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基調講演
鈴木 敏文セブン&アイ・ホールディングス 会長兼CEO

未来から現在考えよ

鈴木敏文氏

 過去と現在を分析して未来を占う時代から、どんな未来になるかを考えて現在はどうあるべきかと考える時代に入った。そうしないと新しいことへの挑戦はできない。

 セブン―イレブン・ジャパンを実質創業した時も、周囲から「コンビニエンスストアなど定着するはずがない」と反対された。セブン銀行を作った時も、「ATMを置くだけでは採算がとれない」と多くの金融機関の方から忠告を受けた。

 現在から将来を見る考え方では、こうした指摘は常識だったのかもしれない。しかしお客さんの立場で将来から現在を考えた時に、全く違う世界が見えてくる。

 例えば将来、ATMは銀行ではなく、自宅や会社に近い身近な所で利用されるようになるのではと想像した。だから多くの反対の声にも負けずにセブン銀行の設立に突き進んだ。わずか2年半で利益を出し、今ではグループで最大の伸びを示すまで成長した。

 9月1日にイトーヨーカ堂、セブンイレブン、デニーズを経営統合し純粋持ち株会社のセブン&アイ・ホールディングスを設立した。セブンイレブンが親会社であるヨーカ堂よりも時価総額が高かった。ヨーカ堂を買収すればセブンイレブンも手に入るため、いわゆる親子逆転現象を解消するのが狙いと言われた。

 しかし狙いは全く違う。業績が悪くなっていたヨーカ堂の社員の意識改革を図るためだった。親会社であるため、事業会社の本質を忘れていた面があった。持ち株会社ができた今、セブンイレブンのおかげで増収増益になっていた自分の会社の実態を把握することができ、大きな意識改革につながった。

 社員の意識改革を図る際、大事なのはコミュニケーションの手法だ。改善ならボトムアップでもいいが、改革ならトップダウン、ダイレクトコミュニケーション以外ない。1500人の管理職を毎週本社に集めて直接話をしている。年間数十億円のコストがかかる上、移動の時間の無駄という指摘もあるが、直接、顔を見ながら話すことで、ニュアンスの違いなどがなくなる。トップとの縦のラインをできるだけ短くすることが大切だ。

[10月25日/日本経済新聞 朝刊]
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