カレン・ケイトン ファイザー主席副社長 兼 ファイザー医薬品部門 社長
優れた薬 医療費抑制

製薬業界は世界の産業界で最も研究に資金を投入している。研究開発費の総額は毎年3兆円以上にのぼる。しかし、新薬として日の目を見るのは約1万5000種の化合物のうち、たった1つであり、患者の手に渡るまでには14年の開発の歳月がかかる。
このようなビジネスは小規模な企業や短期志向の企業には不向きであり、辛抱強さが重要な経営戦略となる。開発経費をねん出するにはグローバルな規模が必要だ。今年、同業の米ファルマシアを買収したのも規模を追求するためだった。
「巨大製薬会社」と呼ばれるビジネスモデルが新薬開発に適していた。しかし、どんなに成功したモデルも環境変化に順応しなければならない。
製薬業界を取り巻く経営環境は劇的に変化している。テーラーメード医療やバイオ技術が進展し、これまでの対症療法よりも予防医療が重視され始めている。患者も画一的な存在ではなく、知識を備えた医療消費者に変わってきている。
当社は業界他社が投資を控えている時にも大胆な研究開発投資を実施してきた。多くの転換点での決断で業界の中堅企業から巨大企業に成長した。今後も組織や体制を改革する柔軟性を保持していかねばならない。
今、製薬業界は薬剤が高いとの激しい抗議を受けている。米コロンビア大学の教授が新薬に2000円を支出することで、救急治療や入院にかかる1万4000円以上を抑制できるとの試算を発表した。今日の医薬品への支出は、明日の高額な医療支出を避けるための投資でもある。こうした医薬品の価値を人々に伝える努力を続ける必要がある。
[10月21日/日本経済新聞 朝刊]
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