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  [日経新聞運動部記者 野元賢一]

  (10/23)クローン名馬は夢のまた夢
事故死で子孫を残せなかったサイレンススズカ(98年毎日王冠優勝時)
 レースで実績を重ねて、優れた資質を証明した競走馬は、種牡馬や繁殖牝馬として次代に血統を残すことが期待されている。だが、実際にはレースや調教中の故障で命を落とし、子孫を残せなかった名馬は少なくない。一昨年秋の天皇賞でレース中に左前脚を骨折、安楽死したサイレンススズカは記憶に新しい。

 もし、クローンのような最新の生殖技術を使えば、死にゆく名馬の遺伝子を残すことができるのでは――。だが、現在の競馬の国際ルール上、これは不可能だ。

 世界のサラブレッドの血統を管理する「国際血統書委員会」は、サラブレッドの要件として「自然交配で生まれたこと」を明記しているからだ。父と母が存在しないことになるクローンは論外として、人工授精も認められていないのだ。

 こうした背景もあって、馬の生殖技術の研究は、他の動物ほど進んではいない。

 日本中央競馬会(JRA)競走馬総合研究所では、農水省畜産試験場と共同で、馬の精子や卵子、受精卵を保存する技術を研究しているが、同研究所の石田信繁・主任研究役は「結局、ニーズがない状態では研究の進展も遅い」と話す。

 生殖技術一般についても、例えば馬の精子の凍結や体外受精は技術的なハードルも高いが、「ニーズがあれば、研究者の層も資金の投入額も違ってくる」と話す。

 一方で、「仮にクローン馬をつくっても、元の馬と全く同じ特徴を持つ保証はない」と、石田氏はクギを刺す。クローンをつくるには、元の動物の細胞から核を取り出して、核を取り除いた未受精卵に移植するのだが、移植される側の影響を全く受けていない保証はないという。また、仮の母親も異なるし、競走馬の資質は、生育環境やトレーニングの方法などにも左右される。遺伝情報がすべてではない。

 名馬のクローンによる世代を超えた夢の対決は、あくまでも空想の世界の話にとどまるようだ。



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