国内の競争政策確立を
出井 伸之 ソニー 会長 兼 CEO
今日未明までアジアカップで優勝したサッカー日本代表チームを応援しながら、なぜ日本サッカーが強くなったかを考えていた。プロリーグになり外国人選手も増えたことで、球団経営から選手までプロとして競争する環境が整ったからだろう。経済面でも、競争政策をいかに導入していくかが今後の日本に不可欠だ。
80年代をおう歌した日本経済は90年代に落ち込んだが、円はいまだに世界で最も強い通貨になっている。好景気なのに下がり続けているユーロとは対照的だ。その理由は日本の産業の二面性にあるのだろう。
円相場は恐らくトヨタ自動車や松下電器産業など国際市場でもまれている企業の強さで決まり、日本の高コスト構造は電力や通信など円による収入ばかりで官庁に守られている保護産業に起因している。二面性を無くし日本中に競争政策を浸透させることが必要だ。
日本はこの10年間ですっかり自信を喪失してしまったが、同じ時期に米国が成功できたのは競争政策の導入と製造業のリストラによる。私が社外取締役を務める米ゼネラル・モーターズ(GM)では、デトロイトの人口が150万人から90万人に減ってしまうほど、苦労して人員を削減した。ほかの米製造業も、かつての日本に学び品質管理面などで改善に努めた。
一方、競争導入では米政府の役割が大きい。通信分野では84年にAT&Tを分離・分割。96年にはすべての通信会社が垣根を超えて自由に競争できるようにした。この間にシリコンバレー型の企業が台頭し、パソコンなど技術の発展とともにインターネット産業が花開いた。
米国の復活は、競争を前提として整理しなおした国家的な仕組みに基づき、技術の進歩と産業構造改革が組み合わさった成果だ。IT(情報技術)だけが要因ではない。日本は米国が20年かけてやってきたことを5年でやらねばならない。そのためにどうするかをIT戦略会議で議論している。
日本も問題点ばかりではない。治安や教育の質の高さなど強みもある。また、日本は米国をしのぐ光回線網の保有国だ。IT戦略会議では5年で米国を上回る高速ネット網を構築するという目標を立てた。
問題は光回線を一般の人が自由に使えないこと。日本電信電話(NTT)という圧倒的強者の存在で競争環境が整わず、コスト低下と一般家庭への整備が進まない。NTT批判ではない。競争が進まない国家の仕組み、制度を変えようということだ。
高速ネット上で自由競争すれば新しい事業が生まれ、既存事業も能率を上げることができる。戦後の成長は縦割り行政による保護などが支えた側面は否定できない。だがネット社会には業界の違いも国境もない。競争で強くなった米国と競うには国内も競争で強くなる必要がある。21世紀に向けて自信を取り戻すため、過去の成功は忘れ日本全体で考え直す時だ。
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