永守 重信 日本電産 社長
意識改革へ夢を形に

社員の意識を上げていくために私は絶えず夢を語り、形にしていくことを重視している。夢は必ず形にできる。夢を形にする経営者の条件として3つある。まず「明確な目標・ビジョンを持つ」ことだ。
夢のさらに先には法螺(ほら)がある。会社をどういう姿に持っていくのか、ビジョンを打ち出すことが大事だ。やる気や活力は、成長が原点だ。トップが成長論者でなければ人材は集まらない。人をひきつける大法螺が必要だ。
最近は経営者が法螺を吹かず実現可能な範囲の目標をあげることが多いが、それでは夢を形にできない。まず高い目標を掲げ、根拠がある夢にすることだ。
私は最近、2030年度に売上高10兆円という目標は掲げたが、全く根拠は無い。ただ創業以来、何回も法螺を現実にしてきた。売上高が月20万円の時に年商10億円の目標を掲げ、周囲をびっくりさせた。今期の売上高は5200億円の見込みだから1兆円では社員も「それくらいいけるかもしれない」と思ってしまう。
二つ目には「揺るぎない経営ポリシーを持つ」こと。難しいことを考えがちだが、当たり前のことを当たり前にするだけだ。日本電産の場合、「非同族」「非下請け」「グローバル企業」を創業当初から掲げてきた。
「整理」「作法」「躾(しつけ)」などの6S運動もある。工場が汚くて社員の躾もできていないのに、株価が高くて成長している企業を紹介してもらえれば1億円を差し上げてもいい。20社以上を再建したが、6Sができていなかった会社ばかりだった。
三つ目は「社会に役立つ事業を目指す」ことだ。例えば自分たちがやっているものづくりが、国の根幹を支えているという自信を植え付けることだ。世界の電力の半分はモーターが消費しているといわれる。「君がモーターの性能を改善してくれればこれだけ世の中に役立つ」と説明して意識が高まれば、会社は夢に近づく。
しっかりとした目標を持つと法螺が夢に変わり、それが実現する。それで社員が一致団結する。つぶれかかった会社を再建できたのは全部、社員の意識が変わったからだ。経営者たるリーダーは将来に向かって法螺を吹け。社員と夢を共有することが最大の役割でありリーダーシップだ。
[10月25日/日本経済新聞 朝刊]
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