青木 初夫 アステラス製薬 会長、日本製薬工業協会 会長
金子 恭規 スカイライン・ベンチャーズ 代表
世界大手、米で腕競う(金子氏)
アジア勢の動き速い(青木氏)

青木氏「世界で約60兆円の製薬市場は米国が半分、日本が約1割のシェアを占める。世界市場は成長しているが、日本は医療費抑制がボティーブローのように効いており、10年前に比べシェアは半減している。ただ日本発で世界に通用する薬は増えており、研究開発は高水準にある」
「医薬品は薬となる候補物質を見つけてから製品として発売するまで10―15年の歳月が必要。しかも1万以上もの化合物から実際に薬になるのは一つしかない確率だ。経営のリスクは高く、しかも1000億円にのぼる研究開発費がのしかかる。国内製薬も米国を軸とした海外進出を加速する武田薬品工業などの上位4社と、それ以下との二極化が進みつつある」
金子氏「過去30年で製薬の世界に衝撃を与えたのは、バイオ技術の進展だ。遺伝子解析などの手法を使って、玄人が見つけた物質を工業化できるようになった。それは企業で働く科学者の姿も変えた。米メルク、スイスのノバルティスなど世界のトップ10に入る製薬会社は、すべて米国内に研究開発拠点を設け、お互い刺激し合っている」

青木氏「薬価(薬の公定価格)が自由に決められる米国を除き、製薬産業は基本的に規制産業だ。日本ではかつては国内総生産(GDP)に占める医療費の割合は低かったが、高齢化が進み、最近では財源論から医療費抑制の問題が大きくなっている。今のところ医療費抑制と医療産業振興の正しいバランスの答えがなく、揺れているようにみえる」
金子氏「米国の規制当局である米食品医薬品局(FDA)は、新薬を科学的に評価して市場に発売可能かどうかを承認することだけをやっている。日本のように医薬品を承認するところと価格を決めるところが同じでよいのかという議論もある」
青木氏「中国、インドは日本のパートナーであるとともに競争相手でもある。アジア各国は医療を国の中核産業に育成していく動きが強い。例えば移植の分野では中国は症例数で米国に次ぐ世界第二位にある。さらに東南アジア諸国の規制当局は米国のFDAを向いている。厚生労働省もこうした動きを注視しないと、アジアで孤立してしまう恐れがある」
金子氏「私の実体験から言えば、米国のファンドなどがシンガポールを経由し、中国の製薬会社に投資している。かつて私が米アムジェンにいた時の中国人研究者たちは、米国で学んだことを中国で実践しようといった企業家精神にあふれていた。中国は今、人を含めダイナミズムのある動きをしている」
[10月26日/日本経済新聞 朝刊]
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