ウィム・ロレンツ ザイリンクス 社長、CEO 兼 会長
矢嶋 英敏 島津製作所 会長
働きたい会社の人材活用術

ロレンツ氏 当社はプログラマブルロジックと呼ぶ半導体チップを手がけ、回路線幅90ナノ(ナノは10億分の1)メートルの最先端品を供給する数少ない会社の1つだ。製造をすべて外部委託するファブレス(工場を持たない)形態をとっている。社員の75%が製品開発という将来の仕事に携わっている。
米フォーチュン誌の「働きたい企業ベスト100」で2003年に4位にランクされた。半導体不況の2001年にもレイオフを避け、経営陣と社員が信頼感を保っているためだろう。米シリコンバレーでは離職率が年間2―3割に達するが、当社で必要な人材の離職率は5%以下だ。
矢嶋氏 京都企業の特徴は「麦踏み」と「すみ分け」にあるとされる。自立する社員には「自分で道を付けなさい」と助言する。人まねは嫌という気質が「すみ分け」だ。島津も考え方は同じ。自分で問題を解決するという基本があり、技術者が育ってきた。
賃金や待遇だけで会社はよくならない。重要なのは働きがいだが、人への配慮と経済論理だけで経営はできない。経営者に必要なのは、明確に方向を示し、実行させて成果をほめること。1、2回の失敗を叱咤(しった)するのはばかげている。3回目の成功を皆で分かち合いたい。
――働きたい会社となる条件は何か。
ロレンツ氏 報酬額では決まらない。当社は社員に技術革新の自由を与え、経営陣といつでも話ができるオープンな企業文化を持つ。ストックオプション制度はあるが、報酬ではなく社員にオーナー意識を持たせることを狙っている。
――島津製作所は技術者には評判がいいが、商売下手という印象だ。
矢嶋氏 技術者を野放しにしているわけではないが、在庫管理などでルーズな面もあった。2001年度にはそれらの整理で赤字を出したが、昨年度には黒字回復した。ただ、産業の基盤となる製品の開発には、ある程度の時間がかかることは理解してほしい。
――両氏とも中途入社だが、経営にあたって問題は感じないか。
矢嶋氏 私は航空機分野が長かったが、分析機器であってもビジネスで重要なのは、いかに結論を出して実行するかにある。当社の中期経営計画は過去30年間、未達成が続いてきたが、今回は達成できる。
ロレンツ氏 私がヒューレット・パッカード(HP)を辞めたのは技術革新が重視されなくなってきたためだ。米企業はHPのように社員の待遇を重視してきた会社と、経営陣が方針を社員に押しつけて競争力を得ている会社がある。待遇と競争力の両立が経営者としての私の目標だ。
――日本の雇用制度は米国モデルをどう織り込み進化していくのか。
矢嶋氏 島津では中途入社する社員はいるが、いったん入社してやめる人は少ない。人を大切にすることを基本姿勢にしており、定着率は高い。能力があると売り込んでくる人よりも、当社が求める人を採る方針を貫きたい。
――社員と企業、そして社員同士の忠誠心を高めていくために何をすべきか。
ロレンツ氏 社員を動機付ける価値観は業種や企業規模が違っても同じ。流動性というのは一種の神話で、経営陣を信頼しないから社員が退社してしまう。きちんと処遇すれば愛社精神をもって答えてくれる。
――雇用形態が多様化し、派遣や外国人社員と働くことも増えている。
矢嶋氏 チームの一員として同じ仕事をやり抜き、目標を達成すれば信頼関係はできあがる。国籍について心配したことはない。
ロレンツ氏 社外のパートナーも当社の社員と同様に処遇する必要がある。会社の一部ではないが、当社のために仕事をしている人にも感謝し、彼らの仕事が当社にとっていかに重要であるかを示すことも重要だ。
[10月22日/日本経済新聞 朝刊]
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