渡辺 捷昭 トヨタ自動車 社長
環境・安全、追求カギ

再生・循環型社会の到来とグローバル化の進展という2大変化が世界規模でのモータリゼーションを急速に進展させている。自動車産業は基幹産業として大きな比重を占めるようになっており、社会的役割の大きさを自覚しないといけない。
現在、自動車の恩恵に浴しているのは全世界の30%程度の人にすぎず、自動車産業はまだまだ可能性の高い成長産業といえる。ただし環境や安全の問題に対応する次世代技術の開発を怠ると生き残れない時代だ。
目指す姿は創業以来の企業理念である「世のため、人のため、地域のため」の実践だ。世界一良いものを世界一早く、世界一安く作ることで世界中のお客様に感動してもらいたい。具体的には「環境、安全、品質、原価」の4点で他社を大きく上回る商品を提供し、各国・各地域の経済や社会に貢献することだ。
例えば「走れば走るほど空気がきれいになる車」「交通事故を起こさない車」など夢のクルマを実現したい。交通事故などマイナス要素はゼロに近づけ、快適性などプラス要素を最大化するという二律背反の両立を開発テーマに掲げている。
環境技術では究極のエコカーを目指し、ハイブリッド技術の開発を進めている。2010年代の早い段階で世界でハイブリッド車を100万台販売できる車種展開を構築したい。安全技術では大事故の原因となる居眠り運転や飲酒運転を防止する装置を実現したい。
品質の追求はものづくりの基本だ。設計、製造、営業などの各工程で品質をつくり込むことが大前提となる。リコール(回収・無償修理)問題なども起こるが、1人ひとりが主役となって品質に取り組む意識が必要だ。
原価低減も競争力の源泉の一つだ。あらゆる工程でムダ、ムラ、ムリを排除する必要がある。原価低減の成果は収益に反映するだけでなく、商品力の向上や価格面で消費者に還元できる。
グローバルな事業展開に伴う大きなテーマが現地化の推進だ。市場のあるところで生産するのがベター。生産、調達、人材の現地化を進めることで、その国や地域で市民権を得るとともに地域発展にも役立ちたい。
すべての基本は人づくりであり「ものづくりは人づくり」だ。組織は大きいが、従業員1人ひとりが主役だと訴え、人と組織を活性化することが重要だ。おごりや慢心、ごう慢な態度など大企業病の一面を散見することは事実。だが大企業病を克服するためにも従業員が夢やビジョンを持ち、それに対し現在の身の丈がどうかを認識することが大切であり、夢と現状との差を埋めていくマネジメントが必要だ。
実践のポイントは目標を高く据えて現場に目線を置くこと、変えるべきことと変えないことを識別して変えるときは勇気を持って変えること、問題を潜在化させない風土をつくること、チームワークを良くして経営スピードを上げること。この当たり前のことが重要だ。
[10月26日/日本経済新聞 朝刊]
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