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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (12/28)地方競馬は生き残れるか?――模索すべき中央と地方の新たな関係
 2001年の競馬界は、開催面では沈滞ムードを脱することが出来なかった。5.1%の売り上げ減少に終わったJRAはもちろんだが、大分・中津と新潟の廃止が決まった地方競馬の状況はさらに深刻だった。すでに2000年の時点で24主催者がすべて赤字に転落。廃止の“先陣を切る”のがどこかが周囲の関心事となっていた。経営の厳しさでは中津もご多分に漏れずだったが、収支だけならもっと悪化している主催者もあった。言い換えれば、2002年にどこが消えても不思議はない。すでに北海道、北関東、高知など五指に余る主催者が存廃問題を検討した経緯があり、ドミノ現象の恐れもある。

 こうした中、8月から農水省は生産局長の私的懇談会、「地方競馬のあり方に係る研究会」を設置し、12月26日に中間報告をまとめた。筆者はこの研究会の委員として、6回の会合に出席した。議事録は農水省のHPで公開されている(発言した委員名は削除されているが)。議事の中で明らかになった地方競馬の抱える問題と、研究会の経緯、今後の地方競馬の行方について考えてみたい。

 農水省が競馬に関して懇談会のたぐいを設置したのは、1991年の競馬法改正前の「競馬に関する研究会」以来である。当時も中央と地方の連携強化など、現在につながる方向性が示されていたが、その後の競馬界は激変と呼ぶのがふさわしいほどの時代を経験した。JRAはここ10年で、4兆円というピークと、4年連続売り上げ低下という未曽有の苦境を味わった。地方側もジリジリと経営悪化が進み、2001年には和歌山・紀三井寺以来13年ぶりに競馬廃止という事態に至った。今回の研究会はこうした地方競馬の切迫した状況に加え、国レベルで進む特殊法人改革にいかに対処するかも問題だった。地方競馬全国協会(NAR)は、農水省所管の特殊法人で、地方各主催者からの交付金で運営されているが、地方競馬の不振で、年々交付金が減り、このままでは各主催者と共倒れになる。

 こうした事情から研究会が設置されたのだが、もともと議論の枠組みには大きな限界があった。例えば、競馬に関する規制には、控除率や馬券の種類を初め、他の公営競技と横並びのものが多く、農水省だけでの改変は難しい。加えて、「地方競馬のあり方」と銘打ったことで、日本の競馬全体を問題にしづらくなった面もある。案の定、JRAの研究会に対する姿勢は「かかわり合いになりたくない」。設置当初は、「農水省の狙いは、JRAにさらなる地方支援を押しつけること」との見方さえ流れたほどだ。結果的には、この見方は“陰謀史観”のたぐいで、農水省も「やる気のある主催者以外は突き放す」という姿勢を徐々に明確にしていくことになる。だが、JRAのあり方が議論の対象外となれば、「農水省の守備範囲内の改革で、どの程度、各主催者の自助努力をサポートできるか」に、話が矮小(わいしょう)化されることは目に見えていた。

 研究会で進展したことをまず挙げておこう。(1)馬券発売に関し、中央と地方で受委託が可能にする方向で検討されることとなった(2)従来は中央、地方とも内きゅう制度を採っているが、地方競馬に関しては民間育成牧場などから出走する方向を検討することも盛り込まれた(3)主催団体の企業会計導入や、馬券発売業務の民間委託が条例で可能となった――といったことか。報告書は24ページの長大なものだが、大半は主催者の自助努力を求める記載で占められた。

 議論の幅を限定され、いわば狭くなったリングで焦点となったのは、免許・登録業務の一元化だった。安藤勝己騎手のJRA騎手試験受験により、中央と地方の騎手免許のあり方はにわかにクローズアップされたが、この問題とも絡んでくる。だが、ここでのJRAの抵抗ぶりは強烈だった。「主催者が免許も出す」というスタイルへの、JRA(全体ではないが)のこだわりは強い。そこに、JRA自体の組織防衛という意図も重なった。本来は、NARの破たんを視野に入れて、NARが担っている業務(免許、登録、裁決委員などの派遣)の受け皿を模索すべきだったが、議論は迷走した。結局、公営競技関係団体の組織改革が2005年度末に先送りしたこともあり、問題は「今後の検討課題」(=先送りリスト)に入った。

 この問題の重要性は否定しないが、地方競馬の生き残りという大テーマには直結しない。この問題が最大の焦点だったことは、研究会の限界を示すものだった。より深い意味で、中央と地方の関係をどう再構築するかという骨太な議論が深まらなかったことに対しては、当事者の1人としても慚愧(ざんき)に堪えない思いだ。

 地方競馬は今後生き残れるのか? どうすれば生きて行けるか? 難しい問いだが、そもそも地方競馬というくくり方自体に、ミスリーディングな面がある。端的に言って、大井と益田を同列に議論しても意味はない。大井などは交通の便、地域の経済力などから見て、府中や中山を上回る立地条件にある。このレベルで自立できなければ論外。日本で競馬事業などはやらない方がマシと言うほかない。問題は弱小主催者である。諸外国の小さな競馬場は、ギリギリのコストで競馬をやりながら、大きな競馬場のレースを売って食いつないでいる。「競馬をやりながら」というのがミソで、どんな規模であろうと、その国のトップレベルに参入する道があることが重要なのである。現在、赤字を抱えた多くの主催者が南関東の場外発売を行っているが、自場での開催をやめて場外に特化すれば、赤字は出ないため、廃止に向けた一種の“誘惑”となりかねない。

 低コストで競馬を続けるには、馬主やきゅう舎関係者、馬券売り場の従業員労組といった難しい交渉相手の説得が不可欠だ。これまで各主催者が、その努力を怠っていたことは否定できない。そういう主催者にただ金銭的支援を続けても、無駄金になるのは必定。その意味では、自助努力を求めて突き放すのは正しい姿勢である。

 ただ、「大きな競馬場のレースを売る」方法論については、考慮の余地がある。海外では、レースを売る権利だけを先に売買して、あとは各競馬場が自場のレースと同じ扱いで売る「サイマルキャスト」の手法が普及している。これなら、JRAが権利金を払って香港国際競走を売ることも可能だ。数種類のオッズが並立しても、イヤなら買わなければ良いだけの話で、さほど問題ではない。中央と地方の間で、委託よりシンプルな関係で発売できる。研究会では全く議論されなかったが、早急に検討する価値があると思う。



 
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