開会のあいさつ
鶴田 卓彦 日本経済新聞社 社長
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開会のあいさつをする鶴田卓彦・日本経済新聞社社長 |
日本経済新聞社の鶴田でございます。この会議をともに主催するスイスのIMD(経営開発国際研究所)、スタンフォード大学アジア太平洋研究センター(A/PARC)の3機関を代表し、一言ご挨拶申し上げます。
この会議で今年のメインテーマは「IT(情報技術)時代のグローバル競争と企業経営」です。米国の経済学者、ロバート・ソロー博士はかつて、ノーベル賞受賞の記念講演で、コンピューター投資、いまの言葉で言えばIT投資とでも申しましょうか、経済全体ではその投資にみあう生産性の上昇がみられないと指摘しました。経済学の分野で「生産性のパラドックス(逆説)」として有名になりました。
それがどうでしょう。米国政府は最近、米国の経済成長の3分の1は、ITが直接貢献している、と考えています。ホワイトハウスは米国の生産性上昇の3分の2がITで説明できる、と言っています。いったい、何が変わったのでしょう。
パソコンやインターネットが、一国の経済、政府・企業・家計部門で本当に役立つには、ただ導入するだけではダメだったのです。従来のやり方、会社や金融機関の組織、市場のあり方などを根本的に見直さないといけなかったのです。どんな道具でも、本当に使いこなせなければ、役立たないのと同じことです。
日本経済は80年代のバブルに突入するまで、好不況の波はありましたが、高度成長を謳歌しました。それまでうまくいった分だけ自信が生まれ、おごっていたのかもしれません。従来のやり方・組織に固執し、ITを使いこなしていませんでした。それが90年代、米国の繁栄と日本の低迷の、道の分かれ目となりました。
午前中に基調講演するロバート・ルービン米前財務長官は、90年代の米国繁栄の基礎となる経済運営をした方です。ルービンさんの政策が、米国を中心とするグローバル経済を生み出したと言ってもいいでしょう。これからのグローバル経済は大きな発展性と同時に、リスクもひそんでいることを、きょうの講演で語ってくれます。
ハインリッヒ・フォンピーラー社長は、重電のシーメンスをスピード経営によって欧州トップのIT企業によみがえらせました。出井伸之会長は家電メーカーだったソニーを、パソコンから金融、エンターテインメントまでの先端グループに変え、日本のIT戦略会議議長として活躍しています。
いずれも、その優れた国家・企業経営によって、生産性パラドックスを超える手腕をみせた方々です。この会議にはこのほか、数多くの第一線の世界的なビジネスリーダーを講師にお招きし、これから2日間にわたって、講演やパネル討論を繰り広げます。
ところで、ITが20世紀の後半、世界を変える大きな力となったのは、ベル研究所のトランジスター発明や、西澤潤一博士による光通信のアイデア、今年のノーベル賞となったジャック・キルビー博士のIC(集積回路)特許などがあったからです。間違いなくこれからの、ITの主役の一つとなる携帯電話やモバイル機器を、ポケットやハンドバッグに入ることを可能にしたのは、白川英樹博士の電気を通すプラスチックの発見によるところが大きいのです。
これらの従来は存在しなかった、だれも思いつかなかったアイデアを生かしていくのが経営の手腕です。
私ども日本経済新聞社では、新聞は21世紀も紙のスタイルが中心であるとの自信は揺らいでおりません。しかし同時に、インターネットやiモード、BSデジタル放送など、ITを駆使した情報提供といった側面で、これからも一層力を入れていきます。
私は21世紀の前半、世界を変える大きな力となるのは、ITに加えて、バイオテクノロジー(生命工学)だと思います。今年のヒト・ゲノムの解読は、ITにおける半世紀前のトランジスター発明に匹敵するでしょう。
日経フォーラム「世界経営者会議」には、こうした次々と生まれる新しいアイデアをいかに使いこなし、人々に役立つようにするか議論するため、私はこれからも世界中からトップ級の講師、専門家を毎年お招きし、みなさまとともに経営手腕を磨く場にしていく所存です。
最後になりましたが、このフォーラムは、日興ソロモン・スミス・バーニー証券会社、アンダーセンコンサルティング、ゴールドマン・サックス証券会社、ネスレ日本の4社をはじめ、多くの協賛企業にご後援を頂きました。日経CNBCには発足1周年の記念事業の意味も込め、支援を頼みました。ご協力、ありがとうございます。
ご清聴ありがとうございました。
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