西田 厚聡 東芝 社長
危機感バネに革新を

経営環境は新しい局面を迎えた。デジタル化とネットワーク化が同時に進み、市場経済化と相まってグローバル化が進むなか、世界規模で血みどろの競争が続くメガ・コンペティション、M&A(企業の合併・買収)や戦略提携によるメガ・コンバージェンス(合従連衡)が起きている。
高度成長期にはシェアか利益か、品質かコストか、標準化か差異化か、高級品か普及品かといった二律背反的な要因について二者択一で経営を進めることができた。現在は両方バランスよくやらねば勝ち残れない。
組織能力を高める必要があるが、リーダーが明確なビジョンを打ち出し、社員のベクトルを合わせて引っ張るだけでは難しい。個々の能力を高めなければ持続しない。韓国や台湾は、かつての日本人のようにがむしゃらなハングリー精神で事業を展開するが、我々はそこには戻れない。
私は社員に「センス・オブ・アージェンシー」を求めている。業界の動きを注視し、将来も見越した競合他社との比較分析を徹底的に行い、緊迫感や危機意識を持たせるわけだ。
目標を必ず達成するという意志の力も重要だ。東芝は経営に「シックスシグマ」を導入し、経営の品質も高めてきた。だが、他社に負けて悔しいといった感情を経営に取り込むことも課題。こうした感情をバネにした事業への情熱が必要だ。
モジュール化の波にさらされ、日本のものづくりの強みが失われ、商品のコモディティー化も加速している。汎用品でない脱コモディティー商品を作り、市場を育てるのも社会的責任だ。
低価格競争の中で強固な事業基盤を確立しながら脱コモディティー商品を出し続けるには技術を囲い込む必要もある。開発・生産・営業のプロセスでイノベーションを起こす「iキューブ」戦略を打ち出した。相乗効果が新しい商品を生み出すバリューイノベーション(価値の革新)につながるだろう。
[10月26日/日本経済新聞 朝刊]
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