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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (1/16)問われる馬主団体のあり方・運営ゆがめるJRAの“過剰サービス”
 このところ、複数の雑誌で馬主団体のあり方をめぐる問題が次々に報じられている。一連の報道は、昨年春から続いている東京馬主協会(社団法人)の内紛をきっかけに、馬主団体の不明朗な運営ぶりが表面化したものだが、売り上げ低迷に苦しむ競馬界にとっては、さらなるイメージダウンを招きかねない頭の痛い問題である。

 東京馬主協会では、保手浜忠弘前会長の個人的な金銭問題が9月に週刊誌に報じられた後、理事会(22人)が同氏の退陣問題で真っ二つに分裂。保手浜氏と2人3脚で馬主界の実権を握っていた小紫芳夫・日本馬主協会連合会(JOA)会長も、保手浜氏解任派についた。

 双方は一般会員を巻き込んだ多数派工作を展開、訴訟騒ぎまで起こした末に、昨年12月5日の理事会で保手浜氏が会長解任。協会そのものからも除名されるという異例の事態となった。双方の非難合戦は今も続いており、数種類の怪文書が競馬関係者の間に出回っている。

 馬主団体の設立目的は、第1に馬主相互の親ぼく・交流である。内紛が起こること自体、おかしな話だが、単なる感情の行き違いならここで取り上げる意味もない。だが、実態は違う。馬主団体には様々な利権があり、その利権は元を正せば、ファンが馬券に投じた金なのである。だから、現状を看過するわけには行かないのだ。

 競馬ファンは馬主を「お金持ち」と見ている。実際、馬主資格を得るには、厳しい資産要件(非居住用資産2億円)をクリアする必要がある。そんなお金持ちの集団が、まさか人の金で運営されているとはだれも考えないだろう。だが、馬主団体の運営費は、実はJRAが持っているのだ。これは「競走協力金」と呼ばれ、各レースの上位3頭の馬主が所属する馬主協会に支給される。建前は賞金の一部だ。馬主協会は競馬場ごとに全国10カ所あり、ここ数年、16―17億円が支給されている。

 JRAの賞金は世界に冠たる高水準。この上、親ぼく団体の運営費までJRAに負担させるとは、ファンには到底、理解できない話だが、馬主側の論理では「これは賞金だから、自分たちに帰属するのは当然」なのだ。だが、賞金はあくまでも成功報酬であり、別に馬主団体が自腹を切って馬を買っているわけでもない。そもそも、支出していること自体がおかしな話である。

 こんな支出が続いているのは、馬も馬主も少なかった戦後の混乱期に、当時のJRAが何とか馬主を集めようと、馬主団体にも様々な恩典を与えたのが発端である。だが、競馬界の状況が当時とは様変わりした今でも、歴史の遺物のような慣行が見直されずに来ている。

 競走協力金は、馬主団体役員の権力の源泉となっている。協力金の一部はJOAに還流しているが、JOAは任意団体のため、外部監査さえなく、馬券マネーの使途をチェックすることは現状では不可能なのだ。どこの世界でも、外部のチェックが及ばない金を動かせる立場は強い。馬主団体役員ポストの“魅力”はここにある。

 しかも、JRAはご丁寧に、各競馬場の馬主席の管理まで馬主協会に任せている。東京協会の内紛では、席の不明朗な配分も問題となった。結局、今回の内紛は、金と馬主席を動かす立場をめぐる権力争いだったのだ。ということは、JRAが馬主に対する過剰サービスをやめれば、ポストの魅力も失われ、内紛も終わるはずだ。

 2002年にはJRAも他の特殊法人と同じく、情報公開法の適用を受ける見通しだ。最低限、馬券マネーの使途をチェックできる態勢を構築することが必要だ。

 まず着手すべきは、競走協力金の全廃である。JRAと馬主団体は毎年、レースの賞金について交渉を行っている。交渉相手に運営費を出すのは、全く異常と言わざるを得ない。馬主席の管理、配分もJRAが責任を持って行うべきだ。現在は馬主団体に加入していないと、席の配分を受けられないが、この状態はおかしい。協会に所属していなくても、馬主がJRAのきちんと遇するべき相手であることに変わりはないからである。

 ファンの投じた金が馬主への過剰サービスに使われ、その利権をめぐる内紛で競馬界のイメージが低下する。このゆがんだ状況を解消できなければ、いずれ競馬界はより深刻なダメージを受けることになるだろう。



 
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