リチャード・ワゴナー ゼネラル・モーターズ 会長 兼 CEO
ローカル市場に世界規模で攻勢

ゼネラル・モーターズ(GM)を含む世界の自動車産業は大きな変革のさなかにある。経営者はある一国の規制に対応すると同時に、会計基準など世界で似通ったものへの対応にも直面する。こうした急速な変化にどう対応していくべきか。
新たな中間地点を目指して進むにあたって、平均的で面白みを欠く車を作ることがGMの成功の方程式ではない。グローバル化をてこに深い専門性と能力を発揮しながら、特定のローカル市場に合う製品を作る。明日の自動車産業で勝つのは、集権化と分散化の正しいバランスをとるプレーヤーだ。
今から100年前、自動車は2000近くのブランドが出ては消え、200社以下しか長続きしなかった。そのいくつかの集合体がGMだが、いつも安定していたわけではない。
1908年にGMを創設したビリー・デュラントは猛烈な企業買収を繰り返した。後を継いだアルフレッド・スローンは、企業運営と責任の分散化という革新的なアプローチに取り組んだ。各事業体は独立性を保ったまま運営。米国内でビュイックやキャデラック、シボレーなどがあると同様、英ボグソールや独アダム・オペルなどの買収先企業にも独自の車生産や事業運営を奨励した。
GMは「主要市場で車を作って売る」のが哲学。真のローカルプレーヤーを目指したが、競合相手は別のやり方をした。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)は単一ブランドで、自国で確立した事業手法を海外へ持ち込んだのだ。
GMのやり方はローカルの顧客のし好に訴える利点があるが、せっかくの規模を十分に生かせない。逆に他社のように規模ばかり追うと、ローカルにそぐわなくなる。これからは集中か分散かの両極端ではなく、各社がどんどん中間点に近づく。グローバルのノウハウと、ローカルの製品を組み合わせた中間地点へのレースに勝ったメーカーだけが生き残る。
GMは「アクティング・アズ・ワン・カンパニー」(1社で行動する)を掲げている。GMの歴史には反するが、社内で不必要に競争すべきではない。10年前から購買部門を世界で一元化、96年からは単一生産システムを導入した。いすゞ自動車やスズキ、富士重工業との提携も「中間地点」への一環だ。今後は特にグローバルなプラットフォーム(車台)戦略でGMの規模のメリットを生かすチャンスが増える。
世界の自動車メーカーはそれぞれが強みと弱みを持つが、企業経営のアプローチ自体は、10年後には今よりもっと同質化が進んでいるだろう。グローバルな経営資源を生かした、優れたローカル製品を生み出す。目指すゴールは明確だ。
[10月22日/日本経済新聞 朝刊]
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