税は法の下の平等や適正手続き、税体系との矛盾など数々の疑義がある。自治体に追い銭を払ってまで設置を主張する人の背後に何があるか。想起すべきは、一昨年に同協会を2分した内紛劇である。発端は静岡県熱海市でのウインズ設置計画を巡り、前会長と業者の間で金銭トラブルが発生、裁判ざたに発展した問題だった。ここでは、馬主団体幹部が自らウインズ設置計画にかかわり、JRAへの発言力を利用して推進を図る口ききの実態が表面化した。彼らの主張は、直接の利害関係者の発言として聞くべきであろう。

 話はそれたが、先述の通り、総務省勧告はウインズ以外でも、JRAに経費の圧縮=利益率の向上を促している。だが、この方向性は霞ケ関レベルでも共有されていない。民業ならより高い収益性を追求するのは当然で、基本を外せば株主が黙っていない。だが、JRAは特殊法人であり、売り上げの1割が第一国庫納付金として国に吸い上げられている。比較して頂きたい。「売り上げ2兆円、剰余金1000億円(5%)」と「売り上げ3兆円、剰余金30億円(0.1%)」。どちらの数字が健全経営かは一目瞭(りょう)然だが、農水省や財務省の立場では、国庫納付金が多い後者の方が望ましい。さらに言えば、剰余金の半分を第二国庫納付金として吸い上げる現在のシステムは、経費削減のインセンティブをそいでいる。JRAが追求すべきは見かけの売り上げか収益率か。決めるのは霞ケ関の領分のはずである。一貫しない各官庁の方針に振り回されるJRAの現状を見るにつけても、日本の競馬が抱えている矛盾は深い。

 ウインズに関して言えば、ファンは競馬と深くつき合うと共に、現場→場外発売所→在宅投票と流れていく。在宅投票は売る側からすれば低コストだが、いきなり電話投票会員になる競馬ファンなど考えられない。ウインズにしても極力、現場を疑似体験できる場所であることが望まれる。昨年の香港国際競走当日、立川、札幌などのウインズでは、多くのファンが馬券発売のないレースの映像を楽しんだ。敷地の広いところでは、ポニーを飼育している例もあり、これも今後の活用法の一つの方向と言える。都市部では、渋谷、新橋などで購入単位引き下げが実現したが、アメニティの向上と併せて、かつてのサービスの谷間を埋める努力が期待される。



 
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